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04 戦闘服はOLスーツ

 クローゼットにある服のサイズは、全て美咲にぴったりの物ばかり。下着まである。三サイズにカップサイズまで書かされた記憶があるが、普通ならセクハラ案件だ。だが貧乏で満足に下着も買えない美咲は、そんな事を思う余裕も無かった。


『まずこのインナーは絶対に着て。《フォッティキュ》って言うんだ。筋肉繊維成分をナノ多重構造にした頑強な素材で、美咲の力を百倍にする優れものさ。戦車の大砲ぐらいなら跳ね返せるし、着心地も快適だよ!』


 言われた先には、プニクロのように黒い薄いインナースーツがある。初対面なのに馴れ馴れしいジョニーの喋りはウザいけど、とにかく時間がない。着替える為に、美咲は服を脱ごうとしたら、目の前のジョニーはそのままで居るので躊躇する。いつも大翔とお風呂に入っているものの、年相応の男に全裸を晒した経験は無いから、かなり恥ずかしい。


『お,美咲、肌も綺麗でおっぱいの形も良いし、ナイスバディだね〜』


 ウゼぇえ! と、心の中で叫ぶ。こいつに実体があったら、すぐさま目つぶしか金的をくらわせたいところだ。美咲は虚構(ウソ)の男だと心の中で何度も念じ、挑発に乗らず平静を保ち脱ぎ終える。


 ご丁寧にも、下着は上下お揃いだ。Fカップのブラは少ないし、お金がないから使い込みすぎてボロボロになので、正直助かる。折角だから一番派手な花柄刺繍付きの下着をとって、履き替えた。その上に着るフォッティキュとやらは、薄くて着心地良く、確かに着けたのを感じさせない。ただ、着た瞬間、黒から透明に変化した。肌の温度で色が変わるようだ。ま、他から見えないからいっかと、気楽に考えた。

 

『あと靴はこれを履いて。《カルカバー》って言うんだ。ショックアブソーバー付きの特別製だよ。これじゃないと、着地の衝撃で足が折れるから。プロテクターも、装着してね。服は自由だけど、美咲はこれが似合うんじゃない?』


  ジョニーが指差す先には、スニーカーより少し厚めの靴や、紺のパンツスーツのセットがあった。フリルブラウスも高級品みたいで、ちょうど良い。体力仕事で作業着ばかりだった美咲は、テレビドラマで観るOL姿に憧れていたから、これは嬉しい。直樹さんもスーツ姿だし、チームでお揃いなんだろうと思う。こうして着替え終わると直ぐに、廊下へ出た。まだ間に合う。


 うわっ!!


『気をつけて!力を加減しないと怪我するよ!』


 ジョニーの忠告通り、歩くだけで飛び跳ねて、あやうく天井にぶつかりかける。走力もかなり出るので、戸惑いながらも力加減を抑え、あっという間に入口に戻れた。思ったより服の伸縮性はいい。持ち前の運動神経の良さで、使いこなすのも早かった。


 命令通り何とか一〇分で玄関に戻って外に出ると、入口前の広場が滑走路になっていた。中央には銀色に輝く飛行機がスタンバイしており、沢山の整備士達が忙しく働いている。プロペラもジェットエンジンも両方ついていて、意外に小さい。


(もしかして、これに乗るの?)

 今まで飛行機に乗ったことのない美咲は、わくわくした。


「驚きました?緊急時はここが滑走路になるんです」


 飛行機を見上げる美咲の背後から声がしたので振り返ると、大塔屋直樹がいた。さっきまで年相応だったスーツ姿は、ヒップホップスタイルへと様変わりしている。


 野球帽を深く被り大きなアヴィトラプ(サングラス)をかけた姿は全くの別人で、五才ぐらい若く見える。YとNじゃなくてTとHを重ねたマークの野球帽が、日本らしい。スーツ姿の美咲とは対照的だ。


「仕事着ですから」


 はにかみながら、直樹は言い訳がましそうにつぶやいた。

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