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26 ペッピーは飛び回る

 プロペラが回り始め、美咲を乗せたエラーラは、上空へ飛び上がり、先ほどのペッピーを追跡する。

 

 風も心地よく、空の散歩は気持ちいい。相手はそこまで速くないから、捕捉するのに問題はない。ペッピーの動きには迷いがなく、目的地に向けてまっしぐらの様相だ。


「無線で遠隔操作なら繋がる範囲内のはずだけど……」

『自動走行プログラムだったら、予想より遠距離かもね』

「そもそも、被害地域は都内の広汎に位置するのよね。どうやってるのかしら?」


 美咲の疑問をよそに、暫く飛んでいたペッピーは、やがて高度を下げ始めた。


『ここは、港東区だね』

「そうなの?初めて来た。どこか下りられる所ある?」

『了解』


 ジョニーは周辺地図を検索し、手近な広場を見つけて降下した。

 子供達が遊ぶ公園だったが、この時間帯は子供も少なく公園も広いので、美咲のエラーラが着地しても、騒ぎにはならなかった。ペッピーは、もう少し先で降下したようだが、木々に隠れて良く見えない。


「直樹さん、どうします?」 


 サングラスの通信器で、美咲はたずねた。


「危険だし、後は警察に任せた方が良いです。場所が大体分かれば、十分です。ご苦労様、戻って来て下さい」

「了解」


 周辺は東京湾近くの河口にある、高級な高層マンションが建ち並ぶ流行りの一画だ。気が付くと、ペッピーがどちらに行ったのか、もう分からなくなった。


『じゃあここのデータを直樹君とレオ社長に転送しておくよ』


 ジョニーはそう言って、エラーラを再び発進させた。お台場に行った時とは違い、低高度をややゆっくりと飛ぶのは、新鮮な体験だ。


 途中、子供達の野球練習をしている上を飛んだ時は、ボールが来ないかと冷や冷やした。何人かの人達は美咲を認め、驚いた顔をしている。だがこんな乗り物もあるのだろうといった風で、中には手を振ってくれる人もいた。


 無事戻るとエラーラを折りたたみ直樹のSUVに乗せて、LITへと帰った。


「お疲れ様です。美咲さんのおかげで助かります」

「そうなんですか」

「はい。前の人はルタンチャーを見て、『スライムみたいで気持ち悪い』と言って辞めましたから」


 そういうもんなんだ。


 LITには一時間ほどで到着する。だんだん位置が分かって来た。埼玉より北らしい。


「お疲れさまです。警察には、先ほどのデータを全て送りました。では吉報を待ちましょう」


 直樹からそう言われ、美咲は待機していたいつものリムジンに乗って、家に戻った。



 翌日、岬の報告を受けて、警察が周辺で大規模な捜索中と、連絡が入った。この件でもうやれる事はない。その後の美咲は、出社するとマニュアルと睨めっこで、ルタンチャーの勉強等をした。形のデザインはやりやすいが、多少プログラミングの知識が必要で、頭がショートしかける。


 だが数日後、お昼過ぎ頃に警察から入った情報は、『手がかり無し』だった。

 呼ばれて会議室に来ると、既に直樹とレオがいる。


「どういう事?」


 美咲は信じられなかった。


「周囲五キロの家を捜索し、ペッピーを所有する家庭二十一軒全て事情聴取しました。ですが、それらしい家はありませんでした」


 モニターに映る警察官は恐縮していた。彼が悪くないのは分かっているが、美咲は食いついた。


「じゃあ、あれは何処から来たの?私ちゃんと見たのに」

「分かりません」


「エラーラに気付いて、向こうもこちらを撹乱した可能性があります」


 直樹も悔しそうだ。


「そもそも違法改造だから、登録してないんじゃないの?」


 レオが指摘する。


「その可能性もあります……」


 警察官は、複雑な表情をしていた。


「まあ、やっちゃったね。次はうまくやって」


 レオはからかうように、軽く笑っている。


「すいません。しかし、犯人はどんな奴ですかね?」

「周到な準備をしてますね。かなりの組織力です」

「大人数?」

「被害地域が広いから、そうかも知れませんね」

「まあ、頑張って」


 レオは相変わらず、人を食ったような顔をしていた。

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