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34 頑張れ直樹

「ご苦労様、これはこの前の報酬。龍乃宮が、おばちゃんによろしくって」


 労いの言葉をかけながら、レオは2人に封筒を渡した。

 今どき手渡しは珍しいが、沢山のお札はずっしりと重い。


「あ、ありがとうございます!」 


 お金に加え龍乃宮が気にかけてくれた事に、テンションが上がる。


「まあ何か美味しい物でも食べて。あ、そうだ。情報源の女の子、おばちゃんが思った通り虐待受けてて、無事児童相談所に保護されたから。んじゃね」


 そう言ってそっけなく部屋を出て行ったレオだが、彼の言葉に安堵する、美咲だった。


「……も、桃浦さん、良かったらどこか食べに行きませんか?」


 2人で残され、いきなり直樹が美咲に誘いをかけてきた。予期せぬ展開に、美咲は戸惑う。仕事中は頼りがいのある先輩だが、終わればただの人だ。悪い人じゃないけど、やはり躊躇する。


「いえ、今日は今から大翔を迎えに行くので……」

「じ、じゃあ明日は?」

「明日もちょっと……」


 察しろ 空気よめ


「そうですよね。すいませんでした」


 直樹は、しょんぼりして呟きながら帰った。

 行く義理は全くないが、何だか淋しい背中に見えた。



「おかえり。あのね、今日はマユちゃんとあそんだの!」


 保育園へ迎えに行くと、大翔は楽しそうに、レコブロックで遊んでいた。もう3人しか残ってない。


「そう、良かったね〜」


 マユちゃんは大翔と同じ星組さんの女の子で、ぱっちりした可愛い目と長い髪が特徴的な、ちょっとおませさんだ。この前の結婚相手の、一人でもある。


 ただ大翔からその後の話を聞く限り、どうも女の子3人と仲良く一緒にやってるのではなく、大翔がそれぞれにあちこち引っ張られて、色々と気を遣うらしい。


「けっこんなんて、するんじゃなかった……」


 と時々愚痴る大翔が、微笑ましかった。



 帰りのスーパーで、奮発してステーキ肉を買う。

 しかも、初めての国産牛だ。これぐらい、罰は当たるまい。


「え、ほんと!」


 カゴに入れる時、大翔の目がキラキラと輝いた。


 家に帰って焼いてあげると、「いただきます〜!!」と猛獣のようにがっつき始めた。よほど美味しいのか、顔がほころんでいる。育ち盛りだから、時々は食べさせてあげよう。



 お腹も大きくなった大翔が寝静まった夜、美咲はLINESからサークル仲間に、メールを送った。


『元気? 臨時収入あったからストファイの年越しコンサート行けるけど、どう?』


 仲間達からOKを意味する絵文字が続々と届き、乱舞する。


『りょーかい! じゃあチケット確保しよ!』

『はーい!』

『楽しみ〜!』


 まだ先のイベントだけど、久しぶりの息抜きになりそうだ。


 明日も仕事,頑張ろう。

 

 美咲は大翔を寝かして家事を終えた後、ぐっすりと眠りについた。

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