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第8話 初陣

 ドカアッ!!!


 扉を蹴破ると、それまで防壁を担っていた机や椅子は衝撃で大きな音を部屋中に響きかせ散乱し、それを押さえつけていたであろう魔物は叫び声を上げ、部屋の中央にまで吹き飛ばされる。



「ヴオォーーン!!」

「ヴオォーーン!!」

「ヴオォーーン!!」

「ヴオォーーン!!」



 吹き飛ばされた四体のコボルトは一体一体孤立するように散らばり、その内の一体は片手剣と丸盾を落としてしまう。


 扉を蹴破ったランディス、ガイン、シルクの三人は勢いそのままに部屋の中に雪崩れ込む。



「よし!! 今のうちに倒れているコボルトを倒すんだ!!」


「おおっ!! 任せとけ!!」



 ランディスとガインは地面を力強く蹴り出すと、部屋の中央に倒れているコボルトに向かって斬りかかる。


 と、その時、天井の角に潜んでいた一体のコボルトが襲いかかってくる!!



「ワオオーーン!!」



 そのコボルトへ向かって、フレークは懸命に火属性の魔法で対抗する!!



「当たって!! 火玉!!」



 杖の先端から握り拳ぐらいの火玉が生成され、上から襲いかかるコボルトに向かって飛んでいく!!



 バァン!



「キャイーーン!!」



 フレークの放った火玉は見事コボルトに炸裂し、そのまま壁まで吹き飛ばされる!!



「良かった……、当たった……」



 フレークは自分の魔法が当たった事にほっとしたのか、胸を撫で下ろすように脚が内股になる。

 そこに、覆い被さるように黒い影が徐々に迫って来る。


 それは天井の右角に潜んでいたもう一体のコボルト。実は左角と右角に一体ずつ潜んでいたのだが、扉からは死角になっていた為、気付くことが出来なかったのだ。


 どんどんフレークの頭上に迫って来るコボルト。

 しかしそのコボルトの殺気に気付き、フレークの方へ振り向く者がいた。


 それは、シルク・カルザス



「フレーク!!」



 シルクは地面を蹴るとコボルトに当て身を喰らわせ、勢いそのままに一人と一体は元いた部屋へ倒れ込む。



「シルク!! 大丈夫!?」



 扉から、シルクを心配するフレーク。



「くっ……うぅ……!!」



 シルクの右肩にジンジンと鈍痛が走る。

 当て身を喰らわせた時にコボルトの身に付けていた胸当てに、右肩を強くぶつけてしまったのだ。


 だがシルクは、体制的には有利になるように上手くコボルトの上に倒れこんでいた。

 そして素早くコボルトの上にまたがると、短刀を両手持ちにし頭上高く振りかざすと、コボルトの眉間めがけて振り下ろす!!



 ……つもりだったのだが、またもシルクの右肩に鈍痛が走り、一瞬、動きが止まってしまう。



「……あっ! ……つう……!!」



 しかし、シルクはその痛みに耐え、今度こそコボルトの眉間に向かって振り下ろす!!



 ガツ!!



 だが、一瞬遅れたためかコボルトは顔をずらし短刀をかわす。



「しまった!!」



 そしてコボルトは一瞬の隙をつき、上手く右脚を引き抜くとその脚をドッカと勢い良くシルクのみぞおちにめり込ませる。



「……かっ……はぁっ……!!」



 瞬間、シルクの口から舌がはみ出る。

 そしてコボルトはその脚力を活かし、そのまま壁まで吹き飛ばす。


 シルクは勢い良く壁に激突すると、立て掛けてあった農業用具や肥料を撒き散らしながら地面へ落ち、蹴られたみぞおちを両腕で抑えながらゆっくりとうずくまる。



「……ぐ……う……」



 シルクはうずくまりながら何とか顔を上げると、コボルトは既に片手剣と丸盾を持ち、今にも襲いかかろうとしている。



「く、くそぉ……」



 シルクの顔に脂汗がつたう。

 それでも懸命に立ち上がり身構えようとするが、右肩とみぞおちに痛みが走り、それを許さない。



「ワオオーーン!!」



 そして身動きの取れないシルクに容赦なく飛びかかってくる!!



「……嘘でしょ……? こんなに……、あっさり……」



 コボルトの片手剣が、シルクに向かって振りかざされる。身体がいうことをきかず、ついには、目を伏せてしまうシルク。



 その時!!



 バァン!!



「キャイーーン!!」



 コボルトの身体が宙に浮き、勢い良く壁に激突する!!



「……はぁ、……はぁ」



 シルクを助けたのは、扉の近くにいたフレーク・ココアだった。

 火玉を炸裂させ、コボルトの身体を吹き飛ばしたのだった。


 そして、フレークは急いでシルクの側まで駆け寄る。



「シルク!! 大丈夫!?」


「……これが大丈夫なように見える……?」



 シルクは何とか身体を起こすと、フレークにお礼を言う。



「でも、あンたのお陰で助かったわ……。ありがとう……」


「そ、そんな……。お礼を言わなきゃいけないのは、私の方なのに……」



 と、その時である。

 フレークの後ろから、黒い影が手に持った片手剣をフレーク目掛けて振り下ろそうとしていた。



 ……が。



 その黒い影の眉間には、既にシルクの投げた短刀が深々と突き刺さっていた。


 その黒い影の正体は、先程フレークが火玉を炸裂させたコボルト。今、ゆっくりと後ろへ身体が倒れて行く。

 フレークの火玉一撃では、致命傷にはならなかったようだ。


 ドオォン……。



「きゃあ!!」



 襲われかけたフレークは、驚きの声を上げる。



「全く、油断も隙も無い……」


「ご、ごめんね……。シルク……。また助けてもらっちゃって……」



 今度はフレークがシルクにお礼を言う。



「待ってて、今、治癒魔法でその傷治すから」



 フレークがそう言うと、シルクの右肩とみぞおちに手を添えて、魔法を詠唱する。


 すると、シルクを苦しめていた鈍痛が少しずつ和らいで来る。



「ありがとう、フレーク。大分楽になったわ。」


「よ、良かった……」



 フレークの治癒魔法により、完全に痛みが取れたシルクは素早く立ち上がると、あることを思い出す。



「そう言えばフレーク!! ランディスとガインはどうしたの!?」


「……あ!! すっかり忘れてた!! 速く戻らないと!!」

お読みいただきありがとうございます。

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