第4話 暗がりに浮かぶ大部屋
「……おい、なんだよ? あれ?」
ガインが指差す先に、ぼんやりと大きな部屋が見える。
「ああ、あの部屋は父さんの聞いた話によると、中は3つの部屋に別れているだけの、特段何もない部屋だよ。……とは言えだいぶ前の話だから、今はどうなっているか解らないけどね」
「何よその情報、全然役に立たないじゃない」
ランディスの言葉に、シルクが呆れる。
「まあ、こんな入口付近の大部屋なんか、一番最初に探索されるべき場所だし、何も残って無いだろうね。……魔物はいるかもしれないけどね」
「確かに、あそこから何か気配を感じるわね。もしかしたら、本当に魔物の巣窟なのかも」
ランディスは魔物が巣くっていることを示唆し、シルクはそれに同調する。
そこに、ガインが割って入る。
「なら初陣にちょうど良いんじゃねぇ? 俺達、実戦経験なんて皆無なんだから、ここでちょっくら経験積んどこうぜ!」
「確かに……。このまま奥に行くのは……」
「そうね……、実戦経験無しで強敵に会うのもちょっと……」
ガインの提案に乗り気のランディスとシルク。
しかし、フレークだけは違った。
「えっ!? あそこ入るの!? ……特に何も無いんだったら、無理に魔物と闘わなくても良いんじゃない……?」
魔物との戦闘を遠回しに拒むフレーク。
すると、思いが通じたのか、
「確かにそうだな」
「無理に闘って、怪我してもしょうがないしね」
「お宝も何も無いしな」
互いの思いを口にし、フレークに同調する三人。
「えっ! じゃあ!!」
気持ちが通じ、フレークの顔が和らぐ。
「よし、入ろう」
「よし、入ろう」
「よし、入ろう」
「あれれーー!?」
全く通じていなかった。
その時、フレークは目に涙を溜めていた。
今にも泣きそうなフレークにシルクが声をかける。
「落ち着いて、フレーク。実戦経験も無しにこのまま奥に行っても、確実に全滅するだけよ。ここで少しでも、経験を積んでおかなきゃ」
「うぅ……。やだなぁ……」
フレークは完全に怯えていた。
対してガインは、既に意気揚々と大部屋に向かっていた。
「へへっ! そうと決まれば、さっさとあの部屋へ入ろうぜ! この辺だとやっぱ、コボルトか、オークといったところか!?」
この異世界のオークと言うのは、二足歩行する豚型の魔物である。
魔物では、最弱とされている。
そして、ここでいうコボルトというのは、やはり二足歩行する犬型の魔物だ。
「お、おい! 待てよ!! ガイン!! 勝手に先にいくな!! 全員でちゃんと隊列を組んでから部屋に入るんだ!!」
ランディスは、勝手に先行するガインを大声で引き止める。
「さあ行くわよ、フレーク。覚悟を決めなさい!」
「やっぱり、いやだよぉ……」
フレークはシルクに促され、怯えながらついていく。
そして大部屋の扉の前に立った四人は、ランディスを先頭に、右後にガイン、左後にシルク、そして、ガインとシルクの後ろにフレークが立つと言う隊列を組んだ。
ランディスは部屋の扉に手を掛けると、後方の三人と顔を見て確認しあう。そして、
「よし、開けるぞ!!」
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