80 ゴジ助倒したら一兆円!!
「はい、今日もAmabeTVの人気コーナー『ゴジ助倒したら一兆円!』の時間が参りました。実況はわたくし杉山清、解説はタマーランドのオーナー、猿渡池さんです。よろしくお願いします」
「あ、どうも」
「人気絶頂だったタマーランドも、今や立ち入り禁止区域になり一ヶ月経ちました。如何ですか?」
「いやー、苦しいっす。赤字っすわ」
「自業自得だから、当然ですね。だからこれ使ってお金儲けを始めた訳ですか」
「はい、全世界の皆様から知恵を頂戴して、ゴジ助を倒してもらえればと思いまして」
「そんな都合良くはならないと思いますが、いってみましょう。では今日の挑戦者、ジムさん一同です。なおPMCに勤められており、機密保持のため総て仮名だそうです」
「よろしく」
画面に現れたのは、迷彩服を着た、いかにも退役軍人の空気を醸し出す無骨な男達であった。映像に残るのは避けたいようで、既にフルフェイスのヘルメットを装着している。明らかにリーダーと分かる男に、解説の杉山はマイクを向けた。
「えーと、経歴にはウクライナの民間軍事会社とありますが、どんな勤務内容を」
「ああ。今は主に北中米でテロ指導者の掃討作戦を担当している」
「それは凄いですね。で、なにゆえこの参加を?」
「我々の腕試しと、息子がゴ○ラのファンでな。是非行ってこいと言われたんだ」
「ああ、そうですか。他にも沢山のメンバーがいますが、今回は何人で参加されるんですか?」
「31人でやる。百億ドルは山分けだ」
「百億ドル貰ったら、何をしたいですか?」
「とりあえず帰る前に久々に沖縄行って、辻辺りでジャパニーズガールと遊ぶよ」
「それはそれは。じゃあ、スタンバイお願いします。猿渡池さん、どうですか?」
「まー、良いんじゃないっすか」
猿渡池は、あまり期待していないようだ。金額の多さにつられ今まで32組ほど登場したが、芳しい成果は全く上げていない。それどころかゴジ助は眠ったまま何もせず、無視する時もあった。
その為、ゴジ助を動かした距離に応じて、数万円から三十五億円までの賞金も加えた。
AmabeTVとYourTubeの視聴者数に応じた報酬等で、それなりに収入が入る。
他にもピカ吉達をYourTuberにして色々やらせているので、維持費ぐらいは賄えた。
それに先端軍事機器のデモンストレーションとしても、最適なShowとなっている。
「それではスタンバイオッケーのようです。おお、戦車とヘリコプター部隊に加え、パワードスーツも数体ありますね。戦車はレオパルド、エイブラムス、チャレンジャーにメルカバの最新型ですか。全然ウクライナじゃないですね。あ、戦闘ヘリはアパッチとハボックの混成部隊です。さすがグローバル企業、これは今までの中でトップクラスの戦力です。期待出来そうです。思い切りやってもらいましょう!!」
「スリー、ツー、ワン、ゴーーー!!!!」
ゴゴゴゴゴーー!!
バタバタバタバタ
開始と共に凄まじい爆音でヘリコプターが飛び立ち、戦車が散開していく。
パワードスーツに身を包んだ兵士達は森や草原に走り込み、見えなくなった。
各地に設置されたモニターで、各兵士が潜む現在の位置状況が確認出来る。
ゴジ助の位置関係も含め、ネット視聴者からはリアルタイムで動きを観察可能だ。
ゴジ助近辺にもモニターが設置され、その巨大さと間近な迫力が視聴者を喜ばせた。
リーダーには特別カメラが設置されており、作戦の様子が手に取るように分かった。
「よし、ファイアー!!!」
リーダーの指示で、空と陸からの一斉砲撃が始まる。四方向からなる戦車の砲撃は迫力満点だ。
更に上空からも絶え間なくミサイルが打ち出された。
ドドドドーーーン!!
ガガガガガガガガガ!!
ヒューーーーン、ズバァアアンン!!!
確かに激しい攻撃で、ゴジ助の周りにある草木が燃えるほどであった。
だがゴジ助は、微動だにしない。ただうるさいハエを追い払おうと、目だけは覚ました。
「お、目覚めました! これで五十万円は確定です! 腕を振らせて二百万いくでしょうか?」
解説者は興奮しているが、山のように盛り上がったゴジ助は、それ以上の行動はしなかった。
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「そろそろ良いかな? どうせ彼等じゃ倒せないから、この辺で観るの止めるよ」
ここはLITの作戦会議室。と言ってもレオが仕事部屋とする民家の離れだ。
タマーランドのネットテレビ中継を、富崎さんも含めた6人で視聴していた。
暑い夏、畳の部屋でこたつテーブルを囲み座布団の上に座る姿は、まるで昭和の風景だ。
エアコンも無いので、窓を開けて扇風機が回っている。
「ゴジ助、やっぱり地球最高っすか。キング◯ングとかア○ンジャーズを呼ぶしか無いんじゃ?」
直樹が興奮した口調で、レオに意見する。
「どっから? そんなの居ないよ」
現実主義のレオは、至って冷静だ。
「じゃあキング○ドラ? 地球外生命体のトラン○フォーマーとか」
「だから居ないって」
レオは笑いながら、否定していた。
「それなら、こっちもメカゴ○ラで対抗しましょう!」
「いや、あれもメカだし。LITの予算では不可能だよ」
直樹とレオのずれたやり取りを聞いている他のメンバーも、妙案は浮かんでこない。
「LP銃の出力は、あれ以上にならないのでしょうか?」
美咲が質問する。
「そうだね、そこに関してはまだ改良の余地があるよ」
「新兵器があるんですか?」
彩が重ねて問う。
「まあ、後で。それより皆集まってるし、そろそろ言わなきゃなと思ってる事があるんだ」
改まって、レオが話を始めた。




