84 激闘
ギャアオオオオオ!!!!!
覚醒したゴジ助の攻撃はハンパ無く、次々と繰り出される大技に、解説の杉山も息を飲んだ。
「我々が今まで見ていたのは、本当のゴジ助ではありませんでした! 図体がデカいだけで寝てばかり、のっそり動くゴジ助は、仮の姿だったのです! こうして俊敏に獲物を捕らえ狩る様は、いかにも白亜紀を我が物顏で闊歩した恐竜そのものです。高さに加えこのスピード、死角は見当たりません。人間はおろか、この地上に勝てる動物は皆無でしょう!
ですが5人も、散開しながらうまくゴジ助の攻撃をかわして反撃しています。おお、凄い! 彼等の跳躍力も、人間業では無いようだ。特殊な装置を付けているのか、まるで立体機動部隊のように、巨人であるゴジ助の周辺を飛び回ります。でも何せ150メートルの怪物と人間。差があり過ぎます。おおっとぉお、ナオキとアヤがワイヤーで足元を縛ろうとしましたが、ゴジ助がジャンプして回避しました。うわ! 足跡が落とし穴になりそうなほどめり込んでいます!そしてすかさずメンバー目がけ駆けて行くぅうう!! ヒロシ、既のところでかわした! 頑張れ!LIT!!」
ゴジ助の運動能力は想像以上で、5人の反撃も利かず、攻撃を避けるだけで精一杯だった。
的を絞らせない為に距離を取っているので、互いの回線で連絡を取り合う。
「さっきので、互いの位置関係は把握出来ましたか? データを送ります」
浩リーダーからデータが転送されてきた。
「はい」
「記録しました」
「オッケーです」
「大丈夫だよ、リーダー。ただ、同じ距離で撃つとなると、今度は高さが必要だね」
レオの言う通りであった。LP砲の射程距離は短い。出力を上げても届く距離は50メートルだ。
150メートルのゴジ助の頭部に冷静な気持ちで撃ち込むのは、困難と言える。
グアオオオ!!!
ゴジ助が彩に襲いかかるが、間一髪、服も破れずに避けられた。
「タマーランドで一番最適な場所となると、やっぱりあれかな?」
レオが言う先にあるのは、ピカ吉達の発電所である丘だった。
ゴジ助の方が高いが、あれならレーザー照射の射程距離内だと、AIの計算で確認もとれた。
「では、美咲さんは先に行って、エネルギー充填して下さい。4人で追い込みます」
「リーダー、大丈夫ですか?」
美咲は4人が無事で居られるか、心配であった。
「大丈夫、皆やりますよ」
「任せて下さい!」
「美咲も頑張って!」
「後で行くから、おばちゃん」
「ありがとうございます」
頼もしい言葉に送られ、美咲は丘の方へと跳躍した。
美咲が行くのと反対方向にゴジ助の気を魅かせる為に、彩と直樹が攻撃する。
レオと浩も反対側から迎撃し、ゴジ助に的を絞らせない。
コイツラメ!!
ゴジ助は怒りで一杯になり、口から火炎砲を放射し、彩を掠めた。
キャ!
「やったか?」
ずっとモニターを見ている猿渡池が、思わず叫ぶ。
「大丈夫?」
倒れた彩へ、直樹が駆け寄った。
「だ、大丈夫です、イタ!」
彩は気丈に答えるが、足をくじいたようだ。
「じゃあちょっと」
と言うと、直樹は彩をお姫様抱っこして、目的地の丘へ向かって飛び跳ねた。
「何だアイツは!!」
一人だけモニターを見て興奮する男がいる。
「レオさん、リーダー、お願いします!」
「分かった」「了解、丘までの誘導は任せて下さい」
ヴォランタペに乗るレオと浩は、ゴジ助が丘の方に来るように挑発した。
『美咲、大丈夫?』
丘に向かう間、ジョニーが心配そうに言う。
「何で?」
『今の感情だと、かなり興奮状態だから』
「そうね、丘の上に行ったら、まず精神統一が必要ね」
何度も来て見慣れた丘の上に向かうため、崖を登って行く。以前掘った穴は既に埋められていた。
「ふう、やっと来た。改めて見ると、良い景色ねえ」
丘の上に辿り着き、辺りの風景を見渡した。確かに見晴らしが良く、気分も落ち着く。
だが遠くにいる真っ黒な山が、こちらへ向かっている様子が見て取れた。ここも震動で揺れる。
今からあれを、何とかしなければならない。大丈夫とは思っても、恐怖や興奮がまだ収まらない。
「あら、やっぱりここへ来たのね」
声がするので振り返ると、そこにはジェニファーがいた。




