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男二人で征く異世界漫遊記  作者: HYA
第二章 南大陸
11/15

第11話 城塞都市オールシー~帝都ヘブリッジ 1

 1日目

 オールシーからヘブリッジまでの距離は約800km。自作馬車での所要日数は16~18日程を予定している。


 宿を引き払い、商業ギルドへと向かう。今回も色々と便宜を図ってもらったので、出発前に挨拶する為だ。

 ギルドに入り、レイチェル嬢の姿を見つける。2番カウンターだ。コンシェルジュは他の客を相手にしているようだったので、直接向かう。

「今日は、この街を離れるにあたって、挨拶に来た。取引の件でお世話になったからな。」

「わざわざありがとうございます。」

「挨拶ついでに聞きたいのだが、オールシーからヘブリッジ間で、盗賊が出たとか、何らかの理由で道が使えなくなっているとかのトラブルが起こっていないかを知りたい。」

「商隊からはそのような話はありませんでした。…いえ!気になる話がありまして、途中の山間部で怪しい人影を見たと言う話がありました。念の為気を付けたほうがよろしいでしょう。」

「ありがとう。きちんと気に留めておくよ。」

 礼を言い、ギルドから出て馬車に乗る。

「挨拶は終わったかい?」

「ああ、気になることが一つ。道中の山間部で怪しい人影を見たと言う噂を聞いたそうだ。念の為特に注意しておこう。」

 その後、南大陸路線馬車ギルドへ向かう。運行状況と道中の安全状況を確認したが、こちらは特筆すべき事が無かった。


 馬車を出発させる。街の東門から出て北上する街道に沿って馬車を進める。

 主要街道だけあって、神殿への道とは違い状態はましだった。

 街の城壁外にある、麦畑や果樹園等が見え、街から離れるにつれ、それも無くなって、周りの景色が遠くに林や森の見える草原となり、あまり変わり映えがしなくなってきた。

 その日は、17時頃に進行を切り上げ、野営をするのだった。


 2日目~11日目

 村や町を幾つか経て、オールシーとヘブリッジを隔てる山間部に近づいてきた。

 山間部とは言っても、山の切れ目に道が通っており、きつい勾配差は無い。山間部の中頃を通りかかった12時過ぎ、警戒魔法に反応があった。街道前方2000m位に1つだけ反応があり動きは無い。そのまま進んでいると、地面に倒れ伏している人達の姿が目に入った。

「良くない事が起こったようだな。」

 倒れているのは20人位だった。野盗と思しき姿の者が7割位、傭兵と思しき姿の者が3割位だ。恐らく、野盗と何らかの護衛が争った後なのだろう。馬車が無い所を見ると、逃げたか、奪われたか、そもそも持っていなかったのか判別出来ない。

 一つだけ反応があると言う事は、生き残りがいると言う事だ。倒れ伏している者達を一人一人確かめてゆく。

 ようやく息絶えていない者を発見した。傭兵のようで、女性だ。だが、深い傷を負っており虫の息だ。一刻の猶予も無い。

「宏、生き残りを見つけたよ!瀕死だけどね。」

「とにかく、助けられるか手を尽くそう。」

 そう言い、光魔法の回復魔法ハイヒールを発動させる。傷は塞がったのだが、顔色が良くならない。深手を負ったので、血が足りないのだろう。

「身体回復ポーションがあったな。それを使ってみよう。」

 宏は、ポーションを口に流し込む。飲み込む余力も無いのか嚥下しない。止むを得ないので、口移しで無理矢理流し込む。

 すると、顔色が良くなり始めた。ポーションの効果は覿面だった。

 宏は気になるのか、その場で怪我人の様子を見続けていたので、俊充は残りの亡骸を埋葬することにした。

 掘削の魔法で大きな穴を2つ掘り、一応盗賊らしき者と、傭兵らしき者とを分けて、それぞれ埋葬してゆく。

 それから、1時間程経って彼女は息を吹き返す。

「ん。んっ。けほっ、けほっ。ここは?」

 どうやら少々混乱しているようだ。彼女を意識して見ると結構な美人で、少し長い髪をポニーテールにしている。不謹慎だが、均整の取れたスタイルだ。装備は恐らくメインが剣と、サブがナイフ、そして皮の防具だ。ナイフと防具以外は剣の鞘しか無かったからだ。剣はこの辺りに落ちているのだろう。

 状況を説明する事にする。

「沢山の人が倒れていて、戦闘の跡のように見えた。止むを得ないので埋葬しようとした所、貴女だけが生きていたので、俺が手を尽くして出来る限りの治療をした。その甲斐あってか、無事息を吹き返したようだな。一体何があった?」

「この度は助けていただきありがとうございます。私は傭兵ギルド所属のキャサリンと申します。オールシーからヘブリッジへと向かう商隊の護衛をしておりました。山間部に差し掛かった所、野盗に襲われ応戦していて何人か倒したのですが、多勢に無勢で背後から刺された後、深手を負って意識が朦朧となり、その後は覚えていません。」

「オールシーで怪しい人影を見たと言う噂は聞いていたのだが、野盗だったのだな。で、運悪く襲われたと。」

「はい。」

 悔しそうに彼女は言う。

「野盗は何人位だったんだ?」

「見た限り20人はいたでしょう。森の中から矢も射かけられましたので、それ以上かと。」

「貴女達の編成は?」

「荷馬車が4台と、護衛10人、御者が4人に、付き人2人、雇い主の商人が1人です。」

「そうか、こちらで確認したのは、盗賊らしき者14人と傭兵らしき者8人の亡骸だ。おっと、貴女が息を吹き返したから7人か。」

「そうですか。残りの者が無事だと良いのですが。」

 その直後、

「宏、こっちの作業は終わったよ。後は残った得物をどうするかだね。」

 と俊充が言った。埋葬が終わったようだ。土の塚が2つある。

「埋葬したうえで塚を築いたのに、土の汚れが無い。もしかして貴方様方は魔法使い様なのですか?」

「他言はしないで欲しいのだが、そうなるな。」

「そうですか。私は貴方様方に命を救われた身。誓って他言致しません。」

「それから、ここら辺に武器の類が散らばっていたから集めておいたけど、どうする?」

「恐縮なのですが、私の剣を探してもよろしいでしょうか?」

 すかさず了承する。直ぐに見つかったのか、一通り眺めてから鞘に納めていた。

「残った武器はどうしようか?僕は持っていくのは手間だから、塚に供えたいけどね。」

 俊充は集めた時点で鑑定と分析スキルをかけており、価値・材質面でも特筆すべき物が無かった事と、元素のストックも十分にあったので、興味は無かった。

「キャサリンさん、残りの武器を一緒に供えても大丈夫か?」

「持ち帰っても大丈夫ですが、供えると言うのであれば、それでよろしいかと。」

「じゃあ、供えておくよ。」

 俊充が掘削魔法で穴を掘り、武器を埋めてゆく。埋め終わったのを横目で見ながら、宏がキャサリンに問う。

「これからどうするんだ?オールシー方面に戻るとしても、最寄りの村まで馬車で2日はかかるぞ。ヘブリッジ方面は初めてだから、どの位かかるか分からないが。」

「厚かましいお願いで申し訳ないのですが、ヘブリッジ方面でここから最寄りの村までご一緒させていただけませんか?徒歩だと2日はかかってしまうもので。」

 宏は彼女を見る。武装と小さなウエストポーチはあるが、それ以外の荷物が無い。恐らく商隊の荷馬車の荷台に間借りしていたのだろう。放置すれば行き倒れになりかねない。

 俊充に問う。

「彼女を最寄りの村まで連れて行っても大丈夫か?」

「宏が良いなら僕は構わないよ。」

「それなら、送っていくことにしよう。」

「ありがとうございます!ですが、財布も荷馬車の荷台に預けた背嚢の中に仕舞ったままなので、ウエストポーチに入れている銀貨5枚しかありません。これだけではお礼にもならないので、道中護衛をさせていただけませんか?こう見えても多少は腕に自信があります。」

「護衛と言う事は、馬車と随伴して行うのだよな。そうなると馬車の速度が落ちてしまう。馬車の中に乗り込んでくれ。いざと言う時は戦ってもらうが、中に座席があるから、そこに座っていてもらう。それと、車内に入る前に血だらけの恰好は不味いな。浄化魔法で洗浄しよう。」

 そう言って、宏は浄化魔法で洗浄してから、御者席側の扉から馬車の中へと招き入れる。すぐ側にある2脚のソファーのうち、進行方向側の席に彼女を座らせた。

「いざと言う時には呼ぶから、今入ってきた出入口から出て来てくれ。それではごゆっくり。」

「お世話になります。」

 そう言って、彼女はソファーに座った。それを確認してから、宏は扉を閉め御者席に戻る。


 現在15時前。出発前にやる事がある。まずは周囲に野盗がいるかどうか確認する事だ。警戒魔法では反応が無かったので、警戒レーダー魔法で周囲をスキャンする。すると南東側6000m位に25程の反応が固まっていた。そちらの方向を見ると切り立った崖があり、遠目の魔法で見ると、崖の麓に洞窟がある。マップで拡大してみると、街道近くに分かり難い形でカモフラージュされた、辛うじて馬車が通れるほどの道が洞窟まで通っており、洞窟前に切り開かれた広場がある。これは野盗のアジトだと確信した。そこで俊充に問う。

「野盗のアジトを見つけた。恐らく残りの生存者がいたら捕虜として捕まっているだろう。捕虜を助けつつ野盗を何とかするには通常戦力が足りない。人を手にかけることは気が進まない上、多勢に無勢を覆す為、中規模以上の範囲魔法を使ったら捕虜も巻き込んでしまう。どうする?」

「この際、素通りして行くしかないよ。集団で集まっている以上、現有戦力で救出は不可能だよ。闇魔法のスリープでも使えば無力化出来るかもしれないけど、初めて使うからぶっつけ本番で賭けになるし、イメージが良くないであろう闇魔法は彼女の見ている前では使いたくない。それに、助けた人達から僕らの秘密が漏れるだろう。だから、最寄りの村か町で野盗に襲われた一団がある事を報告する位しか出来ないよ。」

「そうだな。心残りではあるが、捕虜の無事を祈りつつ、先に進むしかない。」

 そう言って馬車を発車させた。


 その頃、馬車内で彼女は色々考えていた。まずこの馬車だ。この座り心地の良いソファーに、発進後段差があっても、直接突き上げるようなきつい衝撃が無く乗り心地も良い。馬車内を見渡しても見たことのない設備が幾つかある。今まで箱馬車に乗った事は何度もあるが、このような異常とも言える馬車は見たことが無かった。

 それでいて瀕死の状態から回復させる光魔法や、短時間で埋葬を可能とする土魔法と、身体能力。明らかに普通ではない。詮索しては駄目な事は分かっているのだが、二人の事が気になって仕方ないのだった。


 リスクを避けるため、遅れたペースを取り戻すため、18時頃まで馬車を進め、ちょっとした休憩場所に馬車を停めた。辺りは暗いので、今日はもう誰も通らないだろう。

 野営の準備をする。馬車のタープを広げ、テーブルを置き、椅子を3脚用意する。タープの天井付近に光魔法の照明を出し、テーブルの上にアイテムボックスから出した弁当3つの中身をそれぞれステンレスの皿の上に盛り付け、グラスを出し、抜栓したワインの瓶を乗せる。籠の中に丸白パンを並べ、別皿にチーズを添える。パンの取り皿も並べる。

 カトラリーを出し終えた後、ふと気づいた。やってしまった。つい、いつもの癖で。そう、今日加わったばかりの客がいるのに保存食ではなく、普段の食事を用意してしまったのだ。今からでもアイテムボックスに仕舞えば間に合うが、まあ良いかと思い、そのままにしておいた。

 馬車に入り、俊充とキャサリンを呼ぶ。

「飯の支度が出来たぞ。」

「今行くよ。」

「同行させてもらったばかりか、食事まで。ありがとうございます。」

 三人とも馬車から降り、テーブルに向かう。ふと横を見るとキャサリンが目を見開いて驚いた表情をしていた。俊充は苦笑している。

「とりあえず、席に座ってくれ。」

 各々席に座る。

「折角の客人なので、今日のメインは鹿肉のロースト香草風味と、付け合わせの根菜類、豆類だ。」

 それぞれのグラスに赤ワインを注ぎ、食事を開始する。

 鹿肉は濃厚な旨味を持っていて、野生臭は香草で抑えられている。付け合わせの根菜類と豆類も中々だ。赤ワインは“ユニコ”を計6年促進熟成させたものだが、3年よりも味が円やかになって旨くなっている。まだまだ熟成に耐えられそうな感じだ。

「野営なのに、このようなきちんとした食事が食べられるとは…。」

 まず料理、酒瓶、グラス、食器類を見て、それから、まだ暖かい料理を口にして彼女は驚きっぱなしだ。

 次に赤ワインに口を付けると、また驚きながら尋ねた。

「これは、もしかしてターポートの銘醸ワインではありませんか?」

「良く判ったね。その通りだよ。ユニコって言うんだ。」

 と楽しそうに俊充が言う。

「ユニコって…。」

 彼女は絶句する。最高級クラスのワインであり、富裕層か貴族でもなければ到底買えないものだと知っていたからだ。かつて一度だけ飲んだことがあって、不思議な事にその時よりも明らかに旨いと感じていた。また、食事、食器類含め、馬車内には荷物は無かった。つまり、大容量の時間遅延もしかしたら時間停止のマジックバッグを持っているようだ。それならこのような食事を用意する事は造作も無いだろう。その事実を認識して緊張しつつも、益々彼らへの興味が深まってゆくのだった。


 一方で宏は彼女の様子を観察していた。傭兵と聞いていたので上手くカトラリーを使えないかも知れないと思っていたが、そのような事は無く、逆に上品に使いこなしており、見事な所作である事に驚きを感じていた。言葉遣いも丁寧だし、ただの傭兵では無いなと興味をそそられた。

 それから、突然益体も無い事を思い出したが、中世盛期位の時期であればまだカトラリーは普及しておらず、手掴みで食べていたはずだ。ターポート、オールシーでも食堂にいた人々は普通に使っていた。手掴みは宗教の影響が大きかったとも思うが、ここは異世界であり、広く布教されている宗教も異なっているからか、カトラリーの進化と歴史も異なっているのだろうと思った。


 食事が終わり、一息ついてから宏が切り出す。

「多分気付いていると思うが、俺達はマジックバック持ちだ。だからこのような食事が出せるし、表向きの荷物も殆ど無い。色々疑問に感じている事もあるだろうが、それも含めて秘密にして欲しい。」

「はい。このような事、軽々しく口外できませんし、するつもりもありません。」

「なら結構。」

「それじゃ、後片付けをしよう。食器類に洗浄魔法をかけてマジックバックに仕舞うだけだから、二人は先に車内へ戻ってくれ。」


「今日は色々あって気疲れしたよ。寛いでから眠りたいから、寝酒でも飲まない?」

「ああ。それは良いな。一杯やるか。キャサリンさん、貴女も飲むか?」

「よろしいのですか?それではお言葉に甘えて少々。」

 キャサリンと俊充をソファーに座らせ、宏はバックパックから椅子を取り出し、そこに座る。

「お世話になっている身なのに、このような上等なソファーに座らせてもらって申し訳ないです。私がその椅子に移ります。」

「いや、遠慮せずそのまま座っていてくれ。今酒を用意する。」

 モルトグラス3個とコップ3個、パチキョウ21と水のボトルを取り出す。

 それぞれに、酒と水を注ぐ。彼女はウイスキー初心者なので少なめのハーフショットだ。

「キャサリンさん、これはかなり強い酒だ。一気に飲むと苦しい思いをするだろう。だから最初はほんの少しだけ口に含んで舌の上で転がすんだ。」

「分かりました。やってみます。」

 少し口に含むが、口の先が熱い。それを舌に乗せ転がすと熱が広がると同時に濃厚な味と、一気に生じる香りが口の中一杯に広がる。

「飲みやすくは無いのですが、初めて飲む味です。味もそうなのですが、複雑な香りがとても良いです。本当に濃厚なので、少しずつなら飲めそうです。」

「きついなら、少し水を足して割るのもありだ。飲みやすくなる。そのまま飲むなら、合間に水を飲むと良い。口の中の辛さが和らいで一息つける。それから、他に酒の希望があれば、出来る範囲で出せるがどうする?」

「折角なので、皆さんと同じものを頂きたいです。そのまま飲んで、合間に水を飲みます。」

 彼女が少しずつ飲み始めたのを見てから、宏と俊充も飲み始めた。


 ゆったりとした時間が過ぎ去ってゆく。もう21時近い。寝るには良い時間だ。

 酒杯類と酒を片付け、ソファーの二人に退くように言う。

 ソファーの間のテーブルを畳み、ソファーを変形させて簡易ベッドを作る。

「このソファーがベッドになるなんて驚きです!」

 キャサリン用の簡易ベッドを作ってから、自分達の跳ね上げベッドを展開する。これで全員が横になって眠る準備が整った。

 キャサリンに枕と毛布を渡す。

「今夜はここで寝てくれ。俺達は向こうで寝ているから、何か用があったりしたら起こしてくれ。」

「分かりました。寝床まで用意していただいてありがとうございます。」

 キャサリンンが礼を述べた後、心配そうに言う。

「野営なので、交代で寝ずの番で警戒はなさらないのですか?食事時も気になっていましたが。」

「ああ。俺達は警戒魔法と結界魔法が使える。結界魔法は朝まで展開する事が可能なんだ。だから寝ずの番は、まず必要ないんだ。」

「そうでしたか。お二人とも相当練達した魔法使い様なのですね。」

 それから、宏が洗浄魔法で各々綺麗にしてから、寝床に就く。明かりを落とし、眠りについた。

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