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小ちゃいおっちゃん物語 其の七

「小丸〜!」

「父上!母上!」


時は 1689年

「おじちゃん!」

「おぉ!小次郎殿!どこに行くんじゃ?」

「ひぃじっちゃんのお墓参りだぞ!」

「あっ…そうじゃった…今日は小太郎殿の命日じゃったな…小次郎殿 わしらも連れて行ってはくれぬか」

「もちろん!ひぃじっちゃん喜ぶぞ!」


「ひぃじっちゃん!来たよ!おじさんと お姉ちゃんとお兄ちゃんも一緒だよ」

「小次郎殿…ちょっと待て…おじさんとは誰の事じゃ?」

「おじさんは薄さん!薄さんって呼ぶと怒るから…」

「まぁ そうじゃな…では お兄ちゃんとは誰じゃ?」

「小丸兄ちゃん!」

「まぁまぁまぁまぁ そうじゃな…では お姉ちゃんとは誰じゃ?」

「静お姉ちゃん!」

「そこ!何故わしがおじさんで 静殿がお姉ちゃんなのだ!」

「何かおかしなとこでもありますか?薄様」

「い…いや…やっぱり…わしらは夫婦(めおと)なんじゃから…それならわしもお兄ちゃんでいいのでは…」

「その頭で?」

「し…静殿…」

「小次郎様 小次郎様が呼びたいように呼べばいいのですよ」

「う…うん…」

「小次郎殿…気の強い女子(おなご)には引っかかるなよ…」

小声で小次郎に耳打ちするおっちゃん

「あ〜た!聞こえてますよ!」

「地獄耳じゃのぉ…」

「あ〜たの声が高いだけです!」

「未だに 声だけは褒めてくれるのじゃ」

おっちゃん…平和だな…


「小太郎殿が逝ってから もう10年経つのじゃのぉ…」

戦国の世から江戸初期を駆け抜けた小太郎は満90歳まで生き この時代ではあり得ない 大往生を果たしたのだ


「おっちゃん!」

「ん?…空耳か…」

おっちゃんの頬を涙がつたう


「おじさん ひぃじっちゃんってどんな人だったの?後…母上も…」

「小次郎殿はまだ小さかったからのぉ…小次郎殿も元服した事じゃし…よし!小太郎殿と(あきら)殿の事を話してやろう!ここに乗ってもよいか?」

「いいよ!」

おっちゃんは小次郎の膝の上に乗る

普通逆だけど…


「小次郎殿が産まれた時の話をしてやろう!」


13年前…

「おっちゃん!そろそろ産まれるぞ!俺のひ孫!」

「おぉ!そうか とうとう小太郎殿も ひぃ爺様か!」

「早く産まれないかなぁ〜 男がいいなぁ!」

「小太郎殿は娘1人 孫も娘孫じゃったからのぉ」

「娘と言っても 人一倍気が強いからなぁ…」

「小太郎殿の後を見事に継いで 二代を女城主としてこの国を盛り立てて来たからのぉ…その (あきら)殿も今 母親になろうとしておるか…」


「まだかなぁ〜 早く産まれないかなぁ〜」



「ひぃじいちゃん そんなに待ち遠しかったんだ」

「小太郎殿は自分の娘の時も孫娘の時もそうじゃったんだ 小太郎殿は倅だろうと娘だろうと 本当はどっちでも良かったんじゃよ」



「大殿!只今 晶様が おのこ を無事出産!」

「産まれたか!」

「小太郎殿!やったな!おのこじゃぞ!」

「そんなのどっちでもいいぞ!無事産まれてくれたらそれでいい!」


「娘の時も 孫娘の時も そして小次郎殿の時も泣いておった…」

「へぇ!ひぃじっちゃんが泣いたんだ!」

「いや わしが…」

「えぇ!おじさんなの…」

「わしは涙脆いんじゃ!」



「ヒック…小太郎殿…ヒック…良かったのぉ…」

「おっちゃん泣くなよ…」

「すまんのぉ…晶殿もよう頑張った」

「禿げ!泣くでない!」

「晶殿は相変わらず口が悪いのぉ…何故わしが見えるのか不思議じゃ…」

「晶様 おめでとうございます」

「あっ!小丸ちゃん!ありがとう こっちおいで」

「晶様 触ってもいい?」

「いいよ〜!」

「晶殿 わしも…」

「ダメ!」

「ヒィ〜〜ン!怖いよ〜」

「禿げ!泣くな!」

ピタッ…

「嘘 こっちに来て我が子を見るが良い」

「あまりおっちゃんをいじめるなよ…」


「小太郎殿 可愛いのぉ」

「可愛いなぁ」

小太郎とおっちゃんはいつまでも離れずに見ていた


「お爺様 禿げ!そろそろ寝なさい」

「そうするか…おっちゃん行くぞ!」

「晶殿 また明日来る…」

「来んでよい!」



「その次の日じゃった…晶殿が亡くなったのは…」










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