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58 タマーランド開園

『さあ、タマーランド開園です! タマー市長、テープカットを!』


 一月某日の土曜日。市長がテープに鋏をいれると、ドン! ドン! と、大きな花火が何発も打ち上げられた。そして、ケラミュ達を含めあちこちから拍手が沸き起こり、入口から中央広場に向け、パレードが始まる。


 中央広場には、タマーキャッスルが燦然と輝いている。

 和洋折衷五層の城は壮観で、タマーランドのシンボルだ。


 チケット無料なので、親子連れがどんどん中へと入って行くが、あっという間に混雑し始める。このペースでは、一時間ほどで入場制限が必要になるだろう。寂れた遊園地からすっかり現代風に改装されたタマーランドは、見慣れたキャラクターが実体化して存分に遊べる、本当の夢の世界になった。


『みんな、こっちへおいで!』


 ピコチュウ達が子供を先導し、それぞれのアトラクションへ連れて行く。


 バトルゾーンや仲良しゾーンがあったりと、ケラミュ達とのふれあう場も、多様性がある。他にも、カートコーナーやサバイバルゲームゾーン、3DゲームにVRMMOゾーンと、ゲーム好きな大人も遊べるように、盛りだくさんのアトラクションが用意されていた。


 しばらくテレビではこの話題で持ち切りとなり、猿渡池の顔を見ない日はなかった。開園して二ヶ月ほど経っても、相変わらず盛況が続いている。


『やあ、ミカちゃん。久しぶり! この前の赤いスカートも可愛いけど、青も似合ってるよ!』

「おぼえてくれてるの! うれしい!」


 無邪気な子供が、ケラミュに抱きつく。

 ケラミュ達はAIとディープラーニングで、観客達の顔や氏名、履歴を総て共有している。だから子供達は、まるで自分の家と同じように思え、何度も来たくなる仕組みだ。至れり尽くせりの、サービスである。


 昔のタマ遊園地跡に加え、付近のタマー丘陵を大々的に購入したので、余力はまだある。まだ工事中で、立ち入り禁止区画もあるが、これだけ広ければ、丸一日遊べるだろう。



▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶



『みんな、ありがとう〜 またね〜』


 閉園時間となり、皆を送り出したケラミュ達。

 夜になると、彼らは別な顔へと変貌する。


 官庁トップが貧困調査に夜の街へ繰り出したり、変態プレイ好きな大物政治家がいるご時世だ。ケラミュ達の夜が昼と違った姿でも、何の不思議は無い。


 ただケラミュ達は肉欲を持たないので、夜の活動は人間達のそれと比べ、かなり違っていた。


『データ同期、開始』

『本日の入場者数、五千八百三十二人、年齢別内訳、性別、……』

『顧客満足度、89%、トイレの混雑に苦情あり。また迷子も十三件。改善の余地があります』

『アトラクションの稼働率、3Dゲーム95%、……』

『ネット情報による最近のトレンドは……』


 広場の一画に集まったケラミュ達は、同期をし始め今日の仕事まとめをしていた。ケラミュ達は、今日の来場者に関するデータや、翌日以降への懸念事項、新企画提案を共有する。

 

『マイニングチーム、起動開始』

『株式市場、為替相場チーム、取引開始』


 マルチタスクAIなので、日中もある程度動いているが、日々お金儲けにも余念がない。おかげで人件費が浮くどころか、何倍もの収入が入ってくる。ケラミュさまさまだ。


「良い調子ね!」


 タマーランド奥にある地下室には、彼等を見守るジェニファーと猿渡池辰也がいた。今までは猿渡池が丸の内の事務所で活動し、ジェニファーがタマーランド創設に尽力していたが、開演した現在、2人ともここタマーランド地下をメインの活動拠点にしている。


「もうビッグデータの宝庫ね、試作品も存分に使えるから、技術開発にも持ってこいよ。昔は軍事技術が一番の先端だったけど、わざわざ戦争したり喧嘩するより、こっちの方がラクチンね!」

「そうですな。しかも新製品もあいつらが作ってくれるから、特許も取れて、世界中にデータも売って大儲け」


「最初に創ったのは、私だけどね!」

「あ、そうですな。すんまへん。しかしこれ、マルム・グロリー(悪の栄え)(MG)の組織名と反しませんか?」

「何で?」

「みんな、楽しんでるじゃないですか」

「まあそうね。プチモンと一緒に遊ぶのが私の夢だったし。でもこうやって取ったビッグデータや先端技術を中国やアメリカやロシアやイスラエルやイランなんかに平等に流してるんだから、悪は悪よ」

「そうですかね」


「とにかくタマーランドをネバーランドにするのよ! みんな此処に来ればハッピーってなったら、何もする気が無くなるじゃない?」

「人類廃人化計画っすか?」

「そうそう。そして私が教祖様になって、ケラミュ達を引き連れて世界征服するの! 分かる? こんな可愛いケラミュ達が兵士として来るなんて、誰も思わない筈よ!」


「は、はあ……でもむっちゃ似過ぎてません? 著作権まずくないっすか?」

「そんなの、買収すればちょちょいのちょいよ!スター◯ォーズだって今はディズ◯ーよ!」


 何となく分かったような、分からないような猿渡池であった。


「それより最近の人気傾向だと、他に神撃の巨人作ろっかな。壁作って脱出ゲームなんてどう?あと人気は転送してもスライムでしたか。レオの粘土細工(ルタンチャー)もらえたら簡単なんだけどな……」

「この敷地じゃ、狭くないですか?」

「大丈夫! ゆくゆくはタマー市全部買い取るから!」

「え、ほんまでっか?」 壮大な構想に驚く猿渡池だった。


「既にタマー市長と密約あるし、政財界にも工作は完璧。日本じゃ、JKは何でも許される神の存在なのよ!」

「そうでっか……」

「最終目標は世界征服だもん! たっちゃんも頑張ってね。それより()()を創らなきゃね!」

「はい、()()作ってみんなを驚かせましょう!」

「ほっほっほ!」

「ふぁっはっは!」

読んでくださり、ありがとうございます。あくまで別世界の話なので、作者は著作権を侵害する意図は全くありません。

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