婚約破棄されたと思ったら肉体に変化が起きまして……?
その日、私は、婚約者の彼ビルドに呼び出されました。
若干嫌な予感はしましたが。でも、きっと気のせいだろうと思って、着なれたサーモンピンクのワンピースをまとって彼のもとへと向かいました。もっとも、このワンピースを選んだ理由は特にはないのですが。ただ、外出するのであれば着なれた服を着る方が良いだろう、と思ったのです。
そして彼と顔を合わせると。
「なんだその服、ダサいな」
「放っておいてください」
「相変わらず生意気だな、お前は」
そう言って、彼はふっと笑います。
「ま、いい。付き合いも今日で終わりだ」
嫌な予感が……。
「お前との婚約、破棄とする」
やはり。
私の予感は間違いではなかったようです。
「なぜ……?」
「お前と生きるなんぞもう無理だからだ」
嫌な予感は見事に的中してしまいました。
「これでさよなら、だな」
その瞬間、私の身体を虹色の光が包み込みます。
何が何だか分からず呆然としていると。
次の瞬間。
ただの女性だったはずの私の肉体は、なぜか、紅のドラゴンになっていました。
艶のある紅の鱗を持つドラゴンになった私は、高く飛び上がり、その場から去りました。
意識はあるので助かりました。
何とか生きていけそうです。
◆
あれから私は山岳地帯にあるドラゴンの村で暮らすようになりました。
最初こそ戸惑いはありましたが。
今ではすっかり慣れることができ、穏やかに生活できています。
毎日はとても楽しいです。
そうそう、そういえば。
先日ビルドのその後について知る機会があったのですけれど。
彼はあの後小柄で小動物のような雰囲気のある女性と結婚したそうです。しかし、いざ結婚してみると、その女性はとても気が強い人だったらしくて。毎日のように罵倒されるようになってしまったとのことで。罵倒され続けたことで心を病んだ彼は、ある日の晩、家から逃げ出したとのことです。
ただ、それでも上手くいかず。
逃げ出して走っている最中に野犬に襲われてしまい、不幸にも落命してしまったそうです。
◆終わり◆