76 超バトル
あいたたた……
美咲は振り落とされ自由落下したものの、日頃の訓練のおかげで怪我は無い。
「大丈夫かい?」
声の方を向くと、直樹が駆け寄って来ている。
見ると他の3人も降下して、ここに集合した。
「すいません……」
怒りが消えると美咲は我に返り、自分のしでかした事を認識する。高校時代の乱闘騒ぎで、気付くと1人残され警察に捕まり叱られた時ぐらいの、気まずさだ。
「おばちゃん、これじゃ駄目だよ」
レオが呆れた顔で言う。
「すいません……」
美咲は謝罪を繰り返すばかりであった。
「それより、現実に対処する必要があります」
彩は冷静だった。
「そうだね。まず彼等と共闘かな」
レオが言う先には、LITで死闘を繰り広げたケラミュ達が大勢集まっていた。中央奥にはゼルネロスが居る。ゴジ助も、歩む先で戦闘態勢をとる彼等を認め、対峙していた。
「遂に、日本が誇るキャラ同士のファイナルバトルですか。これは見物だな〜」
直樹は妙に感動している。浩は相変わらず、無言で一番目立たない位置にいた。
「レオちゃ〜ん! 来てくれたのね!! お姉ちゃんを心配してくれたのね! ありがとう♡」
急に、ジェニファーからの回線映像がLITメンバー全員のウェルクルスに繋がった。
「ちょっとアネキ、これどうすんの?」
「えへ、ちょっとぉ、今回はぁ、私もやり過ぎちゃったかな?って思ってんのよぉお。テヘ♡」
「あんた、♀っぽくする前に早くアイツの弱点言いなさいよ!」
無駄にしおらしくモジモジするジェニファーが腹立たしい、美咲であった。
「何言ってんの、脳筋バカ女! あんたのせいでゴジ助がああなっちゃったんでしょ!」
「あんなの作ったあんたが悪いでしょ! このクソビ○チ!」
殊勝な態度は似合わない2人だけあって、先ほどまでの謝罪はどこへやら、直ぐ素に戻った。映像だから良いものの、こんな調子で直接会ったら、つかみ合いの喧嘩になりそうな勢いだ。
「まあまあ、ちょっと2人とも」
流石にそんな時間も無いから、レオが仲裁を取りなした。
レオの立場からすれば、どっちもどっちで、げんなりする。
「で、アネキ、実際あいつの弱点は?」
「ある訳ないでしょ!」
「え、そう言うの良いから。裏設定教えてよ」
「だから無いって! 強いて言えば、さっきまで上手く動けなかったぐらいよ。でも原子炉が完全稼働したから今からは多分百年は大丈夫ね。ずっと元気よ。ついでに色々取り付けたし、そもそもゴジ助の体内で勝手に機械工作して自己増殖するプログラムも入ってるから、何が出てくるか私も分かりませんわ〜 おほほほ!」
「なにそのご都合主義な設定!」
レオは苦虫を噛み潰したような顔をした。
つまり、ここから何が起きるから分からない。
「まあ色々言ったけど、私のケラミュちゃん達が上手くやってくれるわよ。見てて!」
ジェニファーの言う通り、ケラミュ達は臨戦態勢に入っていた。
「こおりタイプのプチモン、前へいでよ!」
ゼルネロスのかけ声と共に、ラプロス、フリーゾー、グレイシオ、トドザルガ達が前へ出た。
「ゴジ助を氷付けにするのだ!」
命ぜられたプチモンはゴジ助を取り囲み、一斉に冷凍ビームやブリザードを放った。
一瞬足元が凍り付くゴジ助だが、夏の暑さと体内の原子炉からの発熱で、五分と保たなかった。
ウワーーー!!
ギャオーーー!!!
ケラミュ達はゴジ助の一振りで、簡単に吹っ飛ばされていった。
「駄目か……それでは、じめんタイプよ、かかれ!」
続いて前に出て来たのは、グロードン、サイゴン、ゴロゴローニャ等のプチモンだ。
ゴゴゴゴゴーーー!!
果敢に突進し、大地を揺るがせ泥弾を投げつけたが、多少足元がふらついた程度で、効かない。
「俺たちも、協力しよう」
「おお、浩殿か。かたじけない、助かる」
珍しく積極的な浩リーダーが、ゼルネロスに声をかけた。ゼルネロスも覚えていたらしい。
この前のピカ吉を巡るバトルで、闘いを通じて友情が芽生えたのかも知れない。
「よし、行きますか!」
「あいよ」
「分かりました」
「そうですね」
「では自分と浩リーダーが前面でやります」
LITメンバーもケラミュ達と加わり、ゴジ助討伐と相成った。まさに昨日の敵は今日の友。
だがこのメンバー総てを合わせても、ゴジ助の方が力が上なのは明白だった。
「直樹君は左から、私は右から行きます!」
巨大な青龍刀を持つ直樹とバズーカ砲を構える浩が、左右から攻撃を仕掛ける。
ドガーン!!
ゴジ助の左足に砲弾が直撃するが、穴一つ開かない。
青龍刀での手応えはあったが、内部までは切り裂けない。ゴジ助の動きは止まらない。
だが2人は諦めず、何度も繰り返していた。
「ドラゴンタイプよ、その力を解き放て!」
ゼルネロスの命令で、今度はキビゴン、ゴルーラ、カミリュー達が、ゴジ助目がけて突進した。
グオォオオオオ!!!!!
波状攻撃を受けるゴジ助は、幾つかの技をくらいながらも、必死に応戦していた。
その姿は、正にキングオブモンスター。死角はない。
「じゃあ僕らもやりますか」
そう言ってレオもヴォランタペに乗って上空から攻撃を始めた。
彩と美咲も縦横無尽に飛び交い、槍やハンマーで動きを止めようと努力する。
イタイ、イタイ! ナニヲスル!!!
ゴジ助は目覚めてからこのかた、いわれの無い暴力を振るわれ、完全に我を失っていた。
周りから攻撃をし始めただけで、ゴジ助が何も悪い事をしてないのは、明白だ。
だが事情はどうあれ彼の力は想定以上で、これだけの数を相手にしても、一歩も引かない。
「いやあ、流石わたしのゴジちゃん! 核弾頭でも使わない限り、無理かもね!」
「ちょっと創造主様、物騒な事言うのやめーや」
猿渡池が突っ込む。
「でも、この兵器情報イランとかIS辺りに売ったら儲かりそうよ。連絡しよっか」
「そんなんより、今のタマーランド何とかせんとまずいんちゃいます?」
「ああ、それもそうね。じゃあここで一発、秘密兵器といきますか!」
ジェニファーが景気のいい事を言い始めた。
「タッちゃん、お願い♡」
「え、あれでっか……しゃーない、じゃあ行ってきます」
そう言って、猿渡池は部屋を出て行った。




