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華の乱  作者: 黒梟
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ⅩⅡ

 強行突破





 ドーーーーーーーン!

 メキメキメキメキ!

 ドシーーーン!!

 バサバサバサバサバサーーーー!


 森というか山から響き渡る破壊音・・・というか木々がなぎ倒されていく音。

 そして鳥達は飛び立ち、動物たちは逃げまどう。

 それら全てを無視して前から来る攻撃をかわしつつ唯ひたすらに前に進む。


 山に入ろうとして一歩踏み出せば、強烈は力を感じた。それを気にする事なく、少し後ろに後退してから助走をつけて森の中へと駆け込んで行った。

 目指すは庵のある七合目付近。





 少し時は遡る



 子狐に案内されて(誰もいてなかったので狐の力を使った強制移動)来たのは古びた民家。

 何故こんな処に?と思ったが、自分の格好を見て納得。ありがたく部屋を使わせてもらう事にした。


 羽織袴に似た和服に着替え、足袋を履き足首には自分の名と同じ花の絵が彫ってある金の鈴を巻きつける。

 今回は山の中という事で、日本刀は振り回せないので鉄の扇子を持ってきたつもりだった。少し重いが中骨部分の先が尖っている事もあり良い武器になる。

 当然人には向けない。手加減なしにやれば紫炎や私でなくとも致命傷を与えかねないからだ。

 稽古の時はよくこれで叩かれもしたが、決して体罰ではない。


 が、

 鞄にはかなり使い込んだのを入れていたはずなのに、いざ蓋を開けてみれば誰に頼んだのか、何処で手に入れたのかマグネシウム合金で創られた扇子が入っていた。扇面部分と中骨部分には合金に穴を開けて華が絵が描かれていた。

 いろんな意味で凝った逸品である。

 これは私に色々やらすき満々だな、というのがありありと見て取れた。


 まあ、()()()()()()ありがたく使わせてもらおう。

 全てが終わった暁には顔面にめり込ませてやる。


 誰の?とは聞かなずともわかるであろう。そう()()である。


 すこーしだけ黒い感情が込み上げてきたが、今どうこうできる訳ではないので無視する事に決めた。

 荷物を鞄に入れ込み、草履を履いて外に出る。

 子狐が待ちぼうけているかと思いきや、数匹の狐が一緒に待機していた。



「お待たせして申し訳ない、準備が整いました」


「こちらこそたいしたおもてなしもせずに向かっていただくのは申し訳ないです。

 何か我々に出来ることがあれば何なりとお申し付け下さい」


 その言葉に、鞄をどうしようかと思っていたが預けておいても大丈夫かな?と思いお願いする事にした。勿論忠告も忘れない。


「それでは荷物をお願いしてもよろしいですか?」


「えっ?」


「あー大丈夫ですよ。貴方がたに害のあるものは多分入っていないと思いますから。

 確かに私が荷物の準備をしたのですが、後から後から誰かがこっそり物を入れ替えたり、足したりしているみたいなのです。

 あまりゆっくりもしていられないので今は中の確認はしていませんが、鞄や中身をどうこうしようとしない限り大丈夫です。

 第一に持ち歩いて相対する事はできないので・・・・

 預けることが無理であれば何処か人目のつかないところに置いておいてもらえたらいいのでお願いできますか?」


「あ・・・そうなのですね。でしたらお預かりさせていただきます。他の者達や、人は近づけないようにしておきますね。

 身内でも手を出そうとするものがいれば、鞄自体を隠しておきます。それでよろしいでしょうか?」


「ええ、それで構いません。

 ご迷惑をおかけすると思いますがよろしくお願いします」


 何かあるかと聞かれたのは私だが、頼むのはこちらなので深々と頭を下げる。

 別におかしなことではない。依頼されているのはこちらだが、報酬は前払いで頂いてもいるのだから。

 失敗する気は無いが、依頼主にしたらそうではない。それをわかっているからこそ、いや、それ以前に誰が為か考えて行動しろ、の言葉が私の原動力。

 感情に惑わされては何もできない。






 荷物を預けて案内されたのは山の登山口。

 元々成人するもの達が正装で山を登り7合目付近にある庵でお茶を頂いて帰ってくるという儀式の為だけに使われる道なのだとか。

 庵の手入れはおもてなしをするもの達がしているので特段人は関わっていないそうだ。


 というか、集落の人間も茶道の先生を呼んでるものと思っているので今まで大きな問題はなかったそうだ。


 ところがある日、順番に庵の手入れをしていた者から不審なものが居るとの連絡があり行ってみると、代々受け継がれてきた茶器に明らかに人の血と見られる液体が入っていたそうだ。


 驚いた狐達が茶器の中の液体を山を降りて森に影響がない所に捨て、一度そこで茶器を濯いでから山の湧き水で綺麗に清めたのだが遅かったらしい。


 茶器を戻す前に庵からは黒い煙が立ち上り始め周囲の森を覆い始めたのだ。

 半径2メートル付近の森は見るも無惨に枯れ果て狐達では近づくことさえできなくなってしまったそうだ。

 そして肝心の茶器はいつのまにか手元から消えていたらしい。


 総員で必死になって探して目のいいものが見つけたのが庵の中だったそうだ。

 庵の中は穏やかな今までと同じ空気が流れているようだが、何分外側あの状態では狐達ではどうすることも出来ない。

 なので、何とかしてもらおうと依頼を出したのだとか。


 ()()()()()()()()()()()()()()()だったらしい。

 紫炎では報酬を振り込む事すら出来ないと言われるほどアレに依頼するのはかなり難しいだ。

 それに比べて私は実力もあるし、頼みやすいので有名なのだとか・・・・


 葉様と一緒に仕事してた時そこまで目立つ事してなかった筈なんだけどなーーーーー。

 何がどうしてこうなったんだろう。


 そんな思いを抱えながら登山口に一歩踏み出し、冒頭に戻る。






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