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婚約者は浮気性! 〜治りそうにありません〜 (後編)

 彼との婚約が決まった時、両親も親戚も近所の人たちも、笑顔で温かく祝福してくれた。とても嬉しかった。小さい頃から、祝福される結婚をしたいと夢みてきたから。けれども、今はもう、あの祝福が棘になっている。彼らは何も悪くないけれど。ただ、あんなに祝福してもらったのにこんな結末にしてしまった自分が情けなくて、どうしようもない。


「怒らないでよー。僕、何も悪くないよ。むしろ合わせてあげてるんだよ。もう無理、なんでしょ? だから別れるって言ってあげてるだけだよー」


 アイルの発言を聞きながら確信する。

 やはりもう無理、と。


「……そう、ね」


 ここで耐えても同じことが繰り返されるだけ。

 運命は変わらない。


「そうしましょう」

「分かってくれたみたいだね、ありがとう」

「さようなら」

「うん! これからもずっと愛してるよ!」


 よくそんなことが言えるわね。


 別れられて嬉しいって、顔面に書いてあるわよ。



 ◆



 私とアイルの婚約は意外なくらいあっさりと破棄された。


 こちらの家はアイルの浮気性を知っていたし、向こうの家は私に特には執着していなかった。そのため話がまとまるのは早かったのだ。悲しいくらいスムーズだった。


 慰謝料の支払いは求めなかった。

 もうこれ以上関わりたくなかったから、である。


 支払いを求めても付き合いが長引くだけ。最悪、今より関係が悪化する可能性だってある。家と家の関係が最悪なものになる可能性もゼロではない。ある意味それはリスク。だから、何事もなく終わらせるためにも、何も求めず別れることを決めた。


 それで良かった。

 お金が欲しくて婚約破棄したわけでもないから。



 ◆



 あれから十年。


 私は今、貿易に関する仕事をしている。


 アイルとのことがあってから恋や結婚を諦めた私は、仕事を探すことにした。とはいえ、女性の雇用は少ない。また、ある程度雇用がある業種となると、種類が限られてくるのだ。


 生きてゆく道を探しきれず困っていた時、父親の知人が誘ってくれた。

 そして私は今の職に就いた。


 毎日忙しいし、慌ただしいし、休む暇もない時もある。男社会の中で一人の女が生きていく厳しさも感じられる。


 それでもこの道を選んだことを後悔してはいない。


 私がこの道を選んだ。だから悔やまないし迷わない。苦労があるのは、どんな道を進んでも同じこと。ならば、自分の道を行きたい。私は、強い思いを持って、この道を突き進んでゆく。


 小さなことでも一つ一つ積み重ねて、明るい未来を掴む。

 きっと、それが私の人生。



 一方、アイルはというと、今はもう生きていないそうだ。


 あれからもたくさんの女性と関係を持っていたらしい。私と婚約していた頃と変わらない行動をずっと続けていたと聞く。本命のような女性がいても、躊躇なく別の女性とも会って遊んでいたそうだ。


 私の後にも数名婚約しようかという話が出た女性がいたようだが、女関係で揉め、その話のほとんどが途中で白紙になったらしい。


 そんな風に生きていた最中、浮気を繰り返すことに怒った一人の女性に刃物で刺されて。


 そのまま亡くなったそうだ。



◆終わり◆

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