透視のヒッキー
僕の名前は疋田。とある事情で高校にも行かずに引きこもっていたらクラス委員の大手町さんが、僕を学校に来させるべく家に来た。
「疋田君。学校に行きましょう。」
僕がお茶を出すなり、ソファーの上で正座している大手町さんはそう切り出して来た。
大手町さんはクールで鋭い目付きをしているので迫力があります。
「いやぁ、僕もそうしたいのは山々なんだけど・・・理由があるんです。」
僕は、別にイジメられたり、学校に絶望したりして登校拒否をしているワケでは無いのです。
「それはアナタが顔を横にして私から顔を背けているのと何か関係があるんですか?」
ある、それが関係あるんだ。もし僕が普通に大手町さんを見ようものなら・・・あっ、想像するだけでもヤバい。静まれ。
「話が前に進まないので、もろもろの理由を教えてくれませんか。」
話すのか?僕は彼女に理由を話すのか?話したら幻滅されないかな?でも首がこのままだと確実に痛める。・・・仕方ない、いちかばちかで話してみよう。
「実は僕は女の子を見ると服が透けて裸に見えてしまうんです。」
包み隠さずストレートで僕は言ったのだけど、横目でうっすら見る彼女は眉ひとつ動かしていなかった。
「そうなんですか、物質透過能力ってヤツですか?」
冷静だ、今僕が横目で彼女の裸を見て興奮しているというのに、当の彼女は凄い冷静だ。
「いえ、正確に言うと、僕の見たいと思った女子の裸だけが見えるので、万物を透視出来るワケではありません。」
きっと僕が"綺麗な女の子の裸が見たい"と日々悶々としていたから発現していたから、こんなけったいな能力に目覚めたんだろう。最初は少しウッホホイと喜んだものだけど、一週間もしたら女の子の裸で興奮し過ぎて血圧が上がって死にかけた。
第一罪悪感が半端無いのですよ。女の子の裸という聖域を盗み見するなんて罪悪以外のナニモノでも無いです。
「へぇ、じゃあ見えてるなら私が裸になっても大丈夫ですね。」
「へっ?」
思わず僕が彼女を見ると、服を脱ぐパントマイムを・・・いやパントマイムに見えているのは僕だけであり、実際には本当に服を脱いでいるのだろう。
って服を脱ぐな。脱ぎ脱ぎするな。
「ちょっと脱がないで下さいよ!!」
「えっ、だってどっちしろ見えてるなら良いじゃないですか。私、実は家では裸なんですよ。服って嫌いです。」
「ダメダメですよ!!ママ・・・いやお母さんが帰ってきたらアウトですよ!!」
とんでもない女だよ!!とんでもなさ過ぎて女の子の概念が崩壊しそうだよ!!
「チェッ、ならもう帰ります。とりあえず明日学校に来るだけ来てください。ダメそうだったら帰れば良いじゃないですか。」
「あっ、えっ、はい。」
なんかザックリとした約束をすると大手町さんは帰って行った。
~次の日~
「なっ、なんだと!?」
朝学校に行くと同級生の女の子は皆服を着ていました。いや服は最初から着ていたのでしょうけど、僕にも服を着ている様に見えました。
テニス部で巨乳の三浦さんも、水泳部でスタイルの良い坂下さんも、小説好きで隠れ巨乳の柏木さんも皆服を着ていた。
そういえば町中の美人さんも服を着ていたし、つまり僕の能力は完全に喪失した。やったぜ・・・あークソッ。
これで僕の学校生活は元通りだ。
「大丈夫そうですか?」
大手町さんが声を掛けて来た。ここは親指をグッと立てて「大丈夫です!!」と力強く言わないと。
「大ッ・・・!?」
な、なんでやねん!?なんで大手町さんだけ裸やねん!!ピンクやねん!!綺麗なピンクやねん!!
「し、失礼ですが・・・大手町さんは服を着ていますか?」
「いや流石に全裸で学校に行くのはハードルが高過ぎます。」
ということは大手町さんだけは未だに裸に見えてるんだな。
何故だ?しかも大手町さんを見ていると胸がドキドキする。あとそろそろ股間をおさえないとヤバい。
待てよ。僕は"綺麗な女の子の裸が見たい"という理由で服を透視する能力に目覚めた。その"綺麗な女の子の裸が見たい"が"好きな女の子の裸が見たい"に変わったとすれば、この胸のドキドキにも説明がつく。
大手町さんはクールで美人でありながら家では裸族という女の子である。中々に個性的で魅力的な女性なので僕が惚れるのも頷ける。
あっ、てか好きですわ。僕は大手町さんが好きです。
こうして僕は好きな女の子の裸だけ見れる様になりました。