86 帰還
フギャオーー!!
レーザーをまともに浴びたゴジ助だが、まだ怒りは収まってない。
「駄目か!」
「ではわたしが!」
後ろの声に5人が驚くと、ピカ吉が現れ、ゴジ助に向かって、大きく飛び跳ねた。
LP砲のレーザー目がけ、電気を放出する。10万ボルトだ。
ビカビカビカーーー!!!!
フンギャーー!!
最大出力のレーザー直撃を受けたゴジ助は、ここに来てようやく、目の色が赤から正常な白へと変化し始めた。同時に振り上げた腕も下ろし、動作が緩慢となり、やがて丘の前で立ちすくんだ。
ンゴゴゴ……
「やったか?」
5人は祈るような気持ちで、レーザー照射を続ける。うまくいっているようだ。
すると、温和で優しい顔付になったゴジ助が、少し縮んだように見えた。
「ど、どうしたの?」
「あ、あれは?」
LP砲の効果で攻撃色の消えたゴジ助から、何か光る物体が離脱し、5人の前に降って来た。ケラミュのリザードドンだ。他にも、光る塊が次々と吹き出てくる。
「もしかして、ケラミュ達?」
「戻って来たんだ!」
一匹、また一匹……
それらは、ゴジ助に取り込まれたケラミュ達だった。
元の姿に戻り、続々と降臨してくる。生きている。
そして取り込まれたケラミュ達を放出したゴジ助の体は、どんどん収縮していった。
ゼルネロスも、戻って来た。
「浩殿!」
「ゼルネロス! 無事だったか!」
「ゴジ助の内部制御が外れたから、皆もとの姿で戻って来れたのだ」
ワーイイ!!!
ピカピカーー!!
ケラミュ達の歓声が、あちこちに響き渡る。
「良かった〜」
美咲は予想以上の効果に、安堵した。
だがゴジ助への効果は、それよりも予想以上であった。
本来の身長である三十メートルを過ぎても、縮小が止まらない。
まるで、ス○ールライトみたいだ。
「あれ、変じゃない?」
レーザー出力を止めた時、とうとう最初の体長よりも、ずっと小さくなってしまった。そして残されたのは、大きいプチモン達と変わらない背になった、ゴジ助だった。
……
無垢な存在になったゴジ助は、周りを不安そうに見渡した。
ケラミュ達も、ゴジ助をじっと眺める。
今まで散々悪さをしてきたのだから、彼等から怒られ非難されて当然だ。
戦いに負けたボス猿は、もう群れにいられない。
少し他のケラミュ達とは間が空き、ゴジ助は怯えた目をしている。
ゴ、ゴメンナサイ……
今までいじめっ子だった生徒が逆の立場になったかのように、俯き黙るゴジ助だった。
そんな中、ゼルネロスがケラミュ達をかき分け、ゴジ助の元へとやってきた。
怯えるゴジ助は、ゼルネロスよりか弱く見える。
体を震わせる姿は、さっきと真逆であった。
だがゼルネロスはそんなゴジ助を、一匹のケラミュ達として扱うようだ。
友情の徴としてゼルネロスは頭を下げ、立派な角をゴジ助の前に差し出した。
ゴジ助も、その角に握手をすることで応える。
トモダチ!
トモダチ!!
ナカマ!!
ケラミュ達はゴジ助を仲間と認め、更なる歓喜の輪が、幾重にも広がった。
『終わったね……』
ジョニーが言う。
「そうね」
「おばちゃん、サンキュー!これで一兆円、ゲットだぜ!」
レオの声に、5人にも歓喜の声がこだまする。
「つ、遂にやりました! LITがゴジ助を更生したのです! いかがでしたか、猿渡池さん!」
「彩ちゃんの見られんかったわ〜 あのくそボケ」
「そうでしたか、これで一兆円はLITのものになります! ……え、ちょっと待って下さい?」
杉本はネット情報を見て、異常を察知した。
「ネット投稿ですが、『このLITって会社、タマーランドを邪魔したりケラミュを奪って悪さした経歴がある』との指摘があります。確かに、タマーランドの開催当時、そんな産業スパイの話がありましたね。なになに、『今回の騒動も自作自演じゃないか?』との噂がSNSで広がっています。これはどうなんですか?猿渡池さん?」
「あ、いや、そうなんですか?」
(やば、あの時の一件、まだ覚えられてるんか……)
流した張本人にも関わらず、ネットの怖さを知る猿渡池だった。




