表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/93

62 夜のタマーランド

 翌日、すっかり寝静まった夜更け、美咲達5人と富崎の一行は、カッタクルスに乗り出発した。

 皆フル装備だが、相変わらず格好はまちまちだ。目的地は当然、タマーランドである。


 新しいカッタクルスは、大型バス並みの長さになった。中に乗り込むと、後部はモニター付き豪華座席が五人分あり、前部には様々な機械類が詰め込まれている。今日の運転は富崎さんだ。


「新フェンガーは作製中でね、これを司令部代わりに、一通りの設備を入れたんだ」


 レオが説明する。


 思い思いに時間を過ごすと、カッタクルスは高速を下りてタマー市に入り、付近の目立たない山道の空き地に車を停めた。タマーランドを眼下に見渡せる高さだ。満月に照らされ白く浮かび上がるタマーランドは、幻想的な世界を際立たせている。


 「じゃあこれを」


 と言って、彩が奥のロッカーからネコを五体持って来て、床に置いた。

 可愛いと思って美咲が触ると、感触が生物ともぬいぐるみとも違う。


「これは彩さんの?」

「そう、前に説明したノイビオロよ。同期したら、操れるわ」


 言われるがままにジョニーと一体を同期させてセッティングすると、美咲の視界がシンクロし、床より少し上の映像が眼の前に広がる。上を向いたら丁度彩のスカートの中が見えてしまい、慌てて移動させる。今日も紐みたいな下着で、一見ノーパンかと勘違いした。


 彩の仕事場で少しやったが、もう一度練習してみた。あの後からも改良されたようで、壁をよじ登ったり、そこからジャンプも出来る。メンバー全員セッティングを完了し、席について待機した。


「じゃあ良いかな。ちょっとこれ見て」


 レオが声をかけると、天上から大型モニターが下りて来て、周辺の地図が写し出された。


「これがタマーランドの全景図」


 周辺地図が拡大され、タマーランドの全体像に切り替わる。入口からタマーキャッスルまでは一直線で、周りにアトラクションが点在する。キャッスルから奥に行くと以前ピカ吉達がいた発電所の丘で、更に奥は研究設備や大きな池がある。その辺は立ち入り禁止区域のようだ。タマーランドの外縁は、殆どが山麓の森林に囲まれていた。


「アトラクション、あれから沢山作ったみたいだね。プチモンゾーンが草原、廃墟、山、小川の四つ。他にも、カーレースが出来るサーキットや、障害物競走のアスレチックゾーン、あと幼児向けのメリーゴーランドや観覧車なんかの乗り物広場。他にゲームコーナーらしき建物が、四つぐらいあるよ」


「森林から潜入しますか?」

「そうだね。まずノイビオロを侵入させて、園内の調査をお願い。指揮役として僕は残るよ」


 4人は外に出た。虫の鳴き声の他は何も聞こえない。静かに四体のノイビオロを解き放す。それらは本物のネコみたいに、森林に向けて駆けて行った。4人も追いかけるように四方に散る。


 ジョニーとの同期で、ネコの目線も視界に入った。森の中だが、やはり壁で区切られている。木をよじ上りつたわせ、タマーランドへと侵入させる。活動中のケラミュ達はいなそうだ。


 細心の注意を払いつつ、進んで行く。東京もこんなに自然が一杯なんだと感心しながら、注意深く観察する。高感度赤外線カメラで見る風景は見づらいが、徐々に操作にも慣れて来た。


 美咲は近くの森の中で待機することにした。武蔵野樹林は雑木林なので、スギ等の針葉樹林は少なく不規則な広葉樹林の世界だ。足の踏み場に困りながら入ると、大きなケヤキの木を見つけ、体を支えられる枝に上り潜伏した。

 

『そろそろ森を抜けるよ』


 ジョニーが連絡する。


「オーケー。何が来るかな?」


 タマーランドの概略図は衛星写真で把握してるし、公式ホームページもある。

 だから美咲のネコが進む先が、草原地帯とも分かっていた。


 だが問題は、プチモン達だ。

 ケントロスなんかが来たら、一発でやられる。

 イーバイぐらいなら、助かるんだけど。


『草原に入ったよ』

「どう? プチモンいる?」

『未だかな…… あっ!』

「どうしたの?」


『向こうでバトル始まったかも』

「すいません、見つかりました!」


 直樹からの声が聞こえたのと同時に、タマーキャッスル近くで雷光が轟いた。すると、


 ビー、ビー、ビー!!!


 と、四方からけたたましく警報が鳴り響き、プチモンの鳴き声が聞こえ始めた。


『行ってみる?』

「もう隠れても無駄かもね。入った方が早いわ」

『いいの? 指令ないよ』

「こう言うのは、混乱してる時に入るのが一番楽なのよ」


 美咲は腰に携帯するLP銃を取り出し、飛翔してタマーランド内へと侵入した。




創造主様(マスター)、侵入者です! ……あっとすんまへん!」


 猿渡池辰也が慌ててジェニファーの寝室に入ると、既に目覚めて上半身を起こしたジェニファーの寝間着は、スケスケなネグリジェであった。鍵がかかっておらず、無意識に入ってしまった。


「たっちゃんのエッチ! 着替えるから司令室で待ってて!」

「は、はい!」


 意外に発育の良いジェニファーを見て、すっかり別な意味で目が覚めた猿渡池である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ