金髪令嬢は婚約破棄されても気にしない!
「本日をもって、お前との婚約は破棄とする!」
婚約者フルックリがそんなことを宣言してきた。
それもとても大きな声で。
そんな大きな声を出さずとも聞こえるというのに……。
「そうですか。分かりました。……念のため理由だけ教えていただいても?」
「うるさいぞ! そんなものはどうでもいいことだろう」
「いえ。婚約破棄するとなれば必要なことです。理由があるはずですので」
「知るか! 金髪が綺麗だからって勘違いするなよ! 金髪しか取り柄のないババアはさっさとどこかへ行ってしまえ!」
……どうやらまともに話すのは無理そうだ。
私は理由を聞き出すのは諦め、彼の前から去ることにした。
さようなら、フルックリ。
◆
あのろくに理由も教えてもらえない婚約破棄から数年が経った。
私は今、良家の息子と結婚し、それなりに裕福に暮らすことができている。
子も二人生まれた。
子がいるということもあり毎日はとても忙しいけれど、だからといって不幸かというとそうではない。忙しさの中にも楽しみはあり、細やかな幸せもある。
私はこれからもこの家庭を守っていきたい。
そういえば、これは最近両親からきいたのだが。
フルックリはあの後別の女性と結婚したそうだが、幸せにはなれなかったらしい。
結婚したものの些細なすれ違いから喧嘩が絶えないようになり、そんなある日、喧嘩の最中にフルックリは妻を殴ってしまったらしい。それからも何度かそんなことが繰り返されて。妻はしまいに家を脱走、治安維持組織に起きたことすべてを報告した。
そして、フルックリは、暴行罪で捕まってしまったらしい。
もっとも、殴ったのは悪いことだし、自業自得でしかないのだが。
◆終わり◆