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華の乱  作者: 黒梟
3/14

II

 嵐は何処ででも吹き荒れる




 転校して、間も無く進級。


 あいつが何をしたかったのか本当に分からない。分かろうとも思わない。

 ただ、私が松葉の家に住むようになってから、目に見えてご機嫌オーラが出ている。気持ち悪い。

 だけど松葉の家に入った以上迂闊な行動は出来なくなった。バイトや買い物なども制限されてしまう。

 内部の事を表に出さないようにと、内部の人間関係を探られない為。学校でも部活はほぼ禁止。例外はどんな事案にも己だけで対処できるものだけ。

 私の場合、松葉の仕事が入るし、面倒なので部活には入らない。園芸部も無いし。こっちの理由の方が大きいけど。何より、軽蔑にも似た眼で見られるのが、一番腹が立つ。


 何故何も知らない赤の他人は、そんなに他人の事で騒ぎ立てることができるのだろう?疑問符だらけで、逆に可哀想な子を見る目になってしまう。


 そんなに玉の輿に乗りたいか?そんなに金ズルになってもらいたいか?贅沢できると本気で思っているのか?愚かな人達だ。


 あの家の、松葉を含む五家は仕事と家訓に忠実だ。信頼した者にしか何に対しても許可を出さない。


 他人の物は借りたら返さねばならない。使って良いと言われてないなら尚更。相手の名を語った時もそうなるだろう。受けた仕事は自分達で処理してもらわねば。尻拭いなど紫炎の分だけで充分だ。

 とは言え、彼の尻拭いは彼女が絡んだ人間関係だけのような気が・・・。仕事に関してもそうかもしれない。


 まあ甘い汁を吸っていたのだから、その分の働きはしてもらわねば。それが出来ないのなら、吸った汁を全て搾り取るだけ。



 他人の不幸は蜜の味



 その時、自分にどう返ってくるか分かっていれば、愚かな事はしないだろう。精々貧乏くじを押し付けられた私を楽しませてほしいな。私ばっかり損をするのは納得いかないし、呆気ないのもつまらないな。


 全く、人という生き物に、“権力”と“欲”を与え続ければ、持ち続ければ常識と言うのが麻痺するらしい。己一人で生きているわけでは無いのに・・・・ね。


 そんなことを考えながら、教室からボンヤリ外を眺めていたら、人懐っこい顔をした男子が声を掛けてきた。


「何ぼーっとしてんの?」


 松葉雛菊、薄茶色の少し癖のある短髪。背は高く、均整のとれた躰つきをしている、大きな黒い瞳が特徴的な、“可愛らしい”がよく似合う男子。学年問わず人気があるとの事。

 同じ屋根の下に居てても、学校の事など話さない。そしてクラスで浮きまくってる私に話しかけて大丈夫なのかと問いたくなった。


「面倒ごとに巻き込まないでほしい」


 私の率直かつ真面目で隠そうともしない本音に、雛が困ったような顔をする。


「・・・あーうん、強行だったからな」

「私に話しかけていいの?」

「ん?何で?世話になるのは俺なんだし問題ないでしょ?」


 こいつも私に頼る気満々かい!


 怒りしか湧いてこなかった私はお雛様にこれ以上ない笑顔で告げた。


「そう、じゃこれから一年宜しくね、()()()


 言い終わった後に、私と雛菊のやり取りを、遠巻きで見ていた女子たちが、口煩く私に対して喚き散らしていたが、おもむろに耳栓を取り出し、耳に入れた私を見て更に顔を赤くして怒鳴り散らしていたのを見て、


(この子たちにとって、雛って意中の人じゃないんだ。案外雛はモテないのかな?)

 普通好きな人を前にしたら、猫をかぶると思っていたけど、違うようだと。


 なーんて呑気に考えてた私の頭を、雛が撫でて席に戻っていった。

 虫除けにされたのが嫌という程わかった一幕であった。



 私を貶した女子の言葉(語彙力が足りないような・・・)

 ・ただ胸がデカイだけじゃない

(はっきり言って下品)

 ・目力で落としたの?カラコンでも入れて、二重にして睫毛塗りたくって大変ね将来禿げるわよ

(二重は地、カラコン何て入れた事ない、マラカス?マスカラ?なんてしなきゃいけないの?女って大変ね)

 ・(髪の色)雛様よりも濃い茶色ね、似合ってないわよ。

(母親譲りの地毛だし)

 ・脚が太い。手が汚い。普通以下の顔などなど

(悪口って、無限に出てくるものなのね、凄いわ。女子最強!自分も女だけど・・・)


 周りに異性がいるんだから、もう少し落ち着けよ!

 そして、そんなに素をさらすなよ!と思いながら、また外を眺める。




 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎




 家に帰って、同い年別のクラスの水仙とお茶してる時に、教室での出来事を聞いてもらった。

 水仙は紫炎の()()めの娘、艶のあるストレートの黒髪に、薄い茶色の瞳が特徴的。

 少しキツめの印象を与えるが、綺麗の部類に入る顔立ちをしている。


「あっはははは!災難だったねあやめ。まあ雛の好きな子は年下で、しかもおっとり系の子だしね。

 あやめを虫除けに使うのは、丁度いい時に来てくれたと思ってるんじゃない?あの子の周りキツイくて自己主張の強い子ばっかだったでしょ?」


 嬉しくもない説明に、「同じ学校?」と問うた。


「そう。1年の子。雛の一目惚れだって。まあ、周りの子に対する対応と同じにしてるし、しょっちゅう会ってるわけじゃないみたいだけど」

「まあ、変わったのも居るけど、進学校だもんね、うち」

「そ、成績優先。あやめは問題ないでしょ?。わたしもその点は大丈夫だけど・・・・・雛がね・・・」

「うん、・・・そうね」


 家に加えて、学校での疲労のタネが増えた。しかも割とたくさんの様な気がする・・・。

 人気者恐るべし!頭のネジも締めてほしい!

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