第3話 始まる洞窟探索
四人が探索する洞窟。永年、色々な冒険者や、高名な騎士、大賢者の肩書きを持つ者まで、深層に巣食う主を討伐する為にこの洞窟に挑んで来たが、未だに洞窟の謎の解明にはいたっていない。
理由は至極簡単、洞窟に対する主眼が、主を倒す事ではなく、単純な金儲けの一手段として、用いられるようになったからだ。
今、その洞窟を四人はランディスを先頭に、慎重に進んでいる。
洞窟内部を見渡しながら、ガインが言う。
「お? 意外と明るいじゃん?」
「でも、遠くまで見通せるって訳じゃ無いわね。……5メートルくらい? 先が見えるのは」
ガインの言葉に、シルクが返答する。
「これじゃあ、遠くの敵を判別するのは難しいわね。暗闇から襲われたら、危ないかも」
「……!! も、もし、そうなったら、どうしたらいいの!?」
シルクの言葉にフレークが怯える。そこへ、ランディスが声をかける。
「大丈夫だよ、フレーク。その時は、俺がちゃんと守ってあげるから」
それを見たシルクは、少し、不満そうな顔でランディスに話しかける。
「本当に大丈夫なんでしょうね? ランディス。フレークだけ守って、私とガインはほったらかし……なんてのは無しだからね!?」
すると、ガインが茶化すように割って入る。
「そん時は、俺が守ってやるって!! ランディスに相手されないからって、イラつくなよ!!」
「あンたはさっさと敵に切り込んで行って、一体でも多く倒しなさいよ!! そうすれば守ってもらわなくても平気だから!!」
「酷え!! 俺だけ敵に突っ込んで行って、誰にも守ってもらえねぇのかよ!!」
「だーかーらー!! それは、ランディスの役目でしょ!? だいたい、あンたが早く敵を倒せば、守ってもらう必要も無いじゃない!? あンたのデカイ身体とその斧は何の為にあるのよ!?」
ガインのそれが口火となり、シルクと言い争いが始まる。
それを見ていたフレークが、おどおどと、止めに入る。
「あ、あの、ふたりとも落ち着いて……」
「あンたもよ!! フレーク!!」
「ひきゃぁん!!」
フレークが声をかけるが早いか、シルクが振り向き様にフレークに指を差し、強く当たる。驚いたフレークは尻餅をつき、そのまま地べたに座り混んでしまう。
「あんだけ嫌がってたくせについてきたんだから、その攻撃魔法や回復魔法で援護してもらわなきゃ困るんだからね!! それしか取り柄が無いんだから!!」
「ご、御免なさぁい……」
強く言われたフレークは、杖をギュッと握った両手で、顔を隠し怯えていた。
「何で、謝るのよ……」
謝れたシルクは、複雑な気持ちになる。
そこへ、ガインが懲りずに茶化しに入る。
「まあまあ、フレークを苛めるなよ!! お前だって、罠を外すくらいしか、能がねえんだからよ!!」
その言葉が発せられた瞬間、シルクの短刀が風を切り裂き、ガインの股の間を抜けていく。投げた短刀は弧を描き、見事にシルクの手元に戻ってくる。
「て、てめぇ!! なにしやがんだ!! いい加減にしやがれ!!」
「うるさい!! 次は、当てるからね!!」
驚くガインに、激昂するシルク。そこへランディスが止めに入る。
「いい加減にしないか!! みんな!! どうしていつも喧嘩するんだ!! まだ入口付近なんだぞ!! そんな事じゃ、いつまでもたっても先に進めないだろ!?」
ランディスが仲裁する事で皆がようやく落ち着きを取り戻す。
「ガインが変な事言うから悪いんでしょ!? その口、縫い合わせたら!?」
「な、なんだと!? てめぇだって、戦闘で対して役に立たねぇじゃねぇか!!」
「だから喧嘩するなって言ってるだろ!! いい加減にしないと置いていくぞ!! ……立てるかい? フレーク。ほら、俺の手を掴んで」
「……うん、ありがとう……」
ガインとシルクをなだめながら、ランディスは座り込んでいるフレークに手を差し述べる。フレークはその手を掴み立ち上がる。
やっと冷静さを取り戻した四人は、ようやく探索を再開させる。
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