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25 追跡

 鴨巣駅から徒歩十分、四百坪ほどの敷地は立派な塀で覆われ建物は見えず、門も威厳がある。

 美咲は勝手口のドアホンを押し、来訪を告げた。直樹も一緒に来たが、そわそわしている。


「昨日お電話しました、桃浦です。息子さんの件で来ました」

「あ、はいはい。芹沢です。ありがとうね」


 勝手口を開け現れた老婆は、多少腰は曲がっているが元気そうで、落ち着いた和服姿だった。

 会ってないが田舎にいるひいお婆さんと同じくらいの齢かなと、美咲は思った。


 勝手口から入ると、池のある広い庭の真ん中に、平屋の邸宅がある。大翔が来たら泳ぎそうだ。

 家に入り通された部屋は庭を臨む手入れの行き届いた和室で、鎧兜や掛け軸が飾られていた。


 高級そうな座卓を前に、2人は老婆と向かい合わせで座る。老婆はお茶とお菓子をいれてくれた。

 茶碗も皿も高価そうに見える。2人とも慣れない場所で、辺りをキョロキョロ見回していた。


「ごめんね。今日は家政婦さん来ないから何時ものおもてなし出来ないけれど」

「いえ、こちらこそ急ですいません。それで受け取り場所は、どこでしょうか?」

「それがね、家には行けないからと言って、二駅離れた駅前の広場だそうよ。息子なのに、変ね。人も多いから、大丈夫かしら」

「分かりました。何時頃ですか?」

「確か今日の二時半て言ってたわ」

「分かりました。では私達も隠れて見張っていますので、安心して下さい」

「そうね。こんなしっかりしたお嬢さんなら安心ね。よろしくお願いしますね」


 またお嬢さんと言われ、内心にやける美咲であった。

 今までは男子共をやっつけ過ぎてゴリラ女とか、化け物が普通だったので、嬉しくなる。


 ちなみに直樹は、ひたすらボリボリとお菓子を食べただけだ。


 その後、美咲と直樹は大葉台駅の広場から少し離れた場所で、乗って来たSUVで待機する。

 運転手の直樹は、今日も相変わらずのヒップホップスタイルにサングラス。

 シンプルなスーツ姿の美咲は二人で車中にいる組み合わせに、気まずく思う。

 互いのウェルクルスが服装を決めてるのかも知れないが、もう少し賢くなって欲しい。


「み、美咲さんは休日何やってるんですか?」


 服装に似合わず、どもり口調で直樹が尋ねた。


「何って言われても……子供の世話ですよ」


 素っ気なく返した。実際そうなのだから、仕方ない。


「あ、そ、そうですよね」


 会話は続かず、無言になった。


 何となく、直樹の雰囲気に高一で同級生だったオタク共を思い出す。

 普段はオドオドしてたが美咲がイジメっ子達を倒したら、姫とか神とか言ってまとわりついて来た。

 退学する時もサヨナラ会を開いてくれて悪い奴らじゃなかったけれど、どうも何か、ずれていた。


 ふーっ、息苦しい……


 こんな沈黙が続くのなら、早くペッピーが来て欲しい。


 大体、ここのメンバーは話しやすい同世代の人間がいないから、共通の話題がない。

 プチキュアでも戦隊ものでも普通は同世代の組み合わせなのに、何でこうなのか不思議だ。

 メンバーを集めたレオの判断を、恨みたくもあった。


「あ、来ますよ」


 やがてどこからか、つぶらな瞳で和やかな顔をしたペッピーがやってきた。

 最近は街中を歩くロボットも普通で、誰も気に留めない。


 ペッピーは老婆を認めると、何か言葉を交わし、やがてお腹を開けた。

 すると情報の通り、老婆はそこにお金の入った袋を預けた。

 何やら確認した後、やおらプロペラを背中から出し、空中へと飛翔する。


「美咲さん、お願いします」

「あいよ!」


 美咲は後部に畳まれていた簡易エラーラを外に出して広げ、乗り込んだ。

 座席が開放型の、小型折りたたみ式だ。


 座ってシートベルトをしめると、ジョニーが現れる。

 こいつの見かけは自分の好きなタイプだから、目の保養にはなる。


『じゃあ、行くよ。目標物はしっかり捕捉しているから。エラーラと同期。発進!』

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