85 LP砲
「なによ、あんた! 邪魔しにきたの!」
威嚇するネコのように、美咲はジェニファーに噛み付いた。
直感だが、この女は信用ならない。
「別に。タマーランドは私のなんだから、何処にいても良いでしょ」
ジェニファーは美咲の威嚇に全く動じず、鼻であしらっている。
「その鼻持ちならない態度が気に食わないのよ、クソビ○チ!」
「脳筋バカ女、ここで喧嘩しても何も終わらないわよ?」
「は、そうだ!」
ジェニファーに諭され改めてゴジ助を見ると、さっきより確実に接近している。時間はない。
「わたしもあんたらの為にちゃんと仕事してたのよ、はい、これ見て!」
ジェニファーが指差す先を見ると、発電所の側に大きな機械が置かれていた。
「何これ?」
「増幅器よ。これをあなたのLP銃にコネクトするから貸して。確実にゴジ助の脳を刺激できるわ」
今はこの女を信じるしか無い。言われた通り銃を渡すと、何やら外して中にくっ付けている。
「出力は大丈夫?」
「安心したまえ。わたしも協力する」
発電所の方から声がしたと思うと、ピカ吉が出て来た。
残り少ないケラミュ達もいる。
「ありがとう」
美咲は礼を言った。
「しかしゴジ助、大きくなったわね……」
感慨深そうに、ジェニファーが呟いた。
「あんたのせいでしょ!」
「私だって、こうなるなんて思ってなかったわよ!」
『まあまあ。言い合いは止めて、早く準備しよう』
ジョニーが仲裁に入る。
「そ、そうね……」
「そう言えばあんたら、これでゴジ助を眠らせたらどうするつもりなの?」
ジェニファーが全うな質問をしてきた。ここで隠しても仕方が無い。
「後からフェンガーMkIIが来る予定なの。それで眠ってる間に吊るして運んで、伊豆の沖合か太平洋の海溝に置いてこようかと」
レオがたてた作戦だった。
倒せないなら、人間には無害な場所に置いて来るしか無いだろう、との結論になった。
ゴビ砂漠とかの意見もあったが、国際問題は避けたい。
「……それ、先送りじゃないの?」
「仕方ないじゃない、壊せないんだから!!!」
「……そうね。悔しいけどあんただけが頼りなのよ! お願いするわ!」
それだけ言うと、ジェニファーは丘を下りて研究所の方へと戻って行った。
(分かってるけど……)
「私は、ゴジ助にどうなって欲しいのかな?」
『どいうこと?』
ジョニーが聞いた。
「死んで欲しい……とは違うかな。ああやって暴れているけれど、何か気の毒にも見える」
『そうだね、苦しみ藻掻いてるようにも感じるよ』
ジョニーも同意する。
「うーーん……」
悩む美咲であった。
「直樹と彩、来ました!」
直樹に抱きかかえられ、2人が到着した。基本は美咲のレーザー光線に干渉して増幅すれば良いのだが、その入射角が精度を求められる。美咲の位置を確認し、2人も所定の位置についた。
ドドーン、ドドドーーーン!
グアオオオオオ!!!!
ゴジ助の歩く震動だけでは無く、鳴き声も間近に迫ってくる。
レオと浩が前方にいてこちらへ誘導するが、動きが速く、危うい。
すると上空から予定通りフェンガーMkIIが現れ、ゴジ助の頭部目がけ爆弾を投下した。
ドッカーーーンン!!!
「富崎さん!」
うまい具合に命中し、派手な煙幕でゴジ助の動きが削がれる。その間に2人も丘の上に到着した。
「おばちゃん、皆そろったよ」
「みんな良いですか? 所定の場所に着いて。美咲さんのタイミングで発射します!」
浩の指示に従い、五つの部品を組み立てLP砲にした。
ドッシーーン!!
ゴジ助が直ぐ目の前まで来た。射程距離に入る。美咲の引き金を引くタイミング次第だ。
(元々は、私が撃ったから、こうなっちゃったんだな……)
あの時を振り返る。大翔を助けるのに無我夢中だったが、あれが原因なのは明らかだ。
もしかすると、優しいゴジ助がいたのかも知れない。
あれだけ大きいから、きっと人気者になっただろう。
そう思い始めると、申し訳なく感じる美咲であった。
(今のゴジ助が、本当のゴジ助じゃないのかも……)
「美咲くん、そろそろ!」 浩リーダーの声に、我に返る。
ゴゴゴゴーーン、ドッッドーーン!!! ギュアオオオオーーーーー!!!
もう、本当に目の前だ。ゴジ助も5人の姿を認めて、腕を振り上げようとしている。
「さあ、どうなるのでしょうか。いよいよこれがラストバトルかも知れません!!!」
杉山の解説も、興奮して声が裏返っている。
美咲は覚悟したように構えると、
「ゴジ助、仲良くしようーー!!!!!」
と叫んで引き金を目一杯引き、LP砲を発射した。
他の4人が出すレーザーもあわせ、鮮やかな色の光線がゴジ助の頭に直撃した。




