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妹の方が好みなのかと思っていたら……実は (後編)

「ハルニー! あなたは悪いことをしたのよ!」

「うるさいのよ、お母様」

「駄目だろうハルニー! 少しはリリーナの気持ちを考えろ!」

「お姉様の魅力がなかったことがすべての原因よ」


 両親は何度もハルニーを叱る。しかしハルニーが行いを悔いることはなかった。それどころか、彼女はいつも堂々としていた。己に非なんてない、とでも言いたげな表情で、両親の言葉を迷いなく弾き返すのだ。


 その後、両親はカストロフの親に、このことを告げた。


 カストロフの親がカストロフに確認したところ、二人の関係が事実であることが判明する。


 また、それと同時に、カストロフが言っていた私の悪い行いの話が嘘であったということも明らかになった。というのも、辻褄が合わないところが出てきたのである。


「理不尽に婚約破棄なんて突きつけてごめんなさいね、リリーナさん」


 カストロフの母親は私に謝罪した。


「いえ、気にしていません」


 私は平気なように振る舞った。

 でも本当は平気ではなかった。


 これまでとは別の道を行きたい。別人になって生きたい。そんな衝動に駆られ、私は少しのお金だけを持って家を出た。


 たとえどんな未来が待っているとしても、あの家にいるよりかはずっといい。


 その思いだけで足は動いた。



 ◆



 家出した私は山道で倒れていたところ一人の青年に保護された。

 事情を話すと彼は「しばらくここにいてもいいよ」と言ってくれて。それで私は彼の家で暮らすことに決めた。


 ちなみに二人きりではない。


 彼には可愛がっている妹がいたから。


 昼間青年は働きに出る。その間私は彼の妹と二人で過ごした。彼の妹は美女になりそうな雰囲気の人物だったが、嫌みな感じはなく、とても可愛らしくて。二人でいるのもそれはそれで楽しかった。


 そして数年後、私と彼は家族になった。


 私と青年とその妹と。

 三人で幸せに暮らしている。


 領地持ちの家の長女というステータスは今はもうない。その頃の私は消え去った。今の私はただの女性に過ぎないのだ。だが、それでも、私にとっては今の方が幸せ。


 温かな暮らし、細やかな幸福。

 それだけで十分。



 ◆



 後に耳にした話によると、カストロフとハルニーは二人で家を出たらしい。


 理由は、両方の家から色々言われたから。

 二人は二人の幸せを最優先にし、家から離れ、自分たちだけの道を選んだそうだ。


 だが、二人きりになったからといって、必ずしも幸せになれるわけではない。彼らは皮肉にもそれを証明した。というのも、いざがっつり同棲し始めると喧嘩が増えたのである。ハルニーがわがままを言い出したことが発端となり、二人は険悪になってゆく。


 ストレスが溜まったカストロフは、段々、ハルニーを叩いたり蹴ったりするようになって。怖くなったハルニーは、涙ながらに実家へ帰ったそうだ。しかしハルニーに居場所はなかった。両親は、かつて自分勝手なことをしたハルニーを受け入れず、見捨てたという。


 一方、カストロフはというと。同棲者への暴力という自身の悪行が明らかになることを恐れ、逃げ出したハルニーを追いかけたらしい。自身の行為を隠したくて必死だったようで、彼は寝る間も惜しんでハルニー探しを続けていたという。


 そして、半年ほどが経った、ある夜。

 カストロフはついにハルニーを発見する。


 口封じをしたいカストロフ。彼から逃れたいハルニー。もう共には歩めない二人は、こじれにこじれて揉み合いになる。そして、カッとなっていたカストロフは、ハルニーを殺めてしまった。


 カストロフが冷静になった時にはもう手遅れ。


 その後、カストロフは、人殺しの罪人として生きたそうだ。



◆終わり◆

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