35 電気ショックは痛い
「また失敗かぁあ! 怒るでしかし!」
某日、都内某所にて。
男は相変わらず親指の爪をかみイライラしながら、モニターの相手へ怒りを発散させていた。
『ですが、ペッピーへの依頼はすべて猿渡池様のご発案ですが』
「わーっとるわぁあ!!」
無表情に受け流す相手に、男はやり場のない怒りをぶつけようと近くのゴミ箱を蹴り飛ばした。
が、
「いたぁあ!!!」
ゴミ箱は既に固定されていて、思いっきり足を痛めた男であった。
「タッちゃん、どうしたの?」
代わってスクリーンに映し出されたのは、ハーフの美少女だった。
「あ、創造主様! い、いえ、何でも……」
彼女が現れた途端にさっきの勢いはどこへやら、男はしどろもどろとなり、言葉数が少なくなった。
30代男が10代少女に向ける態度では無く、明らかに少女の方が上の立場のようだ。
「何でも無いの? じゃあペッピー君達はどうなったのかな?」
「あ、ああ、いえ……」
核心をつかれ、男は更にまごついた。
「スクラップ送りになりかけたペッピー君達を再チューンナップしたのは、誰かなあ?」
「マ、創造主様です……」
「彼等はどこ? 会いたいなあ??」
その美少女はS属性が強いのか、凍り付くような目で笑いながら男を見ていた。
事情を知っていて、わざと言っているのは自明だ。
「あ、その……」
「知ってるよ。皆、いなくなっちゃったんだよね?」
「あ、そ、そうなんですが……」
「あのアジトもバレちゃったの? 誰のせいかな?」
「は、はい、多分自分の不徳のいたすところかと、ぎゃあぁああああああ!!!」
突然電気ショックが男を襲う。ビリビリは一分以上続いた。男は震え終わると、バタンと倒れ込んだ。
「困るよねえ。二、三億円ぐらい、必要なら言ってくれれば良いのに。ちゃんと仮想通貨ハッキングして一千億円ぐらいあるんだからさあ、ケラミュちゃん達に使ってよ。わたし、気前良いんだよ」
「ほ、本当ですか! あんがとございます!」
さっきの電気ショックも忘れ、男は涙を流してモニターの少女に感謝していた。
「メンテも終わって動けるようになったからね。今度はちゃんとやってよ」
「は、はい!! 仰せの通りに!」
にっこりと微笑んだ顔で、モニターは切れた。ああいう顔なら可愛いのだが、やる事はエグい。
「よっしゃ、次はやったるで〜」
テンションも戻り、やる気になった男であった。




