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今までありがとうございました。それではさようなら、無礼な婚約者さん。
「悪いが、君との婚約は破棄とさせていただきたい」
婚約者バベルがそう言ってきたのは、ある夏の日のことだった。
「僕は君とは歩んでいけない。なぜって、君より理想的な人に出会ってしまったからだ」
「それが理由ですか」
「そうなんだ」
「そう……分かりました」
バベルの顔は恋している人の顔だった。
きっと何を言っても無駄だろう。
「今までありがとうございました。それではさようなら、無礼なバベルさん」
私はバベルと別れた。そして二度と会うことはなかった。だがそれも当然のことだ、あんな理由で婚約破棄されたのだから。許せるわけがないし、また会う気になれるはずもない。
その後私は学校に入り獣医になった。
今は見習いとして手伝いをしている。
ちなみに、バベルはというと、あの後愛している女性と結婚したらしい。
しかしそれは罠で。
その女性はバベルを愛しているわけでもなく、ただ彼から金をもぎ取りたいだけだったようで。はめられてやらかし、多額の慰謝料を支払わされることとなってしまったそうだ。
◆終わり◆