表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

プロローグ下

 身を包むのはふわふわとした感覚。

 五感が失われたような、気持ち悪い感覚。

 しばらく、ふわふわとした感覚に気持ち悪さを覚えながらも浸っていると、唐突に七色の虹に包まれた光が現れた。


 黒く靄がかかっていた脳内に直接顕在したかのように。確かに視界は暗闇に包まれているはずなのに、何故か認識できていた。

 眩しいぐらいに光り輝くそれは愉快そうに、何語かも分からない言葉で語り出した。正確には、脳内に言葉が響いた。


「この世界は作り物。私はこの世界を作りしもの、神」


 七色の虹に包まれた光。何語かも分からない言葉。そしてこの台詞、まさか……。


「当たり、だね。私は君たちの世界を創造した所謂、神、だよ」


 俺は何も口に出していなかった。

 いや、まず喋ることが出来ないのだ。

 だが、こいつは俺の考えたことに反応してみせた。

 つまり、こいつは俺の考えたことを……。


「こいつ、酷いね。君は私の子供なのに。親に向かってその発言は、悪業だよ?」


 子供だと?

 どういうことだ。

 俺はお前から生まれた覚えなどないが?


「はぁ、理解力、ないね。君は私が創造した一部なんだから、子供ってこと」


 こいつ。伝承にある、暇だからって言葉でふざけた奴とは分かっていたが……思っていた百倍はうざいな。

 光だから顔がある訳ではないが、何となくだがニヤリとしている気がするし、声色も馬鹿にしてきている感じがプンプンとする。


「君も、大概毒舌だと思うけどね」


 ハッ、お前には負けるよ。


「……善行ランキングトップだったのに、じゃじゃ馬、すぎない?善行ランキング、見直した方がいいかも」


 善行ランキングだと?

 何だそれは。


「トップの子だし、いっか。善行ランキングはね、文字通り善行を積んだランキングだよ。それで君は一位だったんだ。よかったね」


 ほぉ、そんなのがあるのか。

 善行ランキング一位、嬉しいような嬉しくないような感じだな……。


「そう?凄いことなのに。ま、いっか。早速、本題に入ろっか。私は善行ランキングで来世への特典決めてるんだけど。君の善行多すぎ。特典エラー。最後の善行。あれがよくなかったね。あれ、善行ポイント高すぎるよ」


 善行が良くないって……。お前が善行しろって言ってきたのに凄い言い分だな。


「む。仕方ない。人間が生涯積む善行平均の一万倍の善行って、頭おかしいよ。君、チートでも使ったんじゃないの」


 善行チートってなんだよ。息するだけで人間の本分を全うしたから善行。みたいな感じか?そんなことできるかよ。

 というか、ふざけるな。

 さっさと本題を教えてくれ。


「おっけ。私はね、死んだら勝手に特典付与されて転生されるようにしてたんだよ。でも、君が頭おかしいから、エラーになっちゃった」


 なんで俺のせいみたいになってんだよ。

 一から百まで全部お前が悪いわ。

 で、俺の特典はどうなるんだ?


「それがねえ。特典はなし」


 は?

 まてまてまて!

 俺のこれまでの頑張りはどうなるんだよ!


「残念だけど、善行ポイントもエラーで分からなくなってるし、特典付与できないね」


 そうだ!

 わざわざ俺に会いに来たということは、何か対応をしてくれるんだよな?


「……はぁ。説明するだけ説明して、転生してもらおうと思ってたけど、可哀想だしね。一つだけスキルをあげるよ」


 スキル、だと?

 なんだそれは。


「そういえば、言ってなかったね。君たちの転生先は、所謂ファンダジー世界なんだ。そこでは、スキルが人生を決めるといっても、過言じゃないよ」


 ……なるほどな。

 善行を積めば積むほどスキルに恵まれ、善行を積んでいなかったらスキルがもらえず、地獄を見るというわけか。


「そうそう。まあ、正確には生まれや顔立ちなんかにも、影響するんだけどね」


 へえ。

 まあ、来世のことはなんとなくわかった。

 結局、俺には何のスキルを与えてくれるんだ?


「ふふふー。善行ポイントが分からないと言っても、君は一位。だから、所謂、チートをあげる。その名も、スキル【時空魔法の極意】!」


 時空魔法の極意……?

 良く分からんが、凄そう、ではあるな。


「そうだよー。なんたって、今まで誰にも与えたことの無い、唯一無二のスキルなんだからね」


 ふーん。

 性格の悪そうなお前にしてはえらくまともじゃないか。


「酷いなー。これでも立派な神様、なんだけど?」


 腐っても神ってことか。

 まあ、感謝するよ。


「むー。ま、いっか。どういたしまして。じゃあ、話は終わったようだし転生させるね。では、良い来世を」


 おう。

 じゃあな。

 


 少しすると、ふわふわとした感覚が強くなる。

 意識に靄がかかり、急に眠気が訪れた。

 最後に七色の光が姿を消すと、同時に俺の意識もそこで途絶えた。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ