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第13話 この異世界における魔法

 コボルトの巣窟()()()大部屋を出た四人は一本道を奥へと進みながら、魔法について話し出す。


「……そう言えば、フレーク。その魔法の名前、もう少しなんとか出来ないの?」


「……え? 変かな?」


 シルクに魔法の名前を指摘され、フレークは自分の名付け方に疑問を持ってしまう。

 そこへ、ガインが茶化しに入る。


「まあ、確かにあれは無えよな。『火花ー!』って。どうせだったらよ? もっと強そうな名前にすりゃ良いのによ」


「うぅ……『火玉』だよぉ……。みんな、ひどいよぉ……」


「どっちも似たようなものじゃない」


 フレークは目に涙を溜めて言葉を返すが、ガインとシルクは魔法の名前をこけにする。それをみかねたランディスがフレークを慰めるのだった。




 ……フレークは、他の異世界同様、この異世界にも存在する魔法【火属性】【氷属性】【風属性】【土属性】の四属性の攻撃魔法と、負傷したり病気になった身体を治療する【治癒魔法】を含めた、五属性全てを基礎的な部分ではあるが扱うことができる。



 この基礎的な部分というのは攻撃魔法の場合、物質を生成し、本体から放たれるようになるまでの事を指す。

 火属性の場合は小さな炎を、氷属性の場合は小さな氷玉を作り出す事から始まる。そして、それらを大きくして威力を高めていく。


 感覚としては、最初は水道の蛇口から水がチョロチョロ出ている。そして、水の威力を高めるために蛇口のハンドルを回す……。すると水が勢い良く出てくる。そんな感じだ。


 ひとつの属性を修練し、極めれば、火柱を一度に何本も作り出すことができたり、巨大な氷玉をぶつけたりすることができる。


 因みに、この異世界では魔法の強さによって固有名詞がつけられていないため、殆どの魔法使いは格好つけたいが為に、何かしらの名前を独自につけるのが普通になっている。

 フレークの『火玉』も自身で着けた魔法の名前だ。



 更に、この【四属性】を組み合わせれば、ほぼ全ての魔法を繰り出すことが出来る。これを、この異世界では【混合魔法】と呼ばれている。


 混合魔法だからと言って、別段、極端に強力な魔法になる理由ではない。この異世界では氷属性を極めても、巨大な氷玉や広範囲に雹を降らせられるようになるばかりで、永遠に吹雪の魔法を使うことはできない。そこで風属性を組み合わせる。氷属性で作り出した氷を風属性で吹き飛ばすと【混合魔法】吹雪の完成となる。氷属性の部分を火属性にすれば、灼熱の風が出来るし、土属性に変更し、岩を粉々にして吹き飛ばせば、どこでも砂嵐が巻き起こせる。




 雷魔法も混合魔法で放つ事ができる。掛け合わせ方は、空中に氷属性で細かい氷を大量に出す。次に火属性で大量の細かい氷を、溶けるか溶けないかのぎりぎりの感じで温める。すると、水玉と氷が空中に浮遊し始めるので、最後に風属性でかき混ぜれば、水玉や氷同士が接触し、静電気が発生、帯電し始める。後は、どんどんかき混ぜれば帯電した電気は逃げ場がなくなり地面に落雷する……。これで雷魔法の完成だ。




 治癒魔法に関しては、少し異質かもしれない。


 普通の治癒魔法は、まず、負傷した者に治癒魔法をかける。そして、負傷した者の回復力は、その魔法をかけた魔法使いの魔力に依存する。だが、この異世界の治癒魔法は、負傷者の自然治癒力を速めるものである。


 若い体力のあるもの、身体を鍛え上げている戦士や騎士は、それなりに熟練した治癒魔法を魔法使いにかけてもらうだけで、速く治る。しかし、体力の落ちた老齢の者や、普段、身体をあまり鍛える機会の無い魔法使い等は、同じ治癒魔法をかけても、完治に時間がかかる。つまり、完治にかかる時間は【自然治癒力】と【治癒魔法】の相乗効果によって決まる。


 更にいえば、重症度によって、治せるものと治せないものも出てくる。例えば骨折をした場合、時間をかければ治癒魔法で治すことができる。しかし、腕を切り落とされた、等の場合は時間との勝負になる。直ぐにその切り落とされた腕を身体につけ、治癒魔法をかければ時間とともに、腕は元通りに繋がる。だが、切られた腕を放置し、壊死してしまうと腕は二度と元には戻らない。



 そして、他の異世界にはほぼ存在し、この異世界には存在しない魔法がある。それは、死者を蘇らせる【蘇生魔法】だ。この異世界では、生き返る事は許されないのだ。






「……ところでよ、フレーク。お前ぇ、せっかく全属性の魔法とか使えんだからよ、転移とか出来ねぇのかよ?」


「それは……私も使えるようにはなりたいけど、まだ基礎の魔法しか出来ないし……」



 ガインの言葉に、うつむいた顔の前で弱々しく杖を握るフレークを見て、ランディスは間に入ると、その後にシルクが続く。



「おい、ガイン。あんまり無理を言うんじゃない。フレークが困ってるじゃないか。第一、駆け出しの俺達がいきなり転移魔法でどこへ行こうと言うんだ?」


「まあ確かにね。予備知識もなく、いきなり奥や中層、深層に行っても迷子になって全滅するのが目に浮かぶわね」



 フレークはその話を聞くなり、握りしめた杖に更に力がこもる。



「……怖いこと言わないで……シルク……」




【転移魔法】……それは、火、氷、土、風の各属性に治癒魔法を掛け合わせた【五大混合魔法】である。この魔法は、五属性全てを同時発動させなければならないため、かなりの魔力のみならず相当な精神力も必要とする為、魔法の中では屈指の難度をほこり、扱える使い手は数える程しかいない。

 転移方法としては、まず転移場所を脳裏に想定する。その後、生物の体を原子にまで分裂させ、そのまま転移を始める。

 そして、転移先で治癒魔法で原子を人型に実体化させ、転移完了となる。


 転移中は原子の為、岩の中や壁の中をすり抜ける事ができるが、まかり間違って岩や壁、水の中に転移してしまうとその身体は一体化してしまい、永遠に失われてしまう。



 そんな夢の転移魔法の修得に希望を抱いて、フレークは少し笑みを浮かべながら呟く。



「……でも、私もいつか転移魔法を使えるようになりたいな……」



 そんな会話をして一本道を歩いていると、四人は突き当たりに扉を見つける。


お読み頂きありがとうございます。

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