聖女だった私は婚約破棄され捨てられましたが、とある人に拾われ幸せになれました。
「偽りの聖女オルヴィエラ! 君との婚約、本日をもって破棄とする!」
私、オルヴィエラは、この国で正式に認められた聖女であった。
けれどもたった今、婚約者である王子から、偽りの聖女などと言われたうえ……婚約破棄された。
王子の後ろに潜んでいる一人の女。長い金髪に蒼い瞳を持つその人は、婚約破棄される私を見てくすくすと笑っていて。それを見た瞬間、彼女が王子に嘘を吹き込んだのだと理解した。
「偽り、だなんて、失礼です」
「知るか」
「せめてそこだけでも言い直してください。でなければ、この国の聖者様にも失礼ですよ」
「うるさい! 出ていけ!」
こうして私は城から追い出された。
あれから七年。
私は魔王の妻となった。
聖女というアイデンティティの一部を失った私を拾ってくれたのは、彼、魔王だったのだ。
それ以来、私は彼らのために生きることに決めた。
魔王と言っても人を傷つけることを生業としているわけではない。
彼は、いわば、魔族の国の長である。
私はこれからも彼と共に生きてゆく。
それが私の選んだ人生。
だからそれでいい。
ちなみに、私を追放した王子がいたあの国は、私が去ってから一年も経たないうちに滅んだそうだ。
災害に見舞われて国力が落ちていたところを近隣諸国に攻め込まれたそうで。
あっという間に占領されたそうだ。
ちなみに、あの王子を含む王族たちは、そのほとんどが処刑された後街中で晒されたらしい。
もっとも、魔族の一員となった私には、もはや何の関係もないことなのだけれど。
◆終わり◆