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婚約破棄された私は実家へ戻ってのんびりと暮らすことを選びました。

 その日はいつになく晴れている日射し眩しく爽やかな日だった。


「悪いけどね、君との婚約は破棄とさせてもらうよ」


 婚約者ファルクヴェルゲスに呼び出されたと思ったら、そんなことを告げられた。


 予感がまったくなかったというと嘘になる。

 あまり好まれていない、ということには、薄々気づいていたから。


「いきなり過ぎませんか?」

「そうだね。でも……もう強く決めたんだ。心は絶対に変わらない」

「頑なですね。何か理由が?」

「直接言うほどのことはないよ」


 ただ、それでも驚きはあった。


 だって婚約破棄よ? 人生に関わるような重大なことよ? それをそんないきなり言うなんて。普通なら考えられないことでしょう。おかしいでしょう? 呼び出してさくっと告げるなんて、婚約破棄というものの意味をきちんと理解しているの?


 ……だがもはや何を言っても無駄なのだろう。


 彼はもう心を決めてしまっている。


 それは今の彼の目を見れば分かる。


 分かってしまう……。


 ならばもういっそ、潔く諦めよう。

 そして、明るい未来へ進むことを選ぼう。


 その方がきっと私のためになる。


 そう思う。


 ◆



 あの急かつ理由不明の婚約破棄から五年。

 私は今、実家で両親や妹と共にのんびりと暮らしている。


 朝起きてすぐに窓を開けて歌う鳥の声を聞くこと、ハッカ油を溶かした液体で口をゆすぐこと、紅茶と共に焼き菓子を楽しむこと、それに趣味に没頭すること……毎日は幸せに満ちている。


 それらは小さな幸せかもしれない。それこそ、道端にひっそり咲いていて気づかれない花のような幸福。でも、それもまた、確かに幸せの一つ。それが存在していてくれるだけで、心には輝きが宿る。


 妹と二人庭を散歩するのも好きだ。


 そういえば。

 これは最近知り合いから聞いたのだけれど。


 ファルクヴェルゲスはあれから事業を始めたそうなのだが、ある時酒の飲みすぎで酷く酔っ払い痴漢行為をはたらいてしまい、社会的評価を地に落とすこととなってしまったそうだ。


 事業も失敗に終わり、今や彼には借金しかないらしい。



◆終わり◆

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