花屋の娘だから駄目なんですか!? 意味が分かりません! でももういいです、そういうことなら私は貴方とは生きません!!
私は花屋の娘として生まれた。
けれどもそれを恥じたことはない。
むしろ、私は、その仕事を尊いものだと思ってきた。
だって、花は皆を笑顔にする。花屋はそのお手伝いができるのだから、幸せを生むことができるのだから、悪い仕事だなんて思ったことは一度もなくて。
……だから。
「花屋の娘なんぞと縁を持つんじゃなかったわ! てことで、婚約は破棄とする!」
婚約者ボンボンにそう言われた時、私は驚くことしかできなかった。
親の仕事を悪く言われたのなんて始めてで、ただきょとんとすることしかできなくて。それで何も言い返せないうちに、私は去ることを強要されてしまった。
花屋の娘だから駄目なのか? 意味が分からない。理解不能だ。どうしてそんなことを平然と言えるの? 言われた方の気持ち、少しは考えないの? だとしたら、そんな心ない貴方の方がみっともないのではないの?
……でももういいです、そういうことなら私は貴方とは生きません。
そう思い、私は彼とは二度と会わないことを決めた。
◆
あれから十年、私は親が営んできた花屋を継ぎ、今はいろんなことに挑戦しつつ花の傍で生きている。
やはり私にはここが合っている。
美しい花が輝く場所、人々の瞳が煌めく場所。
ここが一番好きだ。
そうそう、これは最近になって親伝いに聞いたことなのだが。
ボンボンはあの後結婚したらしい。
しかし妻が猫かぶりな女性だったそうで、結婚した途端とても怖くなり、それからはボンボンは尻に敷かれる生活をしなくてはならないこととなってしまったそうだ。
ストレスによってボンボンは次第に病み、やがて、ある日の晩に家から飛び出したそうで。
その後の彼の行方は今も分かっていないそうだ。
◆終わり◆