22 直樹 vs 美咲 その2
『次はこれだよ!』
ジョニーはそう言って、ルタンチャーをボーガンに変形させた。こんなのにもなるんだ。
美咲は、間髪入れずに直樹目がけて矢を数本放つ。固そうだけど、死にはしないだろう。
だが機先を制した美咲の矢は外れ、反対に日本刀を大上段に構えた直樹が迫って来た。
『左に避けて!』
指示通りに避けると、勢い良く振り下ろした直樹の刀は、空を切る。
美咲のルタンチャーはハンマー型となり、隙をついて直樹のヘルメットめがけ打ち込んだ。
背が高いから有利だ。直撃で直樹がフラフラになったのと、ブザーが鳴るのは同時だった。
「一本! おばちゃん頑張ったね」
飛んだ矢を回収し、元の粘土に戻す。
もう直樹は肩でぜえぜえ息をしている。やはり齢か。
「大丈夫ですか?」
「あ、は、はい。大丈夫です……」
強がっているが、膝もがくがく震えている。
美咲は未だ動けるので、勝機はありそうだ。
悪いけど、勝たせてもらおう。
「んじゃ最後、始め!」
美咲の武器は、薙刀に変わった。
一気に突こうとした美咲だが、両手に小刀を持ったまま腕を下げて無防備な直樹に躊躇する。
もしかしてノーガード戦法?
単に体力が無いだけかもしれないが、秘策の可能性も捨てきれない。
じりじりと動きながら、2人とも頃合いの良い間合いをとっている。
「やぁーー!」
美咲は我慢出来ず、攻撃へ出た。
「とうぅーーー!」
それを見て直樹もすぐ反撃する。やっぱり狙いはクロスカウンターだ。
直樹は美咲の薙刀をかわすと、ヘルメット目がけ逆袈裟に斬り上げた。
「きゃー!!」
幸か不幸か、直樹の剣は美咲の胸元を切り裂き、ブラウスがはだけブラが露になる。
フォッティキュは破れていないが、家から着てきたプニクロのブラは、かなり恥ずかしい。
「何すんだてめぇーー!!」
攻撃色になった美咲は、一気に回し蹴りを喰らわせた。みごと直樹の脳天に直撃し、倒れ込む。
「反則負け! おばちゃんやり過ぎ!」
「え?」
美咲はふと我に返って直樹を見ると、ヘルメットはふっとび、完全に伸びていた。
「これじゃ、ルタンチャー意味無いじゃん」
レオは苦笑している。
(やっちゃった……)
昔の癖とは言え、ちょっと失敗した。
「はっ! あぁ……」
暫くすると、直樹の意識が戻ったらしい。よろよろと起き上がった。
「ご、ごめんなさい♡」
内股でしおらしい姿になり誤魔化そうとする美咲を、直樹は虚ろに見つめている。
「あ、いや、こちらこそすいません……」
「直樹君、お疲れさん。んじゃ、帰ろうか」
レオにそう言われ、美咲はエラーラに乗り湖上を戻って行った。
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ここは警視庁四十階にある第五サイバー犯罪捜査課、通称ネオテク犯罪対策部。
通常のサイバー犯罪を越えたネオテクノロジーによる犯罪を扱っている。
いま皇居の堀を望む会議室で、深刻な話合いがなされていた。
「このように、ここ最近ロボットを使った母さん助けて詐欺が劇的に増えています。昨年は五件でしたが、今年はまだ半年にも関わらず、既に都内だけで百二十件です」
プロジェクターに映し出された棒グラフには、十年間の詐欺件数のグラフが描かれている。
その中でロボットが受け子とされた箇所の割合が、確かに去年から劇的に増えていた。
「大抵のロボットは現金受け取った後、または警察などの妨害を感知した後すぐに、背中から羽根を出して飛行し、逃亡するのが特徴です。パトカーで追跡を試み、ロボットの故障等で三体ほど確保しました。ですが……」
「続けて」
「はい。確保しましたが、いずれもメモリや通信部が瞬時にリセットされ、データの引き出しに失敗しました。シリアルナンバーも判別不可能です。その為、残念ながら操作元まで辿り着けませんでした」
「つまり、打つ手無しですか」
中央の席に座る龍乃宮は、冷たく言い放った。




