妹が婚約者を奪いました。~彼、困った人ですけど、それでも良かったのでしょうか?~
その日、婚約者ルイに呼び出されたところへ向かうと、彼と私の妹が待っていた。
「あれ? ルイさん、どうしてリリと?」
リリというのは私の妹の名前。
彼女はとても可愛らしい容姿の持ち主だが、実は腹黒く、私のことはいつも見下している。
「悪いんだけどさ、君との婚約は破棄するよ」
ルイは言った。
「お姉さま! 申し訳ありません……わたくし、ルイ様に気に入っていただいてしまいましたの! ですから、わたくしが、ルイ様と結婚しますわ!」
リリは言った。
彼女は勝ち誇った顔をしていた。
私から婚約者を奪えて嬉しいのだろう、想像はつく。
でも良いのか?
ルイは非常に困ったところのある人だが。
「そういうことなんだ。だから君は去ってくれ」
「そうですか……分かりました」
私は笑みを浮かべる。
「リリも、幸せになってね」
嬉しい。とにかく嬉しい。だって、厄介な婚約者と離れられるのだ。嬉しくないわけがないだろう。少しでも気に食わないことがあると激怒し酷い時には暴れ出すような彼と、揉めるでもなく離れられるのだから、そんな良いことはない。
ある意味リリは救世主。
もっとも、今の状況においては、だが……。
でも、個人的には、二人はお似合いだと思う。
ルイはすぐに激怒する。
リリはすぐに私のものを奪おうとしたり嫌がらせしてきたりする。
関わっていると困る人、そういう意味では、二人は似たもの同士。
その後話はすぐにまとまり、ルイと私の婚約は破棄となって、ルイとリリが婚約した。
私はついに解放された。
厄介な人たちから。
二人が結婚した日、私は旅に出ることにした。
◆
あれから一年。
私は今も旅を楽しめている。
慣れない土地で暮らすというのは難しさもあるけれど、逆に勉強になることも多いし、何より視野が広がる。良い刺激もあるし、人々の様々な面を見ることができるのも良いところだと思う。
そういえば最近知人から聞いたのだが。
リリは今、毎日のように、ルイから罵倒される生活をしているらしい。
やはりルイは彼女の自分勝手な振る舞いを許せなかったようだ。
夫婦となった瞬間までは良かったものの、その日から早速喧嘩が耐えなくなり、今ではめちゃくちゃなことになってしまっているようだ。
だが、もはや私には関係ない。
二人は二人の人生を歩んでいる。
だから私が出ていく必要などないのだ。
私は話を聞いても、あぁそうなんだぁ、と思うだけ。
◆終わり◆