3-2 ~狼との出会い②~
狼を襲おうとしていた大蛇をザクが倒したことで、危険は去ったと思ったのに・・・・!!
こんな、こんな事って・・・!!
狼は走りながら魔物に襲われたのだろうか、脚にあるいくつもの切り傷から血が出ている。
元は綺麗だったであろう銀色の毛も、土や葉っぱが絡まり灰色に見えた。
先ほどの大蛇が毒を放ったのだろう、顔がひどく青ざめていた。
あまりのことに、私が呆然と立ちすくんでいると、ザクが怒鳴った。
「ミスズ!何してるのだ!お前はこの者を助けるためにきたのだろう!?さっさと動け!!」
「っっ!!い、今行く!!」
ザクの叱責に我を取り戻した私は、急いでザクと狼のもとへ駆け寄った。
「ザク、私どうしたらいい?」
「ミスズ、聖魔法どこまで使える?」
「わからない。でも、ヒールとキュアは確実に使えるよ。」
「わかった。ミスズはその二つをかけ続けていてくれ。我は食べれる物を急ぎ探してくる。」
「了解。」
「行ってくる。頼んだぞ。」
「うん!」
一瞬でいなくなったザクに驚きつつ、私はすぐに魔法をかける。
「狼さん、絶対助けるからね・・・!《ヒール》!《キュア》!《ヒール》!《キュア》!《ヒール》!・・・・・」
どのくらい時間がたったのだろうか。いや、実際は5分もたっていないのかもしれない。でも、ミスズにとっては永遠にも感じていた時間が、ザクが戻ってきたことで終わる。
「《ヒール》!《キュア》!」
「今戻ったぞ、ミスズ!」
「!ザク!!食べれそうなもの見つかった!?」
「ああ。急いでいたから、質はそこまでのものばかりだが。」
「ううん、ありがとう!」
「この者の調子はどうだ?」
「ザクがいなくなってからずっと回復魔法かけてるけど、あまり良くならない・・・。」
「かなり傷を負っていたからな・・・。我が聖魔法を使えれば、もっと容態が良くなったはずだが・・・。」
「今は気にしないでいいんじゃない?それよりほら、食べ物食べさせてあげないと!」
「ああ、そうだな。」
それから私たちは、途中で回復させながら狼に食べれるだけ食べ物を食べさせた。私もザクも魔力回復のために食べたけど。
回復魔法と食べ物の効果が出てきたのか、狼はだんだん回復してきた。
『ありがとうございます、黒竜様、人間の少女。』
「!?しゃべった!」
「しゃべったって・・・。ミスズ、お前この者の声を聴いてここに来たであろう?」
「そういえばそうだった。」
『ふふふ、お二人は仲がよろしいのですね。』
「もちろん!家族だからね!」
『なんと・・・。確か、黒竜様は昔に人間によって封印されていたはずでは?・・・ま、まさか!』
「ああ。ミスズが封印を解いてくれた。だから我はミスズに従属契約をしたのだが・・・。」
「私従属って嫌でさ。家族になってもらったんだよ。」
『なるほど、それは素敵ですね。』
「でしょ?」
他人に「家族」を素敵って言われると嬉しいな。
私の話を聞いてなにか考えこんだ狼さん。どうしたんだろう・・・
「おい、フェンリル、お前お腹の子はどうしたのだ?」
「『!!?』」
「フェンリル!?」
『気づいていたのですか!?』
「当たり前だろう?我は竜ぞ?」
え、え、え?フェンリル?確かに、なんかおっきい狼だなあとは思っていたけども!でも、それは異世界だからだと思ってた!まさか、フェンリルだったなんて!
「ほんとにフェンリルなの?」
『あら、少女はわからなかったですか。・・・。はい、わたしは黒竜様の言うとおり、フェンリルです。』
「まじですか!」
すげーーー!!私今フェンリルと喋ってる!
「やはりな。だが、それではおかしくはないか?」
「?なにが?」
『・・・。』
なんもおかしいところなんてなくない?
「フェンリルは聖獣といって、魔物よりも強い種族だ。いくら子を身ごもっていても、魔物なんかに死にかけまで追いつめられるのはおかしい。」
『・・・。』
「それは、言いすぎだよザク。それに、個体差があるのかもしれないし・・・。」
でも確かに、フェンリルが魔物より強いのなら、死にかけにまでなるのは変な気がする。
『・・・。そう、ですね。助けてくれた心優しいお二人には、話してもいい気がします。』
そう言ったフェンリルは、腹をくくった面持ちで言った。
『実は私は、「フェンリルの呪い子」なのです。』