77 最終兵器
『えー、えー、マイクテスト、あー、あー』
猿渡池の声が、タマーランド内に響き渡った。
『ご来場の皆様、本日もタマーランドにおいで下さり、誠にありがとうございました。
突然のイベントでビックリされたかと思いますが、急遽、来年公開予定のタマーランド記録映画の為に、空前絶後の大アトラクション、《ゴジ助vsタマーランドの仲間達》の撮影を開始しております。
つきましては非常に危険でありますので、本日はタマーランドを閉鎖し、駐車場でのパブリックビューイングのみと致します。プチモン達の誘導に従い、駐車場までご退出のほど宜しくお願いします。
またタマーキャッスルも五分以内に閉鎖致します。ご面倒をおかけして申し訳ございません。またのご来場を、お待ちしております。繰り返します……』
「すげえー」
「ゴジ◯、かっけー!」
猿渡池のアナウンスと共に、園内に居た大翔たちの小学校を始めとする来場者達が避難した。
タマーキャッスル内にいた人達も避難終了。これで、心置きなく闘える。
「ほな、行きまっせー」
猿渡池がパネルの前にあるボタンを押すと。突然、タマーキャッスルが光り始めた。
ゴゴゴと、何やらモーター等が動く音がする。
「な、何だ?」
LITの5人があっけにとられて見ていると、タマーキャッスルは人型ロボットへと変形した。
操縦室にいるのは、もちろん猿渡池だ。
どう変形したのか謎だが、顔がジェニファーも好きなハローケティなのは愛嬌だろう。
(彩ちゃん、見てまっか……)
モニターのパネルの一つは、彩専用になっていた。彼女の闘う姿が高解像度で良く見える。
因みにこの操縦室はジェニファーでさえ立ち入り禁止だが、至る所に彩の写真が貼ってある。
(何や、スパッツ履いとる! 今日は完全防備でヒラヒラ見えへんのか、残念……)
(ゴジ助は熱風もミサイル攻撃も無いから、服破るには爪で切り裂かれるしかないやろな。そや、このミサイル掠めたろか!)
猿渡池辰也。敵にも味方にもしたくない、恐ろしい存在だ。
「ちょっとタッちゃん、大丈夫?」
動かないタマーキャッスルに業を煮やしたのか。モニターにジェニファーが映し出された。
「あ、すんまへん、やりますやります。ほいしょっと」
猿渡池は気を取り直して攻撃態勢になり、腕や頭や胸からミサイル百発を一斉にぶっ放した。
ドガーンン、ドドドーーンン!
ガガガガーーーンン!!!
全弾、ゴジ助に命中する。急な攻撃にLITやケラミュ達は、巻き添えを避け慌てて逃げた。
煙が充満して煙幕のようになり、ゴジ助の姿は視界で確認出来ないほどだ。
「たまや〜!!」
「すげー花火みたい!」
「頑張れ、タマーキャッスル!」
「ゴ○ラ負けるな!」
駐車場で見ている子供達は、気楽に応援している。先生達ものんびりしたものだ。
何しろ目の前で本物の特撮バトルが繰り広げられている。これで興奮しない訳が無い。
「相変わらず、アネキは派手だな……」
「何あれ? あのビ○チこんなの隠してたの?」
「同士討ちにならないように、気をつけないとですね」
「まだゴジ助の耐久度が分かりませんが、今は彼に任せるしかありません」
「ゼルネロス達も、やりにくそうだな」
LITのメンバーも、この展開には戸惑った。ただまあ、倒せるなら文句は無い。
「ひゃっひゃっひゃ、これならいけまっせ!」
猿渡池は調子に乗っていた。やっぱり派手なミサイル攻撃は、戦闘の華だ。
(彩ちゃん、見てるかな?)
猿渡池は彩専用モニターばかり見ていて、ゴジ助はそっちのけだった。
勝者の余裕と言うものか。
だがゴジ助も、隠し球を持っていた。攻撃の手が緩まったこの時、彼はチャンスを物にした。
フハァアア
ゴジ助は、大きく息を吸ったかと思うと、少し間をためた後、ゴゴゴーーー!! と、一気に吐き出した。あっという間に、煙が吹き去っていく。
やはり今のミサイルは効いたらしく、ゴジ助のお腹や手足の皮膚構造が、少し剥がれている。
だが動きは悪くなっていない。そしてゴジ助の口には青白い光が蓄積し始めていた。
「ビーム攻撃?」
5人は直撃を避けるため、散開した。
ゴジ助は首を左右に振り、その青白いレーザービームを、四方八方に絶え間なく放射した。すると、その光に当てられたケラミュ達は、みな痺れたように動けなくなり始めた。
「な、なんだ? 体が痺れて動けない!」
産まれたての子鹿のように必死になって立とうとするケラミュ達だが、立てない。
「シナプスレーザー? もしかして神経細胞が遮断されたのかも知れません」
彩が説明する。
倒れ込むプチモン達の苦悩をよそに、ゴジ助は次なるアクションを起こし始めた。
ゴジ助が倒れるのは、やはり未だ先のようだ。
(やばいかな?)
猿渡池は、一抹の不安を感じていた。




