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50 謀略


「勝ったどぉおお!!! よっしゃぁ、おっけえーーー!!!!」


 某日、皇居を望む丸の内のビルにて。男は祝杯をあげていた。

 昼間から飲める酒は、格別だ。


「いやあ、勝った勝った。あいつらの逃げ惑う姿、もうたまりませんわあ」


 記録映像を満足げに観る男は、今までの負け犬人生を総て相殺したような、破顔大笑をしている。あの時ゴミ箱を蹴った痛みも、電気ショックを受けたダメージも、今となっては過ぎた良き思い出だ。


「お、彩ちゃんあんな下着履くんだ、ええのお〜」


 服が破れ下着姿の彩を、拡大スローモーションで何度も再生する姿は、正にキモい変態である。


「たっちゃん、元気そうだね?」


 突如、先日の美少女がモニターに現れた。


「あ、創造主様(マスター)!この前はあざーっす!」


 直ぐに動画を消し、酔いもすっかり覚めて直立不動になった。


「うん、ありがと」


 ジェニファーと呼ばれた美少女の顔も、満足げだ。


「やっぱり、悪よね」

「そうですな、悪こそ総て!必ず成功させましょう!」

「もちろんよ。たっちゃんには期待してるよ!」


「ありがたきお言葉、この猿渡池辰也、命にかえても創造主様(マスター)についていきます!」

「良い心がけね、あんなガキんちょ、二度とたたなくなるくらいやっつけるわ!」

「そうですな!」


「いよいよ次はタマーランドの開園準備ね! たっちゃんにはもっと頑張ってもらうからね!」

「は! 有り難き幸せ!」


「ほっほっほ!!」「ふぁっはっは!!」


 暫く、2人の高笑いが続いた。


▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶


(暇だな〜)


 大翔を保育園に送った後、美咲は家でゴロゴロしながらYourTubeを見ていた。掃除や洗濯、料理等もあるから、言うほど暇でもない。だが何と言うか、やる気がでない。LITでの生活が面白かったから、平凡な日常に戻っても、何となくだるい。


 と言う訳で、動画でも観て時間を潰している。

 勿論、観ているのはストファイのコンサートだ。


 イケメンは目の保養。これくらいバチは当たるまい。

 しかも幸運にも、申し込んだコンサートチケット四人分が、当たった。

 


(衣装作らなきゃ)


 見る度にテンションがあがる、美咲であった。



 ふと動画ランキングを見てみると、不思議なタイトルの動画が目につく。


《タマ遊園地跡地の元凶?悪の秘密結社、LITとは?》


 まさかね……と思いつつクリックしてみると、そこには在りし日の、美咲達の姿が映されていた。


(うわ、マジ?)


 どこで撮られていたのか分からないが、それはガンドムやペッピー達ロボットを壊したり、ピカ吉である可愛い動物を奪い取るような形で巧みに構成された動画であった。泥棒やテロリストのように、美咲達の姿が映し出されている。


 キャプションにはこうあった。


〖私達は、日本文化の象徴であるアニメを実体化し世界に広げる為の、極秘プロジェクトを展開しています。ですが、LITという秘密組織が妨害して破壊工作を繰り返し、多大な損害を受けているのです。日本の素晴らしい文化を守る為に、私達は日夜闘っています。ぜひ応援お願いします〗


 そして寄附サイトへのリンクが貼られていた。


(はあ??)


 あまりの酷さに眼が点になった。説明が全く逆で、これでは美咲達が悪役みたいだ。しかも問題は、確かにそう観られてもおかしくない構成の、動画である事実であった。


(ふざけんな!!)


 はらわた煮えくり返るとは正にこのことだが、画面を観て怒っても、何も起きない。裏で誰かが仕組んでいるのか閲覧数は急激に伸び、その後テレビでも取沙汰されるようになる。


(これ、誰の仕業?)


 直ぐに思い浮かぶのは、あの冴えない男とレオの姉とか言う美少女だ。

 限りなく、クロに近い。

 だが市井の人である美咲に、何も出来る事はなかった。

 仮に反論しても、ネットで即炎上だろう。


(大翔もいるしな……)


 訴えかける手段も無く、静観するしか無い美咲であった。

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