48 バトルだぜ!
きゃー!!
ウワッ!!
ケラミュというプチモン達の突然の突進に、美咲はなす術も無かった。
一体ずつなら何とかなるが、とにかく数が多過ぎる。あるものはガラスを打ち破って中に侵入し、あるものは森を薙ぎ払うなど、破壊の限りをつくし始めた。格納庫はまだ無傷だが、建物の被害は甚大だ。
こいつらに、ロボット三原則は無いらしい。命の危険を感じ、美咲達も反撃を試みる。幸いにして美咲達は万が一を想定し、フル装備をしていた。
「ジョニー、スピアで」
『オーケー』
手に持っていたルタンチャーを槍型に変え、対抗した。
グフォ!! ギャー!!
何体かには手応えがあったが、次から次へ湧いてくる。愛着もあるから、倒すのは忍びない。思い出と共に、目から少し汗がこぼれ出る美咲だった。
『フニャー!!』
ニャーソに似たネコ型ケラミュが美咲に飛びかかってくる。抱きしめたいが、心を鬼にして倒す。
『フニャニャ〜!!』
あっけなく吹飛んで行ったニャーソは、星になった。
キャーー!!
悲鳴が聞こえたのでそちらを見ると、彩さんがケンタルスみたいなケラミュの突撃を受け、角が服に引っかかり破れていた。今日も紫の色っぽい下着だが、じっくり眺める余裕はないし、助けにもいけない。
レオもヴォランタペに乗って必死に応戦するが、空中ケラミュ達の執拗な攻撃で足止めをくらっている。それに湖からもギャロドスみたいな水竜型ケラミュが出て来て、レオに襲いかかっている。やっぱり居たか。
一進一退の攻防が続く。しかしこうなると、無尽蔵のエネルギーのあるケラミュ達が有利だ。
グォオオオーーー!!!!!
突如ゼルネロスの雄叫びが響き渡る。するとケラミュ達はパワーを貰ったのか、更に攻撃力がアップした。プチモンバトルじゃないから攻撃の順番なんて来ないので、一方的に押しまくられる。
うわぁあ!!
直樹さんの声が聞こえた。見ると電気タイプのビリビリダマに、鉄の楯で防御している。それじゃ、駄目だ。鉄だから、電気を通すに決まってる。かなりの電気ショックを受けたようだ。
美咲は、ケラミュのタイプごとに武器を変えて挑んでいる。そうじゃないと対等にやれない。だが他のメンバーはプチモンの情報なんて全く知らないから、戦局は圧倒的に不利だった。
それに個々がバラバラで闘っているから、どうなっているのか戦況が把握出来ない。気付くと、相変わらず浩リーダーは、何もしていない。美咲もどうして良いのか分からなくなり、焦燥感がつのる。
そんな美咲を見透かしたのか、リザードドンが突進して来て、美咲を吹っ飛ばした。その凄まじい威力は、フォッティキュの装着でも和らげられず、美咲は空中に跳ね上げられた。気付くと下に会社の屋根が見えてそのまま急落下し、受け身を取る間もなく激突、気絶す。
美咲も倒れ、レオもままならぬ今、残ったのは、浩一人だけであった。
「仕方ない、やりますか」
浩は銃を構え、ゼルネロスに照準をあわせた。
う、うーん……
美咲の意識が戻り、最初におぼろげながら見えたのは、誰かがゼルネロスと格闘する姿だった。シルエットから男性だ。
きっと直樹さんだろう。そう思って気絶から立ち直り、ぼうっとしかけている頭が段々とすっきりして視界が戻ってくると、どうも体型が違う。あまり太っていないし、小さくない。
じゃあ誰が?
その男は、素早い動きで空中を自在に飛び回りながら銃で狙いをつけ、ゼルネロスを撃っていた。だがゼルネロスも巧みに避け、全くの互角だ。大きく跳躍したその男は、美咲の側に着地した。
「やあ、美咲君。気付いたかい?」
ゼルネロスに銃口を向けながら、美咲に話しかけて来たその声は、紛れも無く浩リーダーであった。
「あ、はい」
応えるものの、どう返して良いか分からなかった。
少し周りを見渡すと、直樹も彩も、まだ気を失って倒れている。
浩とゼルネロスは何度も激しい闘いを繰り広げるが、勝負はつかず、お互い離れ間合いを取った。
浩は顔色一つ変えず、冷静に弾を装填する。そして素早く構えると六連弾が火を噴き、ゼルネロスに襲いかかる。ゼルネロスも素早く避けるが、浩は相手の行動を予測してその方向に素早く飛びかかり、鎌形に変えたルタンチャーで襲いかかった。
ここまで出来るなら普段からやって欲しいくらい、今の浩は頼もしい姿だ。
金の鎌で切り裂いた一撃は、ゼルネロスの前足を貫き、着地するとよろめく。
間髪入れずブーメラン型にしたルタンチャーが、ゼルネロスを目がけて飛ぶ。
息も付かせぬ程に繰り出す浩の技の数々に、さすがのゼルネロスも、防戦一方となっていた。
バシィッッ
地上で浩とゼルネロスが組み合うと、稲妻のような電気ショックが起こり、再びお互いに離れた。浩のダメージは大きいが、ゼルネロスも、余裕が無さそうだ。
今までの激闘でエネルギーも尽きかけたのか、間合いを取るだけで、仕掛けてこない。そうこうするうちに、やっと直樹や彩が起き始めた。レオは湖上で、水中のケラミュ達を攻撃している。
『主もなかなかやるな。儂を此処まで手こずらせたのは、久々だ』
「そりゃどうも」
『だがな、ここまでだ』




