10 社長はハーフで小学生
誰か知らないが、そう言われたのでは引かざるを得ない。
美咲は大人しく戦列を離れ、未来館近くの広場で待機し、遠目から様子を見守った。
通信してきたから当然ではあるが、彼も美咲達と同様にアヴィトラプをかけている。リーダーの応答がないけれど、恐らくメンバーの一人だ。
美咲達と同様にサングラスをかけているが、体の大きさと声は、まるっきり少年だ。そのメンバーと思しき少年は巧みに空中でスケボーを操ってガンドムの攻撃をかいくぐると、銃を取り出しガンドムの正面に撃ち放った。
かなり乗り馴れていて、無駄な動きが無い。まるで超一流のサッカー選手やダンサーみたいだ。直樹や彩と比べても、動きの質が全く違う。
さっきのレーザーで鈍くなったガンドムは、放たれた弾を避けきれず、命中して大きく爆発した。するとキラキラと金に光る粒子が、ガンドムの全身を覆い尽くし始める。
金色の粒子にに包まれたガンドムの動きは更に鈍重になり、最後の抵抗か、無意味に抗いもがいたものの、やがてゆりかもめの手前で座り込み、動かなくなった。安心した乗客の姿が伺える。
「やったぁ!」
あちこちから歓声があがる。こうなったらモブキャラの出番だ。再び警官達がワラワラとガンドムに上りはじめ、これでもかこれでもかと、無抵抗のガンドムを叩き続けた。やはり弱い者には、かなり強い。
浩リーダーも、美咲の元に駆け寄って来る。
直樹と彩はまだ動けないようだ。
空飛ぶスケボーに乗った少年は警官達に一瞥もせず、二人の前に降り立った。近づいて分かったが、思ったよりも若い、というか予想以上に幼い。小学生? の風貌だ。
アヴィトラプを外すと、眼は黒く肌は透き通るように白い。それに金髪だ。どう見てもハーフで、かなりの美少年である。子供だと分かり、美咲は思わず何時も大翔にやってる癖で、頭なでなでハグをしかける。だが浩リーダーより威厳のある凛とした姿は、何者も寄せ付けないオーラを纏っていた。
「ホント、もっとちゃんとやってよね、リーダー! リストラされて路頭に迷ってたあんたを救ったの、誰だと思ってんの?」
その天使のような見かけとは裏腹に、少年は開口一番、リーダーを罵倒し始めた。浩はひたすら耐えて俯くだけで、無言だ。アヴィトラプで表情は見えないが、大きい体は萎縮し、さっきより小さくなる。
「大体さあ、あれ全身スキャンすれば遠隔操作だって、直ぐ分かるよね? そしたら遮断レーザー使えば直ぐじゃん。そんなことも知らないの? バカじゃない? ホント、この仕事何年やってるの?」
「あんた誰?」
確かにリーダーの態度は酷いが、仮にも目上の人間に全く敬意を払わないあまりに失礼な言い草に、美咲は思わず熱がこもって叱り口調になった。
「え、聞いてない?」
少年は美咲を意外そうな顔で見返す。
「建御里レオ。ここの社長」
その瞬間、美咲は凍り付いた。




