23 龍乃宮からの依頼
「すいません、そうなります……」
説明する婦警は、蛇に睨まれた蛙のように、萎縮していた。
「君のせいではないよ」
「あ、ありがとうございます」
龍乃宮の優しい声に、顔を赤らめ目を潤ませる婦警であった。
「他には?」
「それが、気になった点がありまして…… いずれの件でも、犯人はかなり詳しくプライベートな情報を把握しているようです」
「というと?」
「被害者からの聞き取り調査から、犯人はいずれも電話に出た直後に、被害者の息子や娘の名前を名乗ります。だから被害者は信じて疑わず、かなり後になって本人と連絡が取れてから届け出るケースが殆どです。逆に言えば連絡が取れない間は本当に子供に渡したと勘違いして、被害に会ったと認識していないケースが多いです」
「そうですか。他は?」
「あと、被害の地域が広範囲に及びます。ロボットの飛行する方向を追跡した警官もいますが、それらの線を結んでもアジトらしき場所が特定出来るほど狭くなりません」
「ありがとう。それでは皆さん、如何しましょうか?」
そう言いながら、龍乃宮は周りを見廻して意見を求めた。
警視庁長官を含め、彼より上役の面々も陣取っているが、気後れする様子は微塵もない。
「他に手がかりはないのかね? 捕獲したロボットから何かは出るだろ?」
長官が高圧的に声を張り上げた。
「先ほども言ったようにロボット自体は汎用機種です。部品は改造されていますが、追いつめられると自爆モードに切り替わります。辛うじて残った場合でも全ての記録はリセットして完全消去されており、最高レベルの復旧作業をしても、駄目です」
龍乃宮に対する態度と変わって、婦警は冷静に返答した。
長官は面白くなさそうだが、それ以上は何も言わない。
「さあ、どうしますかね」
龍乃宮は軽くメガネを上げ、改めて出席者に、発言を求めた。
だがホームルームで先生から意見を求められる生徒達のように、皆は黙っていた。
「仕方ないですね。またLITに依頼しますか?」
反論する者はいなかった。
長官は何か言いたそうだが、無言で俯いている。
「異議無しですね。ではそのように致します」
長官はブツブツと聞こえない言葉を呟くだけで席を立ち、会議はお開きになった。
▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶
「社長、龍乃宮様からお電話です」
秘書が伝える。
「はい、建御里だけど」
「どうも、龍乃宮です。お久しぶりです。先日はありがとうございました」
「どうせ依頼でしょ。用件だけ簡潔にして」
「失礼致しました。実は最近ロボットを使った詐欺が横行していまして、解決にあなた達のお力を頂きたいのです」
「うーん、こっちに頼むんなら、訳ありだね。手当どれくらい?」
「七ではどうですか?」
「その額じゃあ、2人分か。いいよ。お金はスイス銀行に振り込んどいて」
「ご厚情痛み入ります。後ほど警視庁が持つデータをお渡しします」
「相変わらず堅苦しいね。データありがとう、よろしく」




