表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/93

42 男は怒り狂う

「申し訳ありません、ケラミュが一匹捕獲されました」

「なんやとぉおーーー!!! 怒るでしかし!!!」


 男は激昂し、近くのゴミ箱を蹴り飛ばしかけたが、前の痛みを思い出し、直前でわざと空振った。


「型番は分かるんか?」

「はい、FP-10094601CAです」

「ほなモニタリングして居場所を出すから、あいつら使って迎えに行かせろ」

「御意」


 男はモニター室に入り、該当するシグナルをオペレーターに調べさせた。


「該当する個体信号、識別出来ません」

「んな筈はないやろ。ほな拉致された時間帯から追跡せえ」


 男はイライラしながらオペレーターに命じた。


「はい、分かりました」


 少しの時間の後、


「出ました。群馬・埼玉の県境辺りまでは追跡確認しました」

「モニターに拡大せんかい!」


 一面の大画面に、近辺の地図が映し出された。

 時系列で、シグナルの移動が確認出来る。


「スピードからして、何かの乗り物に載せられてるな」


 やがてシグナルは何かの敷地内に入り、消えた。


「ここは何処や?」

「何かの工場のようです。特に表記はされていません」

「衛星写真を」

「はい」


 映し出された敷地は広く、シグナルと合成された箇所は、とある建物の中のようであった。


「どうしたの、たっちゃん?」


 モニターが反転し、例の美少女が映し出される。


「あ、創造主様(マスター)、も、申し訳ありません。ケラミュを一匹、あいつらに奪われました」


 男は、モニターに頭がぶつかりそうなくらい平身低頭して、謝り始めた。立派で模範的な謝罪姿である。モニターに映るのならば、ジャンピング土下座もしそうな潔さだ。


 男には、あの電気ショックの悪夢が、蘇っていた。

 またあれを喰らうのは、何としても避けたい。


「そうなんだ。まあ敵状視察にもなるし、一匹ぐらい良いんじゃない? 通信遮断されてても、きっと今ごろ、向こうのデータを吸い取ってくれてるよ」


 意外にも少女は特に怒りもせず、あっけからんとしていた。


「そ、そうでございますか。では暫くそのように」


 セーーーフ!


 男はほっとした顔をしてモニターを消し、先ほどの部下を呼び出し命令した。


「ゲームは面白くなきゃね。わたしも、遊びに行こうかな」


 少女は軽い笑みを浮かべていた。


▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶


 ピコチュウを運んでから数日経ったある日、美咲は富崎さんから連絡を受けた。


 明日の朝、車をよこすから来て欲しいとの事だ。いつものように大翔を保育園に送った後に、リムジンカーに乗って出社する。そこには珍しく、レオがいた。


「やあ、お疲れさん」

「どうしたんですか?また事件?」


 身構える美咲をよそに、レオは笑っていた。


「おばちゃん、それはないよ。それより今日は何の日か知ってる?」

「……社長の誕生日とか?」

「いや、それはもっと後。はいこれ」


 そう言われて渡されたのは、正社員証のカードだ。

 今までの仮社員証より、しっかりした作りである。


「おめでとう。これで、福利厚生も少し良くなるよ。久々の正社員だから、こっちも嬉しいよ」

「はあ、そうですか」


 頭がこんがらがる時もあるが、やる事自体は楽しいのであっという間の三ヶ月だった。給料もあがるから、助かる。お祝いにベエブレードの最新版を買って上げようかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ