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66 ちょい悪

 美咲は、降り注ぐ砲弾を防御しつつ、2人が何をするのか見ていた。しばらくしてレオと浩は大きく飛び跳ね、敵戦車が放つ砲弾の海から脱出し、外壁へと避難した。


 見晴し台のような場所があったので、ちょうど潜り込めたようだ。

 確かに砲塔が上下に動かせる幅は僅かで、上の空間は盲点になっている。


 しかし相手も察知したか、砲身を最大角度にしてレオ達に狙いを定め、撃って来た。

 直撃はしないが、砲弾が絶え間なく撃たれ身動き出来ない。これでは不利だ。


 2人は再びアクションを起こす。

 どうもレオが囮役として引き寄せ、浩が何かするようだ。


 ルタンチャーで作ったのは、大きな槍であった。

 頃合いを見計らい、浩は戦車の真上目がけてジャンプし、その槍を下に向け垂直降下した。


「ウォオオオーー!!!!」


 ガッシャーーンンッ!!


 キャタピラーの速度は遅く、逃げる間もなく上手い具合に槍が戦車を貫き、砲弾の雨は止んだ。


(やった!!) 


 美咲は安堵し、早く次へ行こうと出口を確認した。ちょうど反対側だ。

 だが壊れた戦車は中心の動力部が赤くなり始めた。発熱で建物内もかなり高温になる。


「逃げて!」


 レオが言ったのと同時に、マジコンVだった戦車は大爆発を起こした。


 ドッガガガガーーーーンン!!!


 間一髪で脱出に成功する4人。研究所は大きく燃え上がっている。

 外へ出ると、電光時計は【09:43】と表示している。意外と時間がかかった。


「ちょっとこれ以上は無理です。先に行って下さい」


 下半身に着ける服が無い彩のダメージは大きく、連れて行けそうに無かった。


「ごめん」


 直樹も追いついて来ない。すまないが、2人を置き去りにするしかない。



▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶


 猿渡池は相当悔しかったのか、地団駄を踏んでいた。近場にゴミ箱はない。


「うぐぐ……だが彼奴は我が軍団の中でも最弱。次、頼んだぞ!」


『はっ!』


 猿渡池が話す相手は、自信ありそうな言葉を残して通信を切った。



 レオ達一行は宇宙科学光子力研究所を出て、続く道を慎重に進んで行った。

 すると目の前に、サッカースタジアムのような建物が現れた。この先にゴールの丘が見える。


 残り時間【08:49】


 一本道なので、中に入らざるを得ない。ちょうどグラウンドに通じる道があったので入場した。

 やはりサッカースタジアムらしく、一面に芝がはられ対面にゴールポストもある。


 周辺を探索していると、ヒュッ!!と何かが飛んできて美咲の側をかすめた。

 肩にパラパラと何かついたので触ると、美咲の髪の毛だ。今ので切り裂かれたらしい。

 刃物か何かが付いている。明らかに武器だ。


 それはブーメランのように旋回すると、スタジアム上段の観客席へ戻って行った。

 そこには男が一人立っていて、それを掴むと頭に被った。帽子だ。


「チャオ、アモーレ!」


 そのオヤジは一気にジャンプして、3人の前に下りて来た。

 髭を生やして帽子を被ったツナギ姿は、某ゲームのキャラに少し似ている。

 顔はチョイ悪オヤジのジロ◯モみたいなラテン系だ。


 だが人工的な動作のそれは、人間とは明らかに違う。どうもケラミュらしい。


『素敵なお嬢さん。デートでもいかが?』

「残念ながら時間が無いので」


 美咲は即座にLP銃を撃った。


 だが、


「え? 効かない!」


「いきなり撃つなんて、何て情熱的で素敵なんだ。気が強くてベッラな女の子、大好きさ。早くママンに紹介したくなるよ。僕の名前は、マーリオ。そこのお2人も、一緒に遊ばないかい?」


「な、なんで効かないの?」


 美咲は狼狽えた。


『あいつの頭、年中盛ってんだ。つまり本能だから、松果体を鎮めてもエロは消えない』


 ジョニーが解説する。


「マジ? イタリア男め……」


 美咲は怖れるよりも、呆れていた。


『いや、イタリア関係ないし』


 ジョニーはフォローしていたが、あまり意味は無い。



「こんな奴、わたし1人で十分ですよ」


 浩リーダーが、美咲の前に出た。


『え〜男2人はやだな。ホモじゃないんで』 


 マーリオは挑発してくるが、浩が動じる気配はない。


『じゃあさあ、これに乗って勝負しようか? おいで』


 するとゴールポスト裏から大きな生き物が二匹、二本足でひょこひょことやってきた。

 近づいて分かるその姿はまるで恐竜のようで、ゲームに出てくるヨッピーに良く似ている。


『スタジアムも、作り替えるよ』


 マーリオの指示でグラウンドや客席の一部が盛り上がり、幾多のブロックが現れ、積み重なって行く。あっという間にサッカースタジアムが障害物競走のトラックへと変化した。聖火台近くがゴール地点として、ライトアップされる。


 電光時計の表示は【06:43】となっていた。


『乗ってもらえるかな?』


 指示を受けて、浩とマーリオはヨッピーに飛び乗った。

 最初は慣れずに戸惑う浩だったが、じき普通に乗りこなせるようになった。行けそうだ。


『じゃあ、レースの始まり〜⚑』


 残り時間【05:28】


 センターサークルをスタート地点にして、二頭が猛烈な勢いで走り始める。スピードは互角だ。

 だが、数十メートル走った時だった。


 ドサッ!!


 突然、浩がヨッピーごと視界から消えた。


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