33 龍乃宮からの報告
登校前、レオは日課で日刊経済新聞を読んでいた。あの事件の記事は、当然ながら無い。
「おぼっちゃま、龍乃宮様からです」
富崎がレオに電話を繋いだ。
「ああ、どうも」
「先日は、ご協力感謝申し上げます。その後の経過を報告したいと思いまして」
「まあ、大体分かるけど。で、犯人は?」
「調査したところ、あのペッピーはどれもリストラされて廃棄処分済でした。ロボットの雇用情勢も厳しいようですね。捕獲時に全個体が自動リセットされましたが、家宅捜索して何とか履歴を押収しました。美咲さんのおかげです。よろしくお伝え願います」
「そう、おばちゃんに言っとくよ。で、詐欺は誰がやってたの?」
「それが問題で、どうも自己増殖プログラムと進化OSコードを使って、自動で母さん助けて詐欺をしていたようです」
「そうなんだ。黒幕はいないってこと?」
「いえ、もちろん彼等にプログラムを仕込んだ人間が最初にいた筈ですが、未だ捜査中です。いずれにせよアルゴリズムに従い自己増殖したので、仮に見つかっても責任が問えるのか分かりません。徹底的な情報収集は見事なもので、ネット世界を隅々までハッキングして個人情報も企業秘密も吸い上げ、動画サイトで該当する人間がいれば音声を複製してデータ転換したりと、やれる事は全てやったようです。人間じゃ不可能な芸当です」
「ロボットだもんね。アルゴリズムとか分かるの?」
「復元出来たのは一部ですが、作った方は中々のやり手です。新規ニューラルネットワークアルゴリズムによる深層学習速度は従来の千倍で、圧倒的でした」
「ふーん。それ、もらえる?」
「考えておきます。あなたなら、簡単にお作りになれるのでは?」
「たまには勉強したいんだよ」
「承知致しました」
「これからどうすんの? 対策は?」
「どうでしょう。ロボットが主犯の場合どう取り締まるか、まだ法律はありません。法律は人間の為だけに存在しますし、年寄りの年金と景気対策で手一杯な現状では、国会でも議題にならないでしょう」
「まあ頑張って。生きにくい世の中になるね」
「それより、M.Gという名に心当たりはありませんか?」
「なんで?」
「いえ、家宅捜索した際、出金記録の履歴中にそれが何度かありまして。ちなみに一部復元できたプログラムのコード、あなたに近いクセが見受けられます」
「……今は知らない事にしておいて」
「そうですか。承知致しました。それではまた」




