27 ホバーボート特訓
「すいません、計画不足で……」
退室後、直樹は神妙な顔で美咲に謝った。
「いいえ、大丈夫です。直樹さんのせいじゃないですから」
この前の事もあり、少し優しくした。
美咲の言葉に、直樹はちょっと安心したようだ。
「じゃあ次、どうします?」
「そうですね。やはり空中は見つかりやすいから、地上からの追跡にしましょう」
「でも車やバイクだったら、飛んで行くロボットに追いつくのはかなり大変ですよね」
「じゃあ社長のホバーボード、借りてみては?」
直樹は名案といった顔をしたが、美咲はレオが貸してくれるのか、不安だった。
あれはレオ以外のメンバーは持ってないし、貴重な試作品かも知れない。
「いいよ」
聞いてはみるもので、あっけなく許可が下りた。
「ただし、ちゃんと乗れたらね。まあ頑張って」
相変わらずな言葉に少しむっとした美咲だが、実際に練習を始めて、その意味を理解した。
乗るだけは乗れるが、とにかくバランス取りが難しい。
ただでさえ美咲はスケボー未経験で、乗りこなすのは至難の業だった。
持ち前の運動神経に頼るしか無い。考えても仕方ないので、とにかく特訓を始める。
「これはしごきがいがあるわね! 他のメンバー、誰もまともに乗れなかったのよ(笑)」
赤川コーチの眼は、更に燃え上がっていた。
彼女は結構な使い手で、空中で一回転とか、かなりの大技を繰り出せる。
脱落してレオに笑われるのも癪なので、大翔のお迎えを小村さんに任せ、鬼特訓に耐えた。
このホバースケボーはレオによると、正式名称は<ヴォランタペ>と言うそうだ。重力の千百五十三分の一だけある反重力磁場の向きを三千倍に増幅させて浮き、小型ホバーも併せた力で滞空時間を変え、前進させる仕組みらしい。とにかく動かすときの力移動が感覚的にかなり難しく、最初の一歩だけでも丸一日かかった。
だが段々と慣れるに従い空中で体をひねらせ更にスピードをアップさせるなど、特訓の成果か何とか形になってきた二週間後、龍乃宮からレオに連絡が入った。
「おはようございます。明日また受け子と接触する案件が出ました。行ってもらえますか?」
「分かったよ」
「おばちゃん、直樹君、じゃあよろしく」
待ち合わせはこの前と同じ昼二時半だ。早く終わらせて、大翔を迎えに行こう。




