表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/93

87 再建

「え、なに?どうしたの?」


 無事終わってさあ帰ろうかと思った美咲達だが、運営の様子がおかしい。

 ケラミュ(プチモン)達のさっきまでの騒ぎも静まり、ザワザワと奇妙な沈黙が広がっていた。


「何だか、あのネットのフェイク映像持ち出されて、文句言われてんだって」


 クローズした回線で、レオが4人に説明した。


「え〜!! あれ、あいつらがいい加減に作ったやつじゃん!! 何これ、一兆円駄目ってこと?」


 美咲は怒り心頭だ。目の前にぶら下がる一兆円がするりと逃げそうなのだから、当然である。


「いや、まだ協議中みたいだよ。下手な対応すると炎上するから、見守るしかないね」


 レオは冷静だった。他の3人も打つ手無しと言った風で、静観している。



「いやいや、抗議のコメントが沢山きています。……どうしましょう? 猿渡池さん?」


 杉山は、猿渡池にふった。

 ここで評判を落とすと、テレビのレギュラーも失いかねない事態だ。


(ぶっちゃけ、内容はどれも『あいつらに一兆円渡すな!』なんだよな…… ひがみや妬みか……)


 だが世間を敵にして、うまくいった例はない。こんな番組で人生を棒に振る必要も無い。世渡り上手な杉山の本能が、ここは猿渡池にすべて任せろと、言っていた。


「そうですね……」


 猿渡池も悩んだ。ここで、事実を言う訳にもいかない。そしたら火の粉がこっちに降りかかって、大炎上だ。レオ達も、本気を出せば、こちらの不正を晒す暴挙をしても、不思議じゃない。


 それにタマーランドも再建の目が出そうだし、下手なことを言えば経営に支障がでる。しかし立場上、自分が決めないとマズいのも、分かっていた。


「マ、創造主様(マスター)、どうします?」


 専用回線でマイクに入らないよう連絡する。


「あんた、何とか誤魔化しなさい!」


 言うのは簡単だが、やるのは大変だ。


「まあ、ヘルメット揃えてるし、衣装も違うし、別人じゃないっすかね?」


 確かに、毎回似た服装ではあるが、万が一を考え完全に同じ服では出動していない。幸い、ヘルメットは初めての装着だ。ネット動画も低画質だし、いずれ忘れられるだろう。


 ネットの反応も、『これ、違うんじゃね?』という風潮のコメントが増えて来た。


「ま、とりあえずこのパネルは渡しましょうか?」


 とにかく番組を終わらせれば、何とかなる。パネルには一兆円と書かれているが、マルサじゃあるまいし、実際に振り込まれたかどうか、確認出来ない。あやふやに終わるにも、儀式が必要だ。


「では、ヒロシリーダーに来てもらいましょうか」


 杉山としては、ギャラはもらって責任を負わずに終われば、それで良い。


「はい」


 猿渡池も同意する。


「ヒロシリーダー、こちらまで」


 杉山に促され、浩は中継会場まで足を運んだ。一兆円のパネルが猿渡池から手渡される。


「では改めてLITが一兆円ゲットです!!! おめでとうございます! 何か一言!」

「あ、ありがとうございます。ギリギリでしたが、何とか成功して良かったです」


「それでは猿渡池さんも、何か一言」

「今回、皆様のおかげでゴジ助も元に戻りました。これからタマーランドも建て直しますので、再開の折には是非ご来園下さい。皆様のお越しを、心よりお待ち申し上げます」


「ありがとうございます。それでは今回で最終回になりました、『ゴジ助倒したら一兆円!』の企画を終了します。今まで大勢のご視聴、ありがとうございました!」



 無事ネット動画は終わる。それを見越したかのように、ジェニファーが丘へやってきた。顔を出せない身分であるのと、万が一のために研究所で待機していたが、もうその必要はない。


「アネキ、これで良いかい?」

「あ、ありがとう……」 


 柄にもなく、少し目が潤んでいたジェニファーは、丘を下りてゴジ助の元へと向かった。ジェニファーを一目見て、ゴジ助は培養槽にいた懐かしい日々を思い出していた。


 マ、ママ……


 培養槽の時から、ずっと見てくれていた存在だ。

 ジェニファーも、ゴジ助のゴツゴツしたお腹にひしっと抱きつく。


「ごめんね……」


 ジェニファーがゴジ助に寄り添う姿は、母親のようであった。仮そめにも自分が作った作品だ。可愛さはひとしおだろう。ゴジ助も、ジェニファーの肩を抱く。


 ケラミュ(プチモン)達やLITのメンバーは、しばらくその姿を眺めていた。


「そうだ、原子炉取り替えなきゃね。あとであっち(研究所)に行こう」


 ウン……


 子供のようにニコニコし、ジェニファーになつくゴジ助であった。


 ジェニファーは、ケラミュ(プチモン)達にも話しかけた。


「よし、これからタマーランドの修復をはじめるよ!みんな頑張ろう!!」


 ワーー!!!

 ウオーーー!!


 ジェニファーの呼びかけに、歓喜の声を上げるケラミュ(プチモン)達である。廃墟と化し荒涼としているタマーランドに、希望の光が差すようであった。


「これで、やっと帰れるね」


 富崎さんが乗るフェンガーMkIIが丘に降り立ち、レオが言う。


「みんな、お疲れさま」

「はい!!!!」


(明日は、畑に行ってナスの収穫しようっと♪)


 今までの苦闘を忘れ、気分を切り替える美咲であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ