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婚約破棄されたその瞬間、想定外のことが起きまして。

 私には婚約者がいました。

 だから、ずっと彼と生きてゆくのだと、当たり前のように思っていたのです。


 けれどもそれは私の勝手な思い込みだったのかもしれません。


「お前との婚約、破棄ってことになったからな」


 今、私は、婚約者の彼ポポスから婚約破棄を告げられているところです。


 すぐには状況を呑み込めませんでした。

 本当に唐突だったからです。

 前触れなんて何一つなくて、だから、そのような展開はまったく想定していなかったのです。


「婚約は破棄! いいな。確かに伝えたからな」


 しかし、本当の想定外はここからでした。


 というのも、彼に婚約破棄を告げられた直後、私の身体が輝きだしたのです。


 これはさすがに理解不能でした。


 私は普通の人間なのに、肉体が光り出すなんて。

 理解できる範囲を呆れるほど超えています。


 戸惑っているうちに……私の身体は猫のようなものになっていました。


 たまたま近くに立て掛けてあった姿見に映る自分を見て愕然としました。


「う、うわあああああ! 猫! ねねねねねね猫!! 出てけ出てけ! 出てけよおぉぉぉぉ!!」


 ポポスは冷静さを失います。


 そう、彼は猫が大嫌いなのです。


 以前ちらりと聞いた話によれば、小さい頃引っ掛かれて以来怖くなってしまったのだそうです。


 ですがこれはチャンス。

 私は猫のような姿のままその場から去りました。


 猫のような姿になってしまった私の目の前に現れた大きな猫のような生き物。


 その猫は教えてくれました。

 君は猫ではなく猫に似た魔獣だ、と。


 こちらの事情を知ると、その猫は、猫似魔獣の村へ連れていってくれました。


 そして私はそこで暮らすこととなりました。



 ◆



 あれから五年。

 私は今も猫のような姿のまま。


 しかし、同じ魔獣である仲間たちと一緒に、のんびり楽しく暮らしています。


 最近はお隣さんに赤ちゃんが生まれました。私は昨日その赤ちゃんたちを見せてもらったのですが、ふわふわして小さくて、とても愛らしかったです。


 どのくらいすれば大きくなるのかな?


 成長が今から楽しみです。


 そうそう、これは、魔獣連絡で知ったことなのですが。


 ポポスはあの後『猫夢病』なる病にかかってしまったらしく、毎晩恐ろしい猫の夢をみるようになってしまったそうです。また、その病は、昼間でも恐ろしい幻を見たりすることもあるそうで。苦手な猫に追いかけられるような暮らしをしているうちに心を病んでしまったポポスは、ある晩、衝動的に命を絶ってしまったのだそうです。



◆終わり◆

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