15 新人研修
そうこうしているうちに、LITに到着した。どうもまだ慣れない。
まだ二回目だから、仕方ない。ここを自分の居場所と感じるには、もう少し時間が必要だろう。
「今日は研修なので、ウェルクルスだけ付けて来て下さい。あとサングラスの代わりに置いてある眼鏡で代用出来ます」
富崎さんの指示通り、部屋に入ってコンタクトをつけ眼鏡をかけた。
この前の服装とあわせたらデキるOLみたいな雰囲気で、ちょっと嬉しい。
すると、久々にジョニーが目の前に現れる。良く考えたらこいつ、この前全然活躍しなかった。
『美咲、久しぶり!また会えて嬉しいよ!! じゃあこっちに行こうか!』
イチイチうるさいが、大人しく出てきた矢印の指示に従う。
「この前はお疲れさま」
面接の時と同じ部屋で出迎えたのは、建御里レオだった。お台場の時は子供っぽい私服姿だったけれど、今はスーツで、子供のくせに自分より似合ってる。ハーフの顔付だから尚更だ。
悔しいが社長でイケメンだ。大人になったら95点いくな、こりゃ。ギムナジウムにでも通ったら、僕じゃ駄目なのかジ◯ベール!って言い寄られたり、エ◯ガーに拉致られて永遠の時をさまよいそうだ。
「学校は?」
「休んだ。おばちゃん鍛えがいありそうだし、新人社員だし、社長から訓示は必要っしょ」
顔以外はいけすかないガキだが、ここは素直に聞いておく。
「では改めてようこそ!Leo Institute & Technology、通称LITへ!
僕の会社は設立して二年半だけど、面白い製品ばかりだから、おばちゃんも飽きないよ。おばちゃんの役目は、我が社の製品を使って、地球の平和を守るお仕事です。どう? カッコいいでしょ!」
「え、あなたが創業者? お父さんとかじゃなくて?」
「突っ込むとこそれ? そうだよ」
こともなげに言う。
「あなた何歳?」
「四月生まれだから、今は十二。人生十年あれば、何でも出来るよ」
うまく言いくるめられた。普通の子じゃないんだ。大翔には、こうなって欲しくない。
「それで我が社の社是だけど、次世代を担う製品の開発です。ぶっちゃけ殆ど自分の発明品だけどね。内容は雑多で何でもあり。基本は工学系かな。ある程度のプロトタイプを創ったら、おばちゃんみたいな素人に製品を使ってもらって、モニターしてるんだ。やっぱり斬新な使い方をしてもらえると、助かるしね。
大塔屋直樹君は、その責任者。国のお偉いさんも理解があるから、この前の騒ぎなんかは沢山データが取れて、格好のモデルケースだったよ。おばちゃんの活躍のおかげで、結構な臨時収入が入ったんだ。助かったよ」
私は実験動物か。この会社にいる限り、この子の掌で回らされるようだ。
口の悪さは癪に障るが、給料の為に我慢、我慢。
「警察沙汰にならないの?」
「その辺は大丈夫、仲良いし。あ、これは守秘義務があるから、センスプとかに言っちゃ駄目。流石にその時は、損害賠償で訴えるからね」
「名前は?」
「? 何の?」
今度はノアが、きょとんとした。
「私達の。ほら、ロ◯ット団とかS◯S団とか」
「ああ、無いな、そう言えば」
「ふうん」
「気になったら、おばちゃん考えてみて」
連帯感が希薄そうだし、名付ける行為自体、思いつかなかったようだ。
「んじゃ自分で説明するのも面倒なんで、あとはこのビデオ観て。本当は面接が終わった後に見せて、そこから研修予定だったんだけどね、もう知っているのも多いし、楽だと思うよ。後は付けてるAI使って勉強しといて」




