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75 再稼動

 ———時間は、少し前に遡る。


「おーい、君たち〜 あぶないよ〜 だいじょうぶかい〜?」


 以前LITに囚われたピカ吉が、ジェニファーの命を受けて、池のほとりへとやって来た。あの時に言語を学習したおかげで、ケラミュ(プチモン)達と人間のコミュ力は格段に向上し、人間と遜色ない会話が可能になった。


 ジェニファーからの連絡通り、子供2人がゴジ助の足をスルスルと登っている。ゴジ助の表面の凸凹が登るのに丁度良かったのか、既に膝ほどの高さまで達していた。幸い、転落の心配はなさそうだ。


「だいじょうぶです〜」

「モフモフしてて気もちいいよ! ピコチュウもおいでよ!」


 子供は気楽なもんだ。今ある恐怖を全く理解していない。2人を避難させる為に、ピカ吉もゴジ助の足元を登って行き、直ぐに追いついた。


「ほら、先生も心配してるよ。いっしょに帰ろうよ〜」

「やだ! もう少しあそぶ!」


 必死にゴジ助にしがみつく結愛を引きはがそうと、悪戦苦闘するピカ吉であった。



 相変わらず、ゴジ助は一時停止中である。最低限の電源は確保され、意識はあるが、エネルギー不足で動けない。


 ウググ……


 ゴジ助の視界の限り、自分と同類の存在は見当たらなかった。似た生命体(プチモン)があちこちいるが、大きさは比ぶべくもない。いま一体が足を登って来たが、周りからも、続々と集まってくる様子が見える。


 ゴジ助は、独りぼっちで孤独を感じた。遊び相手すら、いない。それにさっきから足元で何かしている人間達や、さえずり突っつく鳥達にうんざりしていた。


 カエリタイ……


 あの培養槽を蹴破ったのを、今は後悔していた。外に出ても、何も良い事はなかった。外がこんな世界と知っていたなら、あそこで、あの2人に見られながら、ずっとヌクヌク育っていれば良かった。そうすれば平穏に済む。目立つ事なんてしたくない。


 ゴジ助は動かせない体と相まって、ストレスがマックスに達していた。



 ゴオオオオーーーーンン!!!


 その時、物凄い爆音で飛行機が一機上空に飛んできた。

 光の反射で、機体の色が虹色に見える。


 キラ!


「あ、何か落ちてくる!」


 子供2人が見上げると、その飛行機からなにかが落ちて来て、パラシュートが開いた。


「あ、ヒトだ!」


 大翔の言う通り、太陽を背中に受け誰だか分からないが、それは人間だった。


「ヒロトォォオオーーー!!!」

「え? 何て?」


 大翔は遠くから自分の名前が呼ばれたように思ったが、変装した美咲と、面識はない。そして正体不明の人がゴジ助の鼻の上に降り立つのを、見上げるだけだった。


 その美咲は、ゴジ助と正面から対峙した。

 鼻の上も十分に立てる広さで、その巨大さが分かる。


「おら、はよ死ね、こらぁあああ!!!」


 完全に怒りモードの美咲はLP銃を構えると、ゴジ助の眉間に狙いを定め、撃ち放つ。そのレーザー色はLOVEとは無縁な、毒々しい紫色の太い光であった。


「おばちゃん、それヤバい奴!」

「あの脳筋馬鹿女!」


 レオとジェニファーがほぼ同時に思った通り、ゴジ助は不快なレーザーを浴び、再度覚醒した。怒りの感情がシナプスから強烈な刺激となって体内を駆け巡り、原子炉が再稼働し始める。


 ナンダ、コレハ!


 グヲォォオオオオオ!!!!!


「きゃーー!!」

「うわぁあ!!」

「ほら、早くこっちに!」


 ピカ吉が2人を抱きかかえて離れ、逃げ切ったと同時に、ゴジ助は動き出した。


 ギャオォオオオ!!!!


 ゴジ助の雄叫びが、タマー市一帯にこだまする。タマーランドの来園者だけでなく、付近の住民達も、何か起きているらしいと気付き始めた。


「キャー!!」


 顔を振り雄叫びを上げるゴジ助に振り落とされ、美咲は近くの草原に落下した。

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