魔王を倒したらしい勇者と婚約していたのですが、急に婚約破棄を告げられてしまいました。
私はこの国の王女。
敵対していた魔王を倒したらしい勇者のボレロと婚約することになった。
けれども、婚約から一ヶ月も経たないうちに……。
「貴女ってほーんと面白くないよな。お高く止まってさ、馬鹿じゃねーの。王の娘だからって勘違いしてんじゃねーよ。てことで、婚約は破棄な」
こうして私は彼に切り捨てられた。
彼は非常に開放的な人で、周囲の女性たちとも非常に自由奔放な関係を築いていた。けれども私はそれに馴染めなくて。そこまで自由なことはできない、と伝えたところ、どうやら彼を怒らせてしまったみたいで。それで、こんなことをになってしまったのだ。
「王女様馬鹿ねぇ、あんな真面目なことを言って」
「従っていれば一生安泰なのにねー」
「残念な人だわねぇ、不器用なのねぇ」
ボレロの周囲の女性たちは、捨てられた私を見て、そんなことを言っていた。
従っていれば安泰?
私だって常識の範囲内であれば従っただろう。
でも、彼が求めていることは、常識の範囲を逸脱していたのだ。
だから従えなかった。
無理だったのだ。
◆
あの後、私は、親のもとへは戻らなかった。
父王は魔王を倒したボレロに心酔している。
きっと私の主張など聞いてくれないだろう。
だから親のところへは戻らないことにした。
私は一人旅に出ることにした。ただ、それも、悪いことばかりではなくて。知らなかった世界を知ることができたし、いろんな人と知り合えたし、良いこともたくさんあった。
そして私は旅先で知り合った人と結婚。
彼のもとで暮らすようになった。
彼といるととても楽しい。
たまにすれ違って不穏な空気になってしまうことはあるけれど、それでも少し経てば仲直りをして、より一層仲良しになったりもする。
ちなみに私が生まれ育った母国はというと……あの後暴走したボレロに王家を乗っ取られたらしく、国がめちゃくちゃになり、問題が大量に起こってしまったそうで……最終的には国が滅ぶところまで至ったそうだ。
王女でありながら国を捨てたのは申し訳なく思う部分もある。
ただ、王女でも、私もまた人間だ。
私として、一個人として、生きていきたいという気持ちもある。
国民から搾り取ったもので暮らしていないだけましだと思ってほしい。
◆終わり◆