65 宇宙科学光子力研究所
「目標地点までは約七キロ、ひとっ飛びですよ」
直樹は自信ありげな声で言った。確かに、フォットを着たLITのメンバーなら、楽勝だ。だが、何か嫌な予感がする。美咲は、地上で走る方を選択した。
「じゃあお先に!」
見上げると、大きくジャンプして飛翔する直樹の姿があった。
やはり飛んで行くらしい。
だが、
ダダーン!
「うわっ!」
タマーキャッスルからミサイルが発射されて直樹に直撃し、あえなく撃墜される。
やっぱりか。
幸い死ななかったものの、地面に激突して打ち所が悪かったのか、倒れたまま動けない。
「おっほっほっほ。言い忘れたけれど、非常時には要塞にするため、タマーキャッスルには攻撃設備を一通り揃えてあるの。悪いけど、他にも色々あるわ」
ジェニファーはどや顔で笑っていた。
いけ好かない女だと思ったが、やはり仕込んでいたか。
どこからも見える巨大なタマーキャッスルからは、逃げられない。
こうなった以上、覚悟するしか無い。
見捨てるのは忍びないが時間もないので、4人は振り返らず、そのまま駆け続けた。脇道に逸れようとしたら、ミサイルが飛んでくる。やむを得ず道沿いに進むと、建物が現れた。建物には『宇宙科学光子力研究所』とあり、近代的な建築物だ。研究施設のように見える。
「入れって事?」
レオが聞く。
「どうぞ行ってらっしゃい〜頑張ってね♡ じゃあわたしはゴールで待っているわ。ほっほっほ!」
高らかな笑い声を響かせて、立体映像のジェニファーは消えた。会ってぶん殴ってやろうと、心の中で決心する美咲であったが、今は先を急がねばならない。4人は、内部へと入って行った。
『ようこそ、我が名は、マジコンV。お前たちを叩き潰してやる!』
中にいたのは、お台場で会ったガンドムのような、身長20メートルほどの巨大ロボットだった。直樹さんなら詳しそうだが、居ないので4人はただ見上げるしかない。
「確かに小学生の頃、超合金ロボットとか言ってこんなのがデパートにあった気がします」
浩リーダーがそう言うと、ロボットに向けて銃を構えた。
先端にミサイルがついている。ロケット砲にしたようだ。
「みんな離れて!」
そう言うと、浩はミサイルをぶっ放した。
ドガーーーン!!
派手な音を立てて、マジコンVの胸にミサイルが撃ち込まれる。
だが、相手は無傷であった。
『これを喰らえ!』
マジコンVは腕を4人に向け、ミサイルとして発射した。4人は素早く避け、地面に激突する。ホーミング機能か、その腕ミサイルが再び飛んで元に戻る様は、まさに東洋の神秘だ。
「行きまーーす!」
彩がルタンチャーを楯と槍にして、マジコンVの頭を突き刺そうと跳ね上がる。だが、
『マジコンファイヤー!』
「きゃーーー!!」
胸から熱風が噴き出され、綾の服は一部が溶けてしまった。フォットは耐熱仕様だが、服はやっぱり駄目だ。さっきの紐パンが露になる、と言うかお尻と太ももが剥き出しだ。ダメージも大きいのか、うずくまったまま動かない。
「どうします? あれだとLP銃が効きそうに無いですが」
美咲がレオに聞く。
「今回は遠隔操作じゃないし、この前みたいな手段も無理だね」
レオは言うが、どこか余裕がある。
「じゃあどうすれば?」
「ガンドムでも思ったけど、これだけでっかいんだから、狙う所を考えれば、簡単じゃん」
そう言ってレオはヴォランタペに乗って、立ち向かって行った。
『マジコンパーンチ!!』
マジコンVは再び腕をミサイルにしてレオ目がけ撃ち放つ。お台場の時と同様、レオはヴォランタペを巧みに操り、変則的に空中を舞って軽やかにかわす。だがミサイルは旋回すると、再びレオに向かって行った。
「面倒だな」
レオはそう言いながらも余裕の笑みを浮かべながら、すんでの所でミサイルを避け続ける。やがて動きに見切りをつけたのか、何度かの回避の後、ミサイル同士が正面衝突した。
ドガーーン! ミサイルは自滅し、爆発する。
『ウォー!!』
腕を失くしたマジコンVは、悔しそうに咆哮した。
だが、ここで終わりでは無かった。
『第二形態に変形開始!』
そう言うと、足が折れて戦車のようなキャタピラーが出て来た。そして胴体が二つに割れると、そこから伸び出たのは、四方向に向いた砲塔だ。つまり、マジコンVは、巨大戦車へと変形した。
『死ねぇえ!』
砲塔からは、弾が凄い勢いで雨あられと続々撃ち放たれる。ルタンチャーを楯に変形させて避けるが、かなりの威力で流石に形が一部凹む。
『美咲、砲弾の軌跡を解析したら、飛んで来ない場所があるよ!』
ジョニーが言った。
「どこ?」
指示を受けた場所へと移動する。確かに、そこは弾が殆ど来ない。
昔のシューティングゲームと、同じようであった。
2人にも伝え、倒れた彩も回収し防御態勢を敷いた。
融通がきかないのか、攻撃は単調だ。
「でもこれじゃ、時間が間に合わなく無い?」
美咲が言う。
「そうだね。ロボットじゃないから関節部は狙えないね」
レオは思案しているようだった。
「じゃあ浩リーダー、使えるだけのルタンチャーで、これ作ってくれる?」
レオが浩にコソコソと指示を出した。
「分かりました」
と浩は言い、何やら始める。
「じゃあおばちゃんは彩さんを護ってて」
レオはそう言うと、浩と2人で飛び出して行った。




