18 謎の組織
「で、今日の用件は?」
「失礼致しました。先日のお台場での件ですが」
「ああ、あの後何か分かったの?」
「はい。まず一ヶ月前、点検補修でガンドム像が撤去され、事件の前日に戻って来たそうです」
「出入りの業者は?」
「当然確認済みです。持って行った業者の倉庫には、点検中のガンドムが未だ置かれていました」
「つまり?」
「あれを持ってきた業者はペーパーカンパニー、全くの不明です」
「トラックから足はつかないの? 持って来た奴の人相は?」
「現在、部下達が鋭意捜査中です。申し訳ありませんが、しばらくお時間をいただければ。ただ……」
「ただ?」
「不穏な動きのある団体は、幾つか押さえてあります」
「そっか」
レオは席を立つと窓辺の方に向かい、外を見た。何か考え事をしているようだ。
美咲もつられて外を見る。山に囲まれ緑豊かで、湖では鳥が軽やかに遊んでいる。
「また来るかな?」
やっとレオの口が開いた。
「恐らく。あの見事なまでの分解は、用意周到な自爆装置です。全く足取りがつかめません。残念ながら、限りなく可能性は高いです。恐らくまた依頼する事もあるかと」
「こっちは稼げたら何でも良いよ」
「ご理解ありがとうございます。それではまた」
龍乃宮は立ち上がり出口へ向かう。先ほどの秘書が扉を開け、そのまま立ち去って行った。
「どう?」
龍乃宮が退席したあと、レオは美咲に聞いた。
「どうって、イケメンですね。サコにはちょっと劣るけど」
「そこじゃないよ」
レオに諭されて、美咲は恥ずかしくなった。このガキ、いつかぶっ殺す。
「あのロボットはどっから来たと思う?」
「え〜 そんなの聞かれても」
考えるのは、美咲の仕事では無い。
「まあ、そうだよね」
レオは複雑な笑いで美咲を見た。
「今日はこの辺でお終いかな。また今度。ちょっと僕はしばらく忙しくなるけどね」
「あ、ありがとうございました。失礼します」
釈然としない美咲であったが、言われた通り大人しく帰ることにした。
「ミサキお帰り〜」
リムジンで帰宅し家事をした後に保育園へ迎えに行くと、大翔は青山先生と遊んでいた。
青山先生はいつも笑顔で優しい顔だが、見た目よりがっしりして体力がある。
普段から年長組の子供達を高い高いしたり、ぐるぐる回したりと大技が得意だ。
今日も大翔はジャイアントスイングをしてもらって笑っている。
「お疲れ様です〜」
美咲は青山先生に挨拶して大翔を引き取り、家に帰った。
今日は公園で泥遊びをしたらしい。
ドロドロに汚れた服の入った袋を持たされた。家に帰ると早速ベランダにある洗濯機を動かす。
まだ給料日前だから、お金が殆ど無い。夕飯は小村さんが作ってくれた煮物の残りにする。
「こんどね、ぼくけっこんするんだ!」
お風呂に入っているとき、大翔は無邪気に言った。
「え、誰と?」
仲の良いユミちゃんかな? 体を洗いながら美咲は聞いた。
「マユちゃんとユウナちゃんとユミちゃん!」
げっ!! 重婚か。
「そ、そうなんだ。良かったね。ハハ」
子供の戯れだ、直ぐに変わるだろう。そういや自分はデカかったから、何時も男共を従えていたな。
今のうちが華だぞと、心の中で思う美咲であった。
▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶ ▷ ▶
某日、都内某所にて。
『本日の売上げ五百万円、合計六千二百万円です』
「よっしゃぁあーー!! ペッピーさまさまやな! あとどんくらい必要なん?」
『あと三億は……』
「まだそんなあるんかい!! ま、ペッピーさんに稼いでもらいまひょか」
グフフフフフと下衆な笑みを浮かべる、男であった。




