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第12話 報酬

 速く宝箱の全容を知りたいシルクは、ランディスを急かす。


「何モタモタしてんのよ!? 速く掘り返しなさいよ!!」

「焦るんじゃない! 宝箱に足が生えて逃げたりしないよ!」

「何言ってんのよ!? 生えるかも知れないでしょ!?」

「……お前、俺よりも食いついてんじゃねぇか……?」


 そうこうしている内に、丁寧に発掘され全容が明らかにされた宝箱はランディスの手により、地面に置かれる。

 その頃、シルクを探していたフレークが、三人の元に駆けてくる。


「ひどいよ……シルク、いきなり居なくなるなんて……!」

「あぁ……ごめんなさい、フレーク。宝箱に眼が眩んで」


 フレークに謝るシルクだったが、存外、ひどい言葉を投げ掛ける。



 四人が初めて手にする宝箱、それは木で出来ていて中身はそれほど期待出来るものではなかった。


「おい! 早速開けようぜ!?」


 宝箱に手をかけ、開けようとするガインのはやる気持ちを、シルクが間に割って入り、すんでのところで抑える。


「待ちなさいよ、ガイン! 宝箱には、大抵罠が仕掛けられてるものよ。ここは私に任せて、あなたは後ろで黙って見てなさい」


 シルクは宝箱の前に膝まずくと、三人を念のため自分から離れるように促し、罠がかかってないか入念に調べる。


「あれで何か判るのかな……?」


 張り詰める空気の中、フレークが誰ともなく話しかけると、シルクが集中を散らさないよう、ランディスは口元で人差し指を立て、静かにするように皆に努めさせる。



 シルクはためすがめつ宝箱を調べたかと思うと、土の上に置き手招きを始める。


「ねぇ、ガイン。ちょっとこれを見て」


「ん? 何だよ?」


 ガインは呼ばれるがままに近づいて行きシルクの頭の上から、宝箱を覗きこむ。少々離れた所から見ていたランディスとフレークは、少し不安になる。


「うん、これなんだけどね……」


 シルクはそう言うと宝箱をガインに向けて蓋から手を離す。すると蓋はバネのように開き、中から匙の様なものが振りかぶったかと思うと、小粒の石が勢い良く飛んでいきガインの額を的確にとらえた次の瞬間、少年の絶叫と少女の笑い声が部屋中に響きわたる。



「お、おい! ふたりとも、何をやってるんだ!?」

「ガイン、大丈夫!?」


 驚いたランディスとフレークは、急いで二人の元に駆け寄り、そして、これ以上事が大きくならないよう、ガインとシルクの間に割って入る。ガインは右手で額を押さえながら、大声をあげるが、シルクは未だにをお腹を抱えて笑い転げる。


「大丈夫な訳ねぇだろ!? なんて事しやがんだ!! あいつ!! ……くそっ! まだ痛ぇ!」


「あはは、あははははは!! こんなに簡単に引っ掛かるなんて!! お、お腹痛い!! あははははは!!」


「ガイン、血が出てるよ! 今、治すからね!」



 フレークがガインの怪我を直している間、ランディスは悪ふざけをしたシルクを注意する。



「シルク、仲間を怪我させるなんてどういうつもりなんだ!? まして、罠をわざと作動させるなんて! もし、危険な罠だったらどうするつもりだ!?」


「あははは……はぁ、はぁ、ご、ごめんなさい。つい、あいつの事をからかいたくなって……。悪かったわ」



 ようやく笑いが収まりゆっくりと立ち上がったシルクは、今しがた治療を終えたガインの顔を見るなり、またもや笑い転げる。



「あは、あはは、あははは!!」


「てめぇ! もう許さねぇ!!」


「いい加減にしないか!」

「いい加減にしてよー!」



 ランディスとフレークがふたりを懸命になだめると、シルクはようやく気持ちが落ち着き、今度は皆を宝箱の周りに手招きする。

 だが、ランディスとフレークは、先程ガインにした仕打ちを思いだし、遠巻きに宝箱を見つめるだけだった。


 そんな警戒するふたりにシルクはこう言った。



「大丈夫よ、もう罠は作動しないから」


 それに対し、ランディスとフレークは口を揃えて言葉を返し、少し遅れてガインが呆れた声を出す。


「いや、そう言うことじゃないんだけど……」

「いや、そう言うことじゃないんだけど……」


「お前、良くそんな事言えるな……」



 何時までも宝箱に近づこうとしないランディス、ガイン、フレークを見て、シルクは痺れを切らし自分から宝箱を持って歩み寄ると、三人はビクリと身震いをするがそれでも構わず宝箱を持って近づく。


「ほら、中身はこんなものよ」

「え……? あ、ああ……。銅貨が数枚入っているな」

「コボルトってお金使うのかな?」

「フレーク、そこ気にする所じゃねぇだろ……」


 ランディスは宝箱の中に手を入れ、銅貨を回収すると、皆に山分けする。


 この異世界の通貨は、銅貨、銀貨、金貨の順で価値が上がり、さらにそれぞれの硬貨の中でも小、大の二種類がある。


 一番価値が低いのは小銅貨で、それが十枚集まると大銅貨一枚と同じ価値になる。更に大銅貨十枚は小銀貨一枚と同等となり、小銀貨十枚で大銀貨一枚相当となるが、一番価値が高い金貨のみ、大小の種別はない。



 みんなに順当に銅貨を分配し終えると、ガインが口を出す。


「なあランディス。俺、もうちょい貰っても良いんじゃねぇ?」

「何を言ってるんだ。喧嘩しないように何があっても必ず山分けにすると、最初にそう決めたじゃないか」


 自分の活躍に対し報酬が満足出来ないガインを、静かになだめるランディス。そして、皆の顔を確かめるように見渡すとこう語りかける。


「じゃあ、銅貨の山分けも終わったし部屋を出ようか」


 その言葉にうなずくガイン、シルク、フレークは、ランディスを先頭に部屋を出ようと扉に向かったその時、ガインがシルクに声をかける。


「ところでお前ぇ、短刀はどうしたんだよ?」


 その言葉を耳にしたシルクは、頬を赤くし、耳まで真っ赤にするとガインに食ってかかる。


「い、今から取ってこようと思ってたところよ! 別に忘れていた訳じゃないから!!」


 そしてシルクは短刀を取りに部屋の奥に戻って行き、部屋を出るのに今しばらく時間を要した。


お読み頂き、ありがとうございます。

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